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若き癩王vsイスラムの英雄――。聖地の命運をかけた全面対決の行方は?

十字軍物語2

塩野七生/著

2,700円(税込)

本の仕様

発売日:2011/03/24

読み仮名 ジュウジグンモノガタリ2
発行形態 書籍、電子書籍
判型 A5判変型
頁数 292ページ
ISBN 978-4-10-309634-4
C-CODE 0322
ジャンル 世界史
定価 2,700円
電子書籍 価格 2,160円
電子書籍 配信開始日 2017/11/15

十一世紀末、第一次十字軍の奮闘によりイェルサレムに打ち立てられた十字軍国家。しかしイスラム側の有能な領主たちの猛反撃を前に、キリスト教勢力は苦境に。最後の希望を一身に集めた若き癩王ボードワン四世は、テンプル騎士団と聖ヨハネ騎士団の力を借りて総力を結集。ジハードを唱えるイスラムの英雄サラディンとの全面対決を迎えた――。

著者プロフィール

塩野七生 シオノ・ナナミ

1937年7月7日、東京に生れる。学習院大学文学部哲学科卒業後、1963年から1968年にかけて、イタリアに遊びつつ学んだ。1968年に執筆活動を開始し、「ルネサンスの女たち」を「中央公論」誌に発表。初めての書下ろし長編『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』により1970年度毎日出版文化賞を受賞。この年からイタリアに住む。1982年、『海の都の物語』によりサントリー学芸賞。1983年、菊池寛賞。1992年より、ローマ帝国興亡の歴史を描く「ローマ人の物語」にとりくみ、一年に一作のペースで執筆。1993年、『ローマ人の物語I』により新潮学芸賞。1999年、司馬遼太郎賞。2001年、『塩野七生ルネサンス著作集』全7巻を刊行。2002年、イタリア政府より国家功労勲章を授与される。2006年、「ローマ人の物語」第XV巻を刊行し、同シリーズ完結。2007年、文化功労者に選ばれる。2008-2009年に『ローマ亡き後の地中海世界』(上・下)を刊行。2011年、「十字軍物語」シリーズ全4冊が完結。2013年、『皇帝フリードリッヒ二世の生涯』(上・下)を刊行。2017年、「ギリシア人の物語」シリーズ全3巻を完結させた。

書評

波 2011年4月号より 伝統的な十字軍理解に挑戦

伊奈久喜

歴史とは物語なのだ。塩野作品はいつもそう実感させる。確かに、ラテン語の「ヒストリア」は歴史であり、同時に物語を意味する。物語の舞台は、ローマ人から、ローマ帝国後の地中海の海賊に移り、いまは十字軍二百年の攻防が進行中だ。現代のヨーロッパ、中東に影響を残す戦いである。
それを歴史学者とは一味違う、しかもキリスト教徒でもイスラム教徒でもない、作家の目で書いたこの物語は、他の塩野作品もそうであるように、過去の出来事なのに、目の前で起きているように思わせる躍動的筆致が魅力である。過去の出来事を語りながら、現代を語っているように思わせる中身にも、いつもながらひきつけられる。
本稿は、新刊の『十字軍物語2』を扱うが、それには四部作の全体構成を説明する必要がある。イタリア・オペラをまねて序曲、第一幕、第二幕、第三幕と著者は表現する。序曲にあたる『絵で見る十字軍物語』は、十九世紀前半の歴史学者フランソワ・ミショーの「十字軍の歴史」を彩ったギュスターヴ・ドレの挿絵に地図を添え、短い塩野解説がつく。ヨーロッパのキリスト教社会での伝統的な十字軍理解が読者の頭に入る。
第三幕にあたる『3』はまだ読めないが、第一幕にあたる『1』、第二幕の『2』を読む限り、幕が上がってからの「十字軍物語」は、伝統的な十字軍理解に挑戦する塩野ワールドが展開される。新鮮さに読者は目を見張る。
挑戦は第一幕から始まる。第一次十字軍が、イスラム教徒に支配されていた聖都イェルサレムを攻略し十字軍国家を樹立するまでを描く『1』で、既に著者は「すべては、領土の問題であって、宗教の問題ではないのだ」と断定する。第一次十字軍当時のイスラム世界にとり、十字軍は宗教を旗印とした軍勢ではなく、自分たちの領地を奪いに来た侵略者だったというのだ。
本稿の本来の対象である、第二幕の『2』が扱うのは、成立した十字軍国家にとって守りの時代であり、イスラム側にとって反撃の時代である。ここでも著者は「欧米人の書く十字軍の歴史は、ある矛盾を内包しているように思える。それは、キリスト教徒による十字軍遠征の真因を、十字架への誓いという信仰のみに見たいという想いのあまりに生じた、矛盾ではないかと思う」と書く。
したがって物語は宗教的観点を排して綴られる。パワーポリティクスの視点である。経済交流にも目を配る。そして、「ローマ人の物語」もそうだったように、魅力的な男たちが登場する。『1』ではキリスト教側に人材が輩出し、『2』ではイスラム側にゼンギ、ヌラディン、サラディンなどが現れる。
非宗教的観点から書かれたパワーポリティクスの要素を含む指導者論となれば、歴史は歴史を超え、現代的意味をも持つ。こんな記述がある。

 陸上のリレー競走でも、バトンが受け渡されている間は速度が落ちる。国のリーダーの交代するときは、対応策が遅れる。もちろん敵は、それを予想して攻勢に出てくる。ボードワン一世が死にイェルサレムの王位がボードワン二世の手に渡った時期にもそれが起った。

自民党から民主党に政権が交代した二〇〇九年以降の日本に対する中国やロシアの態度を連想してしまう。禁じ手かもしれぬ論理的飛躍を続ければ、イスラム側の反撃という第二幕のテーマ自体がきわめて今日的にみえる。
チュニジアに始まり、エジプトに広がり、リビアで内戦を起こした中東各国での変化を求めるエネルギーは、どんな決着をみせるのか。予断を許さないが、ゼンギ、ヌラディン、サラディンに似た人物が現れ、現在の世界秩序に挑戦する場面もあるかもしれない。
人材は、ある時期に一方にだけ集中して輩出する。それが歴史の不条理だとする著者の説に従えば、先進民主主義諸国の側は、明るい展望を持ちにくい。冷戦末期の一九八〇年代に世界を動かしたレーガン、サッチャー、中曽根といった政治家に比べ、いまの指導者たちがいかにも小物にみえるからである。

(いな・ひさよし ジャーナリスト)

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