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わたしの台湾・東海岸―「もう一つの台湾」をめぐる旅―

一青妙/著

1,320円(税込)

発売日:2016/09/23

  • 書籍
  • 電子書籍あり

豊かな自然と先住民文化に彩られた、あなたの知らない魅惑の台湾がここにある!

先住民が多く台湾人に心の原点と愛され、アウトドア・レジャーも盛んな台東、名所・太魯閣渓谷や日本統治時代の建物を活かした街が人気の花蓮、テレビドラマ「孤独のグルメ」でも紹介され台北から近い宜蘭など。都市が集まる西側、古都として人気の台南ともまるで違う独特の魅力を日台ハーフの著者が綴るガイド&エッセイ。

目次
プロローグ
第一章 台湾でいちばん天国に近い場所 台東
・原点に戻る場所――太麻里
・変化する古い街――台東市
・足裏のゴッドハンド――長濱
・サイクリング+お弁当――関山・池上
・海岸線のカバンに魅せられて――東河
・中国人観光客との出会い――知本温泉
・先住民の豊年祭「乱入」始末
・昔は移民村、今は熱気球――鹿野郷
・「紅葉少棒隊」夢のあとさき――紅葉村
第二章 ディスカバー・ジャパン・イン花蓮
・父の石ころ――太魯閣
・ほっこり食い倒れの街――花蓮市 1
・街がリノベで活気づく――花蓮市 2
・移民村の神社――台湾人の「記憶」
・映画の「ふるさと」を訪ねて――港口村
第三章 ディープな宜蘭
・宜蘭に行こうよ
・葱がいっぱい!――羅東
・夜空にきらめく奇祭「搶孤」――頭城
・幾米の絵、四寶の味――宜蘭市
・冷たい温泉ですっきり――蘇澳
・「百年民主」の聖地
・日台合作で水と親しむ――冬山河
終章 ルーツを求めて――基隆・九フェン
・雨降る港町・基隆ブルース
・のすたるじっく・九フェン
あとがき
台湾・東海岸での交通手段

書誌情報

読み仮名 ワタシノタイワンヒガシカイガンモウヒトツノタイワンヲメグルタビ
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判
頁数 208ページ
ISBN 978-4-10-336272-2
C-CODE 0026
ジャンル ノンフィクション
定価 1,320円
電子書籍 価格 1,056円
電子書籍 配信開始日 2017/03/17

インタビュー/対談/エッセイ

びっくりの出会いがたくさん!

一青妙

 中国大陸をのぞむ台湾海峡に面した台湾の西側は、我々に最も馴染み深い首都・台北をはじめ、中部の拠点都市である台中、歴史の都・台南、貿易港で有名な高雄など、早くに開発され、発展してきた大都市が多い。
 一方、平地が少なく、海岸線も複雑に入り組んでいる東側は、何もないさびしい場所というニュアンスがある「後山ホウシャン」と呼ばれていたほど開発が遅れてきた。そのせいか、現在の台湾では、西海岸という呼び方は存在しないのに、なぜか「東海岸」という言葉で花蓮県や台東県、宜蘭県などをまとめて呼んでしまう。日本の「裏日本」のようなものかもしれない。
 ところが、この東海岸には、想像を超えた「台湾」との出会いがあった。そんなわたしの個人的体験を、新刊『わたしの台湾・東海岸―「もう一つの台湾」をめぐる旅―』ではこれでもかと書き連ねた。
 小籠包、故宮、ウーロン茶、台北101、マンゴーかき氷……。日本人が慣れ親しんだ台湾のイメージは、だいたいこんなところだろう。そんなものは東海岸では、ほとんど見かけない。それでは、物足りないかというと、そんなことは全くない。びっくりの出会いがたくさんあるからだ。
 例えば、台東県にある人口わずか7千人の「長濱チャンピン」という小さな町には、台湾を代表する健康法で、飛び上がるほど痛い足裏マッサージの「創設者」が住んでいる。
 しかも彼は、キリスト教カトリックの神父でスイス人だ。神父の名前はJosef Eugster(ジョセフ・ユーグスター)、その発音から中国語名が「呉若石ウールオシー」となり、現地では「呉神父ウーシェンフー」と呼ばれる。彼がスイスから布教のために定住したのは1970年。ひどい関節リウマチを患った時、自らの足裏を自分自身で揉みほぐすことで不思議と痛みが消えた。この実体験を元に、布教のかたわら、地元の人々に足裏マッサージを施したところ、あっと言う間に評判が広がった。
 以来、呉神父は足裏マッサージの伝道師とも呼ばれるようになり、台湾各地で、呉神父から足裏マッサージを学んだ弟子たちが、店を開くようになった。いまも呉神父は長濱の小さな教会で、足裏揉みの普及と信仰の布教を続けている。
 一方、東海岸は、日本と特別な繋がりがある。
「豊田村」「林田村」「吉野村」など、どことなく日本を連想させる地名があちこちにある。1910年前後の日本統治時代、日本からの移民で立ち上げられた移民村の名残りである。
 当時、豊かな暮らしを夢見て、日本から多くの農業移民が台湾の地を踏んだ。彼らは風土や気候の違いによる病気に悩まされながら、農地を開墾し、村には神社や学校、診療所も建てられ、日本人コミュニティーが生まれた。
 生活には信仰の場が必要だ。それが神社だった。それぞれの故郷などの神様を祭った無数の神社が、東海岸の村々に立てられ、台湾人も含めた村の生活の中心となっていった。
 戦後の国民党政権の下でいったんは破壊されたが、近年、この神社を復元する動きが活発になった。「国民党に奪われた自分たちの台湾史を取り戻したい」という台湾アイデンティティの高まりが、その原点にあるようだ。
 台湾は多民族の国だ。日本とはそこが違う。台湾には、先住民族(中国語で「原住民ユァンズーミン」)がいる。人口はおよそ54万人。彼らに共通するのは、あらゆる事物や現象に霊魂、精霊が宿ると信じるアニミズム信仰を持っていることだ。
 東海岸では7月から8月にかけ、収穫を感謝するための「豊年祭」が盛大に行われる。先住民たちは色鮮やかな民族衣装をまとい、美しいハーモニーと踊りで先祖や神に祈りを捧げる。その様は荘厳でもあり、自然とともに生きる人間の原点を垣間みることができる。わたしは各地の豊年祭に押し掛け、迷惑だったかも知れないが、快く祝いの場に加えていただいた。
 台湾人は東海岸のことを「まったく違うもう一つの台湾だ」と表現する。東海岸では、既存のイメージとはいろんな意味で異なった台湾を発見できるのだ。
 台湾は大きくない。でも、多様で、深い。そして、優しい。そんな台湾の、ただならぬ魅力をわたしに教えてくれたのが、東海岸だった。「サプライズ」に満ち溢れている東海岸をめぐる旅を、みなさんにもお勧めしたい。


(ひとと・たえ エッセイスト、女優、歯科医)
波 2016年10月号より

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著者プロフィール

一青妙

ヒトト・タエ

台湾屈指の名家「顔家」出身の父と日本人の母との間に生まれ、幼少期は台湾で育ち、11歳から日本で暮らし始める。エッセイスト、女優、歯科医として活躍中。著作に『私の箱子(シャンズ)』『ママ、ごはんまだ?』(ともに講談社)、『わたしの台南「ほんとうの台湾」に出会う旅』『わたしの台湾・東海岸「もう一つの台湾」をめぐる旅』(ともに新潮社)。台湾と日本をつなぐ架け橋となる活動が高く評価され、台南市親善大使や中能登町観光大使に相次いで任命されている。『ママ、ごはんまだ?』を原作にした日台合作映画が製作中で、妹の歌手一青窈が主題歌を歌い、自身も映画に出演。2017年春の公開が予定されている。

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