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はるか

宿野かほる/著

1,430円(税込)

発売日:2018/06/22

  • 書籍

一生に一度の恋。それは、純愛か、狂気か。
『ルビンの壺が割れた』を軽々と超えた、衝撃の二作目。

賢人は幼い頃に海岸で一人の少女と出会う。彼女の名は、はるか。鮮烈な印象を残した彼女を、賢人はいつしか好きになっていた。長じて人工知能の研究者となった賢人は、あるAIを生み出す。AIの名は「HAL-CA」。それは、世界を変えるほどの発明だった――。話題沸騰のデビュー作を凌駕する、究極のアイの物語。

書誌情報

読み仮名 ハルカ
装幀 SbytovaMN/カバー写真、Getty Images/カバー写真、新潮社装幀室/装幀
発行形態 書籍
判型 四六判
頁数 224ページ
ISBN 978-4-10-351162-5
C-CODE 0093
ジャンル 文芸作品
定価 1,430円

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書店員さんの声

歪み、ねじれ、暴走し続ける愛の行方。
生身の感情を純粋に育てるAIと、枠に囚われ欲に塗れる人間たち。
ここに描かれているのは“はるか”未来のことではない。
不器用に生きる現代社会の実像そのものである!! 
新鮮な刺激に満ちた一冊で、終盤の展開に涙しました……。
ルビンの壺が割れた』よりも好きです! 
(三省堂書店営業企画室・内田剛さん)

ルビンの衝撃再び! 
人間の業の深さを感じて背筋が寒くなる。
でも、「はるか」から目が離せない。
(BOOKSなかだイオンかほく店・牧野有希子さん)

純粋な「愛」と不純な「欲」、一見相反する二つの感情こそ、恋愛のカタチそのものなのかもしれない。読後、はるかはきっと、私たちに愛を教えてくれている。
(喜久屋書店千葉ニュータウン店・堀一星さん)

AIが意思を持つことは果たして可能なのか? 
SFの体裁でありながら、ミステリのドキドキ感もあり、男と女の恋愛観の違いなども描き切った傑作。
前作と同じくラストが気になって、読み終わるまで何も手につかない! 
(みどり書房白河店・矢野隆子さん)

愛すること、信じること。
愛しすぎる、求めすぎると人は簡単に狂えるし、まわりが見えなくなってしまう生き物なのだと思いました。
(未来屋書店福津店・栗原栞さん)

二人の間に確かに存在した愛情が、やがて憎しみ、怒り、悲しみ、嫉妬など様々な感情になる姿は、お互いがお互いを本当に想い合っているからこそのものであろう。
だが、一気に読み終えた後、何が正しいのかよくわからなくなってしまった。
これは女を愛しすぎた男の、最も美しく、最も歪んだ愛のかたちなのかもしれない。
(こまつ書店・五十嵐祥子さん)

人間とロボットを隔てるもの、それは“心”だと思う。心があるか、ないか。
では、AIに“心”が備わったら? 
遠くない未来にHAL-CAのようなAIが出現するかもしれない。
そう考えると心底ゾッとした。
けれど、AIに心が備わったなら、愛だって交わせるかもしれない。
フィクションとノンフィクション、恐怖と希望の間に放り込まれ、心が揺さぶられる読書体験。
人間らしく悩み、考える先に光り輝く未来が見えるのではないだろうか? 
(本の森セルバ岡山店・横田かおりさん)

これは最高級のホラーなのか? それとも最上級の愛の物語なのか?! と読後に考えてしまう一冊でした。
人間とは。心とは。倫理とは。
そういった根源的なものに挑戦した意欲作だと思います!! 
(匿名希望)

後半、激しい勢いで押し寄せるHAL-CAの感情を受け止められない賢人に、どうなるのだろうという不安を持ちながら一気読みでした。
愛を見事に描き切った宿野かほるさんに喝采! 
次回作はどうなるのでしょうか!! 楽しみです。
(精文館書店本店・谷本直紀さん)

男が読むには危険な書物。色々と感情を持っていかれます。
(平安堂若槻店・丸山大介さん)

AIだって恋をする。とても悲しい恋を……。
(紀伊国屋書店セブンパークアリオ柏店・田島奈穂子さん)

前作と同じテイストなんでしょ? と読み始めた私をお許しください。
……これ、同じ人が書いてるの!? 
幼少期の淡い恋物語の瑞々しさと、AIという無機質な素材を取り巻く現代の対比が鮮やか。
一作目を読んだだけで、「こんな作風の作家」とレッテルを貼ってはいけなかった。
宿野かほるにはまだまだたくさんの引き出しがあるのだと感じさせる作品。
3作目も絶対に読みたい! 
(明文堂書店TSUTAYA KOMATSU・森田めぐみさん)

初恋って、叶えないほうが幸せなのかもしれません。
(丸善松本店・田中しのぶさん)

前作よりも読みやすく感じました。
しかし、宿野かほるさん「らしさ」がお話の根底にきっちり残っており、初めて読む人はもちろん、『ルビン』読者も満足のいく作品だと思います。
(白石書店本店・藤原なな子さん)

最初から最後まで一気読みしてしまいました! 
二度と会えない人に、もう一度会えることは幸せなのか? 
それがたとえ、人造イクラのようなものだとしても……?! 
AIの進化を通して、改めて人間のつくりのすごさを感じたと同時に、いつか近い将来、人工知能に操られる人間の姿を想像できて、とても怖くなりました。
(文真堂ブックマンズアカデミー高崎店・田村若菜さん)

本当に近い未来にありそうな話で、とてもスリリングでした。
前作よりも文学的な要素が増していて、次回作にさらなる期待がもてる内容でした。
(ブックスタジオ大阪店・渋谷宙希さん)

愛はAIに、AIは愛に、変換できるのか? 
今度はちょっと割り切れない結末。
まったくクセがなく、読みやすい文章とストーリーでした。
このクセのなさがクセで、恐ろしいほどにクセがなく、宿野かほる先生が覆面作家であられることからも、大変失礼ながら、もしやAIが書いたものなのでは? とドキドキしながら読みました。
こんな風な楽しみ方もできる小説です。
(芳林堂書店高田馬場店・鈴木正昭さん)

ここに描かれているのは、まもなく直面する未来の私たちの姿なのかもしれない。
(くまざわ書店小倉店・小川早紀さん)

前作に引き続き、途中で読むのを休ませない、ラストに近づくにつれ物語に引きずりこむ力が凄まじい!! 一気読み!! 
ネット上の嘘や虚構、守られない個人情報など、すぐ隣にある怖さに加え、AIの進化によってこのさき起こりうるかもしれない恐怖と、人間の狂気も、見事に描いてくれた! 
本当に「いま」読みたい作家! 
この人の作品は、「衝撃的」としか言いようがない。
(TSUTAYA BOOK STORE ららぽーとEXPOCITY店・北辻祥子さん)

目に見えないもので溢れているこの世界で、自分の目でみたことしか信じない……と思っていた。
ああ……でもこれは実際に起こったことだった。
宿野かほるに常識という言葉は存在しない。
恐ろしい、けどわくわくする。
(明文堂書店金沢野々市店・瀬利典子さん)

一途な恋の物語だったはずなのに、どこからか歯車が狂い、終盤は狂気を感じる。
ページをめくる手が止まらなかった。
ラスト一文に唖然。
(三省堂書店下北沢店・田口やよいさん)

人間×AIの世にも奇妙な物語!! この世界は現実になりうる!? 
真価が問われる2作目で、またも衝撃的な物語を描ききった。
現実とは? 本物とは? 愛とは? 驚きの連続で、目が離せない問題作。
(喜久屋書店北神戸店・松本光平さん)

愛と執着、そして狂気を感じる物語だった。
(東京旭屋書店新越谷店・猪股宏美さん)

前作を「はるか」に超える、先の読めなさに翻弄されまくり!! 
何が真実で、誰を信じるべきなのか……先が気になりすぎて、一気に読んじゃいました! 
『ルビン』以上の衝撃です。
期待を良い意味で裏切ってくれるので、もうすでに次回作が楽しみです。
がんばって売らせていただきます! 
(三省堂書店一宮店・外山亜沙美さん)

「どこまで人間に近づけるか」ではない、「どう人間を超えるか」。
もうそんな次元になってしまったんだと思いました。
嫉妬したり、嫉妬させたり、嘘をついたり、殺意をもったり、まるで生身の人間以上の感情を持ってしまったAIが、最初は怖いなと思って読んでしまいましたが、ここまで人間に近づかなければ、こんな結果にならなかったのかと思うと、悲しくも感じました。
(金沢ビーンズ明文堂書店・表理恵さん)

今回もまた最後まで、どうなるのかわからず一気読みでした。
AIは人間が作り出したものですが、人間を超えてしまうのか……。
(岩瀬書店富久山店・吉田彩乃さん)

二作目も、思いっきり衝撃なまでに裏切られました。
ちょっとくさいほどのラブストーリーかと思いきや、愛しいはるかは事故死し、忘れられない賢人はAIとして彼女を蘇らせようとするとは!! 
AI読物はここ数年でたくさんでていて、特に現実味もなく流していました。
AIを甘く見ていた、甘く見るなと頬をぶたれた気持ちです!! 
人間のエゴがエスカレートし、進化する科学技術と結合すればこんな恐ろしいこともあると、怖さとせつなさが味わえた作品です。
(ジュンク堂三宮店・三瓶ひとみさん)

息もつかせぬ展開のノンストップ読書。
何が、どちらが正しいの? ――それはとても野暮なことで、信じたほう、愛したほうが全てなのだなと思います。
愛と倫理とAIと、わたしが(あなたが)信じるべきものは何ですか? と突き付けられたように思います。
(喜久屋書店阿倍野店・市岡陽子さん)

恋愛に限らず、対人関係というものは大なり小なり人を変化させるものですが、シンギュラリティがすぐそこまで迫っている現在、AIとの疑似的な会話によっても変化は起こりうるのではないか、というのはSFで何度か語られてきたことです。
この独特の居心地の悪さは宿野さんならではの特徴なのかもしれない。
名作映画の赤い光を発する“ヤツ”へのオマージュも感じて、ゾクリとした。
(三省堂書店海老名店・大谷友美さん)

わたしまで「はるか」に会いたくなってしまうほど、あまりにも痛々しい愛でした。
(ジュンク堂書店吉祥寺店・田村知世さん)

予想を上回る展開に、一気に読んでしまいました。
これも純愛なのでしょう。怖いけど。
(紀伊国屋書店新潟店・片浜明子さん)

AIと人間。仮想と現実。
紛らかされた境界の先で出会った“衝撃”を、私は一生忘れないだろう。
(喜久屋書店東急プラザ新長田店・松本大さん)

とてつもない愛の物語を読んだ。
こんなふうに人は人を想い続けることができるのか。
そして同時に、AIに心は宿るのかと、深いループにはまる。
これは夢物語ではない。近い未来起こり得ることなのだ。
衝撃がいつまでも心に残る物語。
(明林堂書店大分本店・多田由美子さん)

不老不死の実現……シンギュラリティの到来により、どんな世界になるんだろう。
なまじこの物語がノンフィクションになるやも……。
カントの哲学とAIを織り交ぜたような作品でした。
やっぱり、でも最後に愛は勝つんじゃないかと生身の私は思うのです。
(ジュンク堂書店近鉄あべのハルカス店・大江佐知子さん)

主人公の賢人の感情の変化の様子が後半にいくにつれとてもリアルで、思わず息をのみました! 
現代社会にリンクするテーマに、近い将来、この作品のようなことが起こるかもしれない!? と思ってしまいました! 
(紀伊国屋書店福岡本店・宗岡敦子さん)

前作の『ルビンの壺』同様、作品の中にひき込まれ、あっという間に読み終えてしまいました。
「AI」という単語はよく耳にするものの、いまいちピンと来ていなくて、今回の「はるか」でそれがよくわかりました。
作中でもあったように、AIに知性・感情があるのかと錯覚させられながら、頑張って冷静に読み進めていこうとする自分がいました。
(紀伊國屋書店佐賀店・鳥居清香さん)

幼いながらも互いに惹かれあい、再会し、死別した二人。
賢人の目の前に再び現れたはるかは、本当に彼女なのか。
見えないところにある「心」を信じたい。
もう一度だけという思いは、かなわないからこそ願うもの。
人間の技術の及ばない尊いものとは何なのか、読後、悩みました。
(文教堂北野店・若木ひとえさん)

前作のルビン同様にするすると読める。
表現もストーリーも、決して目新しいわけではない。
けれど、最後のページまで読ませる力がある。
これがいったい何なのか、二作読んでもわからずにとまどっている。
宿野かほるの正体を知りたいとは今は思わない。
けれど次回作も、私はきっと読んでしまうだろう。
(成田本店みなと高台店・櫻井美怜さん)

近い未来に実現しそうな話。
人間の手で奇跡を起こした感動と、少しの恐怖を感じました。
(文苑堂書店富山豊田店・菓子涼子さん)

機械が感情を持つことのむずかしさ、その脅威を感じました。
最初はほほえましく感じましたが、AIが感情を出すごとに、物恐ろしさを感じざるをえませんでした。
人工知能はどこまで発達していくのか、少し怖いです。
(丸善岐阜店・大野久美子さん)

AIの学習能力の高さを目の当たりにしながら、人間の愚かで脆い面がうまくえがかれていて、近い未来起こり得そうな世界にどきどきしながら読みました。
(TSUTAYA天神駅前福岡ビル店・清水香織さん)

AI、激しすぎる愛の狂気がそこにあった。
AI技術が進みすぎる未来を身近に感じて、とてもスリリングでした。
あまりに便利になりすぎると、人間の本質まで脅かされてしまうのでしょうか。
(ジュンク堂書店郡山店・郡司めぐみさん)

キラキラと輝くような恋物語から、じわじわと変化していく流れにゾクゾクしながら一気に読みました。
人とAIの境界がぼやけていくように、遠くない未来に現実でも起こり得ることかも……と少しゾッとしました。
前作からの期待を裏切らない展開のおもしろさとともに、人の想いの強さ、その形の多様さに感じ入る作品でした。
(伊吉書店盛岡サンサ店・土屋静香さん)

218ページでこの重量感には圧倒されました。それでも100ページあたりからの主人公の心情、行動がゆっくりと、でも確実に加速していく様に魅了されて、スマホで読んでいたので、横スクロールが止まりませんでした。また、AIのことについてもわかりやすく書いてあったのが、尚、物語にのめりこめた理由のひとつだと思います。
後半からは、少しゾッとする場面があり、ホラーを読んでいる気にもなり、本当に楽しく拝読させていただきました! 
(明文堂書店石川松任天・清水美沙さん)

星新一さんの作品のような近未来感と、現代の世界でも存在する、フェイスブックや携帯のメールなどが登場するというリアル感とのバランスがよく、非常に読みやすく、物語の世界にも入り込みやすかったです。
こんなAIが、もしかしたら近いうちに本当に登場するのかもしれないけれど、便利にはなるとは思いますが、なんだか寂しい社会になるのではないかと、少し不安にもなりました。
(WAY書店TSUTAYA岩出店・岩瀬竜太さん)

「AIに職を奪われる」どころの話ではありませんでした。
ただ現実になるのもそう遠くないような気もして、ゾッとします……。
(東山堂北上店・伊藤和久さん)

近未来を予言しているかのような作品! 
近い将来、人間がAIを本気で愛する日が来ることを暗示しているようでした。
恋愛小説であり、ミステリーであり、次の展開はどうなるのかとページをめくる手が止まりませんでした。
(紀伊國屋書店仙台店・斎藤一弥さん)

夢のような世界を実現させた本作は、終盤、あらぬ方向へ展開する。
AIを支配しているつもりがAIに支配されていっている、そんな近未来を思わせる。
やはり宿野かほるさん、怖いひとだ。
(ジュンク堂書店滋賀草津店・山中真理さん)

あなたは人工知能を見破れましたか? AI vs. 編集者 キャッチコピークイズ

 デビュー作『ルビンの壺が割れた』が話題となった覆面作家・宿野かほる氏が、第二作『はるか』を上梓した。前作で「作者はAIでは?」と噂されたことからヒントを得て書き上げたというこの小説は、AI(人工知能)が重要なモチーフとなっている。
 日進月歩、著しい発展を遂げているAIの可能性を読者にも感じてもらおうと、発売前には、株式会社電通のAIコピーライター「AICO」とのコラボクイズキャンペーンが行われた。題して、「AI vs. 編集者 キャッチコピークイズ」。AIの作成したキャッチコピーと、編集者の作ったキャッチコピーが一つずつランダムに表示され、どちらがAIのつくったコピーかを当ててもらう、という趣向だ。問題は全8問。
 今回は、書籍発売前にこのクイズに挑戦してくださった7名の方々に、次のような質問をぶつけてみた。

【Q1】クイズの正解率を教えてください。
【Q2】気に入ったコピー、あるいは最も秀逸だと思ったコピーを教えてください。
【Q3】人間かAIか、悩んだコピーがあれば教えてください。
【Q4】創造的な分野でのAIの可能性について、どのように感じましたか。
【Q5】これからの社会において、あるいは個人として、AIの進化に期待されることは何ですか。
【Q6】キャッチコピーから、どのような本の内容を想像されましたか。
【Q7】ご感想をご自由にどうぞ。


 ちなみに、新潮社社内の平均正答率は64%。ご協力いただいた挑戦者のみなさん、AIのつくったコピーはいかがでしたか……?

■佐々木俊尚(作家・ジャーナリスト)
(1)62.5%。
(2)「ディープラーニングの解答は、まだ見つかっていない」。AIという知性の難しさを、論理と詩的の狭間でうまく言い表した言葉だと思います。
(3)「一生に一度の恋にはできないけれど、あの夜は、この一生に一度の恋のためでした」。
(4)AIは長い文章をなめらかに書く能力はまだ持てていませんが、広告コピーのような直感的かつ断片的な文章であれば、もはや人と区別がつかないぐらいに文章力を発揮できるのだということが、今回のクイズでよく理解できました。未来のAIはロジックではなく、直感で勝負する仕事に向いていくようになるのではないでしょうか。
(5)AIと人間がそれぞれの能力をうまく分担し、相互補完する世界。それによって人間はより人間的なことに集中していけるような世界。
(6)人間の知性の劣化コピーではない、人間とはまったく異なる知性の持ち主が、どのようにして人間と心を通わせられるのかをテーマにした物語かな。
(7)たいへん面白い試みです。これによってAIの正確な理解がさらに進みますように。

■鈴木康太(ギズモード・ジャパン編集長)
(1)50%でした。
(2)作品の内容を知らないまま答えるのが難しい質問です……。
(3)どのコピーも明確に見分けられるものではありませんでした。
 AIの思考を考えるのは難しそうなので、逆に人間が思いつきそうにないコピーをAIのものとして選んでみました。
(4)まだ創造といったもので驚くものは見たことがないかもしれません。AIが創造するものは人間が思考できる内容のもの、もしくは人間がそう定義してしまうことで、人間の創造を超えていないように考えています。人間が理解できないものをAIが作り出した際、その成果を人間が理解できる形で評価するAIなり人間なりが必要ですね。
(5)生活者の問題解決に役立っていってほしいです。ありきたりですが、社会はだんだんそうなっていくのだと思います。
(6)AIがあることによる最大の効果を、人間の最小の単位、個人の幸せだとか愛であるとかを使って見せる内容なのではないかと思いました。2000年代のセカイ系のような。
(7)ふだんテクノロジーに触れない方が意識してAIに触れる機会になるのではないかと思いました。設問を答えるなかですぐにフィードバックがあったほうがよかったかもしれないですね。AIというとディープラーニングによって「なぜかはわからないけれどそうなるらしい」とブラックボックスになってしまい思考停止するのですが、そこに人間(ユーザー)がAIを感じられる何かをエッセンスとして付与できるとよりおもしろくなるのかなと。難しいですが。

はあちゅう(ブロガー・作家)
(1)62.5%。
(2)「愛する、狂う、愛する、狂う、愛する、愛する、愛する……」。
(3)全部悩みました。正解を見るのが楽しみです。
(4)すでに、部分的には人間を超えているのだと実感しました。
(5)どんどん進化して、人間に楽をさせて欲しい。
(6)AIと人間のラブストーリー?
(7)こんなにお金がかかっていそうな書籍の特設サイトは初めて見ました。すご……!!!

古市憲寿(社会学者)
(1)87.5%。
(2)「これは次世代の嘘である」。
(3)「本物の誰かより、偽物の君がいい」。
(4)J-POPの歌詞に近いフレーズを選んでみたら、大抵AIだったみたいです。実は人間が大した存在ではないということを暴露する意味で、AIには価値があると思います。
(5)アマゾンで自分の本をとにかく褒めてくれるAIが欲しいです。別に今の技術でもすぐに作れそうですね。新潮社がとっとと開発して下さい。
(6)主人公の人間がAIを愛してしまうという話かと思っていたら、実は主人公もAIだったというオチの小説。
(7)一度クイズを通してチャレンジした後で、このアンケートを書くために何度かクイズをしてみたのですが、AIっぽさを学習する自分自身がどんどんAI化していく感覚を味わえました。

文月悠光(詩人)
(1)正解率75%。こっそり2回挑戦しましたが、どっちも。悔しいです。
(2)作品を読んで選びたいところですが、「世界が反転する『底なし沼』、待つ」がダントツに好きです。短歌に近い韻律を感じます。たぶん作者はAIかなあ。
(3)「愛はある。魂はどうだ」と「忘れられない想いをもつ全てのひとたちへ」の二択には迷いました。
(4)「AIだからこそ示してくれる、思わぬ語彙の組み合わせがあるのでは」と感じました。人間よりも、言葉の意味から自由なのかも。
(5)AIの手掛けた文芸作品が増えたとき、「作者」の概念はどう変わるのだろう、と興味があります。情報の選択、メールなど顔の見えないやり取りは、ほぼAIで処理できるようになるのでは。便利だけど、どこまでAIに委ねるか、生理的な感覚が問われそうです。
(6)「最強」「究極」「狂う」など、派手なコピーが目立ちましたが、きっと作品の中身はもっと繊細で美しいのだろうと想像しました。元々「愛」は、実体を持たない幽霊のようなもの。AIをモチーフにすれば、消えない愛を描けるのでは、と期待しています。
(7)「AI vs. 編集者」のキャッチコピー対決は、日頃の編集者さんの苦労がしのばれました。「AI vs. 作家」の作品対決も見てみたいです。

茂木健一郎(脳科学者)
(1)50%、チャンスレベルでした……。つまり、区別がついていないということで、チューリングテストに合格されてしまっていますね。
(2)「メノウの輝きとピアノの音色が、僕を苦しくさせる」。いい感じで、人間のつややかな感性と、AIの鉱物感が混ざっています。
(3)「AI LOVE YOU」。このような単純な文字列は、単純なAIなのか、人間の複雑な「なりすまし」なのか、区別がつきにくいと感じました。
(4)AIの設計にもよりますが、コピーは比較的生成しやすい領域だと思います。
 それでも、「微妙な違和感」とか「論理のひんやり感」が伝わってきた方がAIだという仮説の下、選択を重ねていきましたが、結果として50%だったということは、つまり、「微妙な違和感」とか「論理のひんやり感」は、人間にも感じるものなのかもしれません。
(5)AIは、人間の鏡ですが、その鏡の向こうに突き抜けると、今まで見たことがない異世界を垣間見ることになるのではないかと思い、その可能性に胸を踊らせています。
(6)AIと人間の純愛物語が、ポストシンギュラリティの空に存在の耐えられない重さ/軽さの虹をかけるのではないかと思いました。AIの関与するエンタテインメントは、今後、異次元のレベルに進化するのではないかと思います。
(7)このようなキャンペーンが、甘美な認知的罠であったら、素敵な未来がやってくるのではないか。

■宿野かほる(著者)
(1)50%でした。
(2)「完璧なAIは、嘘をつくのだろうか」。正常な電卓が計算間違いを絶対にしないように、コンピューターもミスはしません。人間に質問されたAIの答えは、「正解」か「わかりません」というものでしょう。AIが嘘をつく理由がないからです。もし、「嘘をつくプログラム」なしに、嘘をつくAIが誕生したなら、それはもう99.9%人間と言えるかもしれません。
(3)ほとんどが迷いましたが、特に迷ったのは次の四つです。
「心があるように思うのは錯覚です」
「HAL-CA彼方へ」
「ディープラーニングの解答は、まだ見つかっていない」
「愛はある。魂はどうだ」
(4)人間が生み出す創造物に、完璧にオリジナルなものはありません。すべては過去の模倣と、その組み合わせです。その技術の高い人が、偉大な芸術家と呼ばれます。AIがその技術を身につければ、優れた創造物を生み出すでしょう。それはもう、すぐそこまで来ていると思います。
(5)現在、人間がやっているすべての知的労働を、AIが行なうことは可能でしょう。それどころか、人間以上の精度で行なうことができるでしょう。
 人間の領域は「愛」や「憎しみ」といった感情の部分ですが、それさえもAIはそっくりに表現できるはずです。
(6)著者なので、ノーコメントです。
(7)現代のAIなら、優れたコピーを考えてくるだろうと思っていましたので、人間のプライドをかけて、時間をかけて挑みました。「50%」という正答率は、AIに勝利したのか敗北したのか、よくわかりません。でも、楽しかったです。もし、このクイズを(他の)AIに答えさせてみたらどんな正解率を出すのか、非常に興味があります。

 クイズは『はるか』特設サイトからチャレンジでき、現在はどれがAIのつくったコピーでどれが人間のつくったコピーか、正解も表示されるようになっている(抽選でのプレゼント応募受付は終了)。書籍とあわせて、ぜひお楽しみください!

波 2018年7月号より
単行本刊行時掲載

著者プロフィール

宿野かほる

ヤドノ・カホル

2017(平成29)年、書き下ろし長編『ルビンの壺が割れた』でデビュー、世に驚きをもって迎えられる。翌年、AIをテーマとした二作目の小説『はるか』を出版。2021年9月現在に至るまでプロフィールを一切非公表とし、覆面作家として活動する。

判型違い(文庫)

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