ホーム > 書籍詳細:物部氏の正体

日本建国に潜む古代史最大の謎。シリーズ累計10万部突破。三部作、完結篇。

物部氏の正体

関裕二/著

605円(税込)

本の仕様

発売日:2010/06/01

読み仮名 モノノベシノショウタイ
シリーズ名 新潮文庫
発行形態 文庫
判型 新潮文庫
ISBN 978-4-10-136473-5
C-CODE 0121
整理番号 せ-13-3
ジャンル 日本史
定価 605円

仏教導入を巡る蘇我氏との対立で知られる物部氏。古代史を代表する大豪族でありながら、正史から抹殺され、その全貌は多くの謎に包まれている。天皇家の神事と奇妙な接点を持ち、『日本書紀』で「天皇家より先にヤマトを統治していた」と記される彼らは何ものか。出雲、吉備、出自に迫る論考は、やがてヤマト建国の真相へと辿り着く。既存の歴史を根底から覆す三部作、堂々の完結篇。

著者プロフィール

関裕二 セキ・ユウジ

1959(昭和34)年、千葉県柏市生れ。歴史作家。仏教美術に魅了されて奈良に通いつめ、独学で古代史を学ぶ。1991(平成3)年に『聖徳太子は蘇我入鹿である』でデビュー。以後精力的に執筆活動を続けている。主な著作に『藤原氏の正体』『蘇我氏の正体』『物部氏の正体』『伊勢神宮の暗号』『海峡を往還する神々』『王剣強奪』『消えた出雲と継体天皇の謎』『伏見稲荷の暗号 秦氏の謎』『古代史 50の秘密』『前方後円墳の暗号』『神武天皇vs.卑弥呼』「古代史謎解き紀行」シリーズなど多数。

書評

波 2010年6月号より 関門海峡が古代権力争いのキーポイントだ

岩尾光代

古代史には謎が多い。『日本書紀』『古事記』の記述をどこまで信じていいのか、わからないから謎解きに挑戦する。藤原氏から蘇我氏、そしてこの物部氏の「正体」三部作が文庫に揃った。古代史の謎解き20年、著者が追い続けたのは、正史から消された「本当の話」だ。
記紀に書かれていることへの素朴な疑問を正面に見据えて、つじつまの合わないところへ、著者は斬り込む。史料を読み解くだけでなく、日本列島から朝鮮半島まで足をのばして、自ら抱いた疑問点を考証してきた。「正体」三部作は、その「関ワールド」を歴史の時間軸に合わせて説いたもの。起点は「大化の改新」だが、改革そのものではなく、蘇我入鹿の暗殺「乙巳の変」にフォーカスする。殺された入鹿とは、それほどの極悪人だったのか。視点をぐるりと転換すれば見えてくるものがある。分け入った古代王朝の闇の先に見えたものが、日本を動かした有力者たちの「正体」だった。
藤原氏から蘇我氏、そして物部氏へと、著者は大化の改新から時を遡って、古代史を探っていった。藤原氏はどのように蘇我氏を抹殺したのか。蘇我氏は本当に物部氏を歴史から突き落としたのか。時を過去から積み上げずに、なぜなのか、なぜなのかと過去へ戻っていくうちに、謎は闇から引きずり出されてくる。
物部氏は、現代人に忘れられかけている古い一族だ。しかし、「物部氏は天皇家よりも先にヤマトに舞い降り、ヤマトを支配していた」と『日本書紀』にあるほどの重要な一族だった。天皇家以前のヤマト王家という物部氏の「正体」は海の支配者だったと、著者はいう。
「これまで、古代史を考える上で『商業』という視点が、あまりにも欠如していたように思えてならない」
物部氏が、南部九州から来てヤマトに攻め込んだ神武天皇にあっさり王権を渡して河内に移ったのは、彼らが瀬戸内海を支配する海の民であり、商人だったからではないか。名より実を取ったのだ、と。そして、瀬戸内海のウィークポイントは関門海峡、ここを制していたのは北部九州勢力だ。もしも、出雲と北部九州とが手を組んで関門海峡を封鎖すれば、瀬戸内海は死に体となる。地政学的な戦略を考えると、古代王朝の覇権争いに別の光があたってくる。
この海峡を制する者は、日本の海を支配することが出来た、という。朝鮮半島、九州からの物流も武力も、関門海峡を通って瀬戸内海を抜けてヤマトへ行き着いていた。そんな地の利を背景にした物部氏は「瀬戸内海の王者・吉備の一族」だったという推理を打ち立てる。
天孫降臨の南部九州、邪馬台国説の北部九州、国譲りの出雲、そして天皇家が政権を樹立したヤマトという古代史の大きな舞台に、もう一つ吉備という土地がクローズアップされる。著者は、久留米・高良山麓の山門を邪馬台国と考える。その根拠に「日田問題」がある。日田の小迫辻原遺跡が、ヤマトの纏向遺跡のありかたにそっくりだとする。そして、日田の地の利。筑後川北岸にはヤマトの纏向型前方後円墳があり、南岸にはないところに、「邪馬台国やヤマト建国をめぐる最後のヒントが隠されていたのではないか……」とあって、次なる展開を予測させている。さらに、「鉄」で語る物部氏の盛衰……。
天皇家がヤマトに政権を打ち立てて、地方を平定したとする記紀の神話風世界からは想像もつかない氏族たちの抗争と戦略が、新鮮味を帯びて浮かび上がってくる。
近年、各地で次々に発掘される古墳群が、著者の推論を裏付ける。現地で、研究者たちと熱く語り合いながら古代への旅を続ける著者の視線の先には、一族として生きた人々の葛藤があった。政略結婚の妻たちは、生家の敗北に涙をのみ、裏切りと殺戮の末に、敗者は鬼となる。吉備の「桃太郎」が退治した鬼は出雲ではなかったか。古代史の裏で語られてきた鬼と祟りの物語。鬼の哀しみが古代史の陰をつくるのだが、著者はさらに天皇家の「祟り」を思いがけない視点で語る。神武、崇神、神功皇后、応神と、「神」の名がつく天皇・皇后は「祟る恐ろしい鬼」だったはずだというのだ。
支配者たちの「正体」を知れば、古代史に隠されたドラマの数々が現れる。

(いわお・みつよ 毎日新聞社サンデー毎日編集部)

目次

はじめに
第一章 ヤマトの神にもっとも近い物部氏
仏教を拒絶した物部氏/なぜ天皇ではなく物部氏が神道に固執したのか/天皇家よりも先にヤマトに舞い降りた物部氏/身内を殺して神武に恭順した饒速日命/特別な存在物部がなぜ石見に逼塞したのか/天皇家は物部氏の祭祀を踏襲している?/なぜ元明女帝は物部を恐れたのか/蛇(出雲)とつながる物部/祟る神を招き寄せる物部氏/天皇家と物部氏の不思議な関係/天皇は物部の祭祀形態を継承することを条件にヤマト入りした?/物部こそヤマトの神にもっとも近い一族?
第二章 物部氏はどこからやってきたのか
物部氏の謎/二人の初代王の謎/纒向遺跡からわかってきたこと/ヤマト建国の考古学とぴったり重なる『日本書紀』の記述/物部氏はどこからやってきたのか/物部東遷説と邪馬台国東遷説/太田亮氏の物部東遷説/瀬戸内海を牛耳っていた物部氏/物部氏は稲作をヤマトにもたらした?/物部王国こそ邪馬台国?/ありえない物部・葛城王朝の相剋/物部は邪馬台国の敵?/流動化する国際情勢と邪馬台国の東遷/物部=北部九州を覆した出雲説/出雲の国譲りと天孫降臨のいきさつ/なぜ朝廷は自ら作り上げた亡霊を恐れたのか/出雲がそこにあったことを訴える巨大木柱/なぜ『日本書紀』はヤマト建国史を出雲と南部九州に狭めてしまったのか/吉備はどこに消えたのか
第三章 物部と吉備の謎
なぜ物部は敵に塩を送り続けたのか/石見の物部神社の謎/出雲いじめの尖兵となった物部氏/物部は出雲であって出雲ではない/出雲にひとくくりにされたヤマト建国の要素/吉備はなぜよくわからないのか/物部と吉備にやられる出雲/本当の吉備の豪族の系譜とは?/ヤマト建国の考古学/弥生時代後期の山陰地方にあふれ出した鉄/なぜ北部九州が栄えたのか/吉備が発展する条件/特殊器台形土器の特殊な歴史/ヤマト建国の中心に立っていた吉備/ヤマトと北部九州の複雑な関係/物部氏の正体を明かすための天孫降臨と邪馬台国/北部九州は一枚岩だったのか/大分県日田市が投げかける波紋/北部九州沿岸地帯にとってのネック
第四章 「物部は吉備である」を探る
なぜ『日本書紀』は物部を天神といったのか/吉備といえば桃太郎/桃太郎のモデルになった吉備津彦/吉備は出雲を恐れていた?/吉備は出雲に進出していた/吉備の石上の謎/物部氏と中臣氏の関係と吉備のつながり/河内に陣取った物部と中臣/河内王朝の出現は王朝交替か/河内王朝論の登場/河内王朝論の主張/物部が日本海を邪魔にしたわけ/ヤマトの王は国の中心に立っていない?/河内に残された吉備の痕跡/松岳山古墳の奇妙なオブジェ/五世紀末にパイオニアが西からやってきたという話/物部氏は五世紀末にヤマトに現れた?/五世紀の吉備氏反乱伝承/吉備の反乱伝承に隠された葛城と吉備のつながり/吉備の前方後円墳の歴史/吉備の反乱の裏事情/ヤマトが吉備を潰すことは物理的に不可能
第五章 物部の秘密・蘇我の秘密
ヤマト建国時の物部の不審な行動/ヤマト建国の仕掛け人は誰か/神功皇后と邪馬台国の台与/ヤマト建国をめぐる歴史のねじれ/ヤマト王家誕生の真実の歴史/蘇我氏が物部氏を収奪していたとする説/蘇我を糾弾しない物部という謎/蛇と犬が仲良く死んだという暗号/物部氏の目指したもの
おわりに
文庫版あとがき
主要参考文献一覧

関連書籍

感想を送る

新刊お知らせメール

関裕二
登録する
日本史
登録する

書籍の分類

この分類の本

物部氏の正体

全国の書店、または以下のネット書店よりご購入ください。

※ 書店によっては、在庫の無い場合や取扱いの無い場合があります。あらかじめご了承ください。
※詳しい購入方法は、各ネット書店のサイトにてご確認ください。

  • amazon
  • 楽天ブックス
  • 7net
  • e-hon
  • HonyaClub
  • TSUTAYA ONLINE
  • 紀伊國屋書店
  • エルパカBOOKS - HMV
  • honto