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不良老人の文学論

筒井康隆/著

1,836円(税込)

本の仕様

発売日:2018/11/22

読み仮名 フリョウロウジンノブンガクロン
装幀 (C)2018 King Features Syndicate, Inc./Fleischer Studios,Inc. (R)Hearst Holdings,Inc./装画、Bridgeman/写真提供、PPS通信社/写真提供、新潮社装幀室/装幀
雑誌から生まれた本 新潮から生まれた本
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 298ページ
ISBN 978-4-10-314533-2
C-CODE 0095
ジャンル エッセー・随筆、エッセー・随筆
定価 1,836円

老人よ、すべからく不良たるべし――。筒井康隆84歳、大江健三郎、ウンベルト・エーコ、蓮實重彦など世界文学最前線から現代日本の気鋭作家までを縦横に論じ来り、小松左京や井上ひさしや丸谷才一を追悼し、自作の創作裏話を打ち明け、宗教や老いをも論じ去る。巻末にロング・インタビューも附す、巨匠14年ぶりのエッセイ集。

著者プロフィール

筒井康隆 ツツイ・ヤスタカ

1934(昭和9)年、大阪市生れ。同志社大学卒。1960年、弟3人とSF同人誌〈NULL〉を創刊。この雑誌が江戸川乱歩に認められ「お助け」が〈宝石〉に転載される。1965年、処女作品集『東海道戦争』を刊行。1981年、『虚人たち』で泉鏡花文学賞、1987年、『夢の木坂分岐点』で谷崎潤一郎賞、1989(平成元)年、「ヨッパ谷への降下」で川端康成文学賞、1992年、『朝のガスパール』で日本SF大賞をそれぞれ受賞。1996年12月、3年3カ月に及んだ断筆を解除。1997年、パゾリーニ賞受賞。2000年、『わたしのグランパ』で読売文学賞を受賞。2002年、紫綬褒章受章。2010年、菊池寛賞受賞。2017年、『モナドの領域』で毎日芸術賞を受賞。他に『家族八景』『敵』『銀齢の果て』『ダンシング・ヴァニティ』『アホの壁』『現代語裏辞典』『聖痕』『世界はゴ冗談』など著書多数。

筒井康隆ホームページ (外部リンク)

書評

永遠の不良のままで

尾川健

 筒井康隆さんは、敗戦後まだ二、三年という時代を「ぼくは不良少年だった」と振り返っている(『不良少年の映画史』)。学校をサボり、父親の蔵書を持ち出しては古書店へ売り、そのお金で映画ばかり見ていた。そんな日々を送っていた自分を「不良少年」と呼んだのだ。それから七〇年余、本書『不良老人の文学論』は、かつての不良少年から自称「不良老人」となった筒井さんの十四年ぶりとなる最新エッセイ集である。
 筒井さんがこよなく愛するベティ・ブープとその相棒ビンボーがカバーを飾る本書はそのタイトルどおり、文学にまつわる評論・解説が中心に据えられている。自らの創作姿勢を内包する谷崎潤一郎賞・三島由紀夫賞・山田風太郎賞の選評をはじめ、対象となっている作家・作品は実に幅広い。夏目漱石芥川龍之介、アガサ・クリスティ、阿部和重森博嗣本谷有希子松浦寿輝蓮實重彦大江健三郎、ウンベルト・エーコ……。内外の古典から最先端作、純文学からエンターテインメントまで、筒井さんの文学論は時空とジャンルを縦横無尽に駆け抜けていく。
「老い」や「死」についてのエッセイも数多く見受けられる。ご自身も八十代に入り、親しく近かった方たちの訃報に多く接したということもあるだろう。小松左京井上ひさし久世光彦丸谷才一、桂米朝……。懐かしい思い出とともに綴られた、寂しさと哀しみあふれる追悼に胸を打たれる。「宗教と私」と題されたエッセイでは、幼い頃から意識していた「上の方にいる存在」としての「神」(最新長篇『モナドの領域』の主人公であるGOD)が語られている。山田風太郎『人間臨終図巻』最終巻を「わが死にかたの指針」とし、安楽死にも言及。東日本大震災を経て、作家は現実を虚構へどう昇華させるのかといった論考もある。
 文学論以外でもその対象は多岐にわたる。シミキンこと清水金一の競輪映画、山下洋輔の七十歳記念アルバム、野田秀樹の芝居、高平哲郎の「笑い」についての断章、手塚治虫が秘かに描いていたあぶな絵、三島由紀夫原作の映画「美しい星」……。それぞれの魅力が存分に描かれ、読後には今すぐ観たい聴きたい読んでみたいと思わせるものばかりだ。
 また長篇『聖痕』『ダンシング・ヴァニティ』をはじめとする自作品の舞台裏を明かした解説、行きつけの蕎麦屋やバー「ホワイト」についてのエッセイもファンには嬉しい(「孫自慢」と題されたものもある)。「日常のロマン」では、七瀬や「時をかける少女」芳山和子、パプリカ、美藝公や唯野教授、ラゴスたちに筒井さんが囲まれているという夢のような場面もある。
 誰もがネットで自分の考えを表現できる現代において、「表現の自由には表現の自由で戦うべきだ」と知性の重要性を論じ、反骨精神が必要な今だからこそ「老人よすべからく不良たるべし」とメッセージを送る。巻末にはインタビュー「作家はもっと危険で、無責任でいい」も特別収録。まさに本書は、進化し続ける筒井ワールドへの航海図と呼ぶべきこの十四年間の集大成なのだ。
 現在、世田谷文学館で開催中(十二月九日まで)の「筒井康隆展」の会場は詳細な年譜で埋め尽くされている。文学だけでなく音楽・演劇・映画……と一つ所にとどまることなく、常に新しい表現に挑戦し、境界を越え続ける。永遠の前衛たるその足跡は本当に一人の作家の人生なのかと思うほど、豊饒で面白く刺激的だ。
 私は筒井さんの追っかけを数十年続けている。人生のほとんどを筒井さんとその作品とともに過ごしてきたと言ってもいい。これほど稀有な作家には何度生まれ変わっても出会えはしないだろう。心からそう思っている。同時代に生まれ、新たな作品を読み続けられることを感謝せずにはいられない。
 どうかいつまでも筒井さんにはお元気で、そして永遠の不良のままでいて欲しい。これからもずっと追いかけ続けていきます。

(おがわ・けん ウェブサイト「筒井康隆氏についての…」管理人)
波 2018年12月号より
単行本刊行時掲載

目次

I 半島の貴婦人
宗教と私
ずっと大江健三郎の時代だった
若者よ「同時代ゲーム」を再評価せよ
井上ひさしのこと
言語による演劇――井上ひさし『言語小説集』
面白さに拘り続けた人
ふたつの世界の人
半島の貴婦人
そうですか五十周年ですか
星さんについて、言い忘れていたことなど
「小松左京マガジン」四十号達成と小松左京傘寿を祝うメッセージ
人類信じたロマンチスト
教養にじむお茶目な師匠
手塚治虫のエロス

II 情欲と戦争
情欲と戦争――蓮實重彦『伯爵夫人』
懐かしい蠱惑の長篇――松浦寿輝『名誉と恍惚』
川上弘美『大きな鳥にさらわれないよう』推薦文
阿部和重『ピストルズ』
現代思想としての多元宇宙――東浩紀『クォンタム・ファミリーズ』
惰性への攻撃――森博嗣『実験的経験』
ポストモダンの掌篇集――本谷有希子『嵐のピクニック』
モブ・ノリオ『介護入門』
私の好きな谷崎賞受賞作品――辻原登『遊動亭円木』
侵犯と越境――池上永一『シャングリ・ラ』
わが死にかたの指針――山田風太郎『人間臨終図巻(4)』
風太郎と明治物
冲方丁『光圀伝』
村中豊『新宿夜想曲』推薦文
今野敏『怪物が街にやってくる』
山下洋輔『ドバラダ門』
山下洋輔『スパークリング・メモリーズ』
CMソングの女王様
野田秀樹に脱帽
ひたすら笑いだけを追いかける笑いの実践者
小國英雄のシナリオ
映画『美しい星』に思う
ミステリーの幕があがる
「そして誰もいなくなった事件」
時をかけるエーコ
大らかで根源的な笑い
ブノワ・デュトゥールトゥル『幼女と煙草』
青年の成長を描いた二作品
芥川龍之介『侏儒の言葉』
谷崎礼讚
谷崎と映画とぼく
谷崎潤一郎『陰翳礼讃・文章読本』
谷崎賞のことなど――私と中央公論

III 今、二極分化の中で
[谷崎潤一郎賞選評]
雪沼はどこにあるのか
二作品受賞を喜ぶ
独特の文学的世界の構築
訴求力と文学性
豚はどうした
壮大な文学的実験
初老期と自然への回帰
さまざまな視点からのフィクション論
詩的言語による異化
縦のピカレスク・ロマン
なだらかに超感覚へ
新趣向と王道と
詩と小説の併存
[三島由紀夫賞選評]
笑いのある実験的ファンタジイ
票が割れてバラつきました
今、二極分化の中で
[山田風太郎賞選評]
計算され尽くしたベテランの技
日本人が書く価値と意味
絶妙の錯時法
票が割れました
縄文から弥生へのロマン
三度読みできる傑作
不徹底さによる拮抗
文芸におけるバランス感覚

IV 不良老人はこんなに楽しい
佐々木敦『筒井康隆入門』推薦文
佐々木敦『あなたは今、この文章を読んでいる。』推薦文
筒城灯士郎『ビアンカ・オーバーステップ』推薦文
筒井版「大魔神」シナリオ執筆の経緯
小説と共時性
『聖痕』作者の言葉
文体の実験 伴走に感謝
「創作の極意と掟」について
虚構への昇華について
舞台装置
日常のロマン
孫自慢
無敵競輪王
蕎麦道場
誰か、誘ってくれないかなあ
表現の自由のために
日本でも早く安楽死法を通してもらうしかない
「不良老人」はこんなに楽しい

 インタビュー 作家はもっと危険で、無責任でいい

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