東京近郊スペクタクルさんぽ
1,760円(税込)
発売日:2018/04/26
- 書籍
- 電子書籍あり
「じみじみ旅」はもう飽きた!
東京発、非日常行きの日帰り絶景ガイド!
B級スポット巡り? 路地裏さんぽ? ……ちょっと、いいかげん飽きてませんか? そう、旅で一番大切なのはスペクタクルなのだ。たぶん。関東平野に眠る「地底都市」からジェットコースターのような乗り心地のモノレール、はたまた真の砂漠を求めて伊豆大島へ。さんぽの達人が歩き尽くした驚きと妄想のグレートジャーニー!
地底のリゾート
上のダムと下のダム
サムイボ的大空間
土木建造物と崇高
交通機関というよりアトラクション
なぜモノレールなのに、ダイナミックなのか
湘南・鎌倉スペクタクルさんぽ特選コース
日本最優秀の龍
ゴッホは伊八の影響を受けていた?
すぐれた社寺彫刻は3Dである
伊八の特徴は、細やかさ
百態の龍
実在の動物のような龍
奇跡の森に入る
アカテガニ人生劇場
トンネルを掘った人たちはどこへ行ったのか
穴と妄想
現実と異世界が交叉する
まだまだ穴はつづく
シラカワ氏も工場が好きだった
坂口安吾も工場が好きだった
工場夜景電車に乗る
異形の神像たち
スペクタクル足尾銅山
森の番人ジャンダルム
神秘の王国への道
砂漠とジャングルの境目
黒い不毛と緑の濃厚
スガノ氏の失敗
砂漠とプラモ屋
もうひとつのスペクタクル
中学生による研究「三原山滑走台の謎に迫る」
火口探検のゴンドラ
狂気の火口探検
参考文献
書誌情報
読み仮名 | トウキョウキンコウスペクタクルサンポ |
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装幀 | 徳丸ゆう/装画、新潮社装幀室/装幀 |
雑誌から生まれた本 | 考える人から生まれた本 |
発行形態 | 書籍、電子書籍 |
判型 | 四六判変型 |
頁数 | 256ページ |
ISBN | 978-4-10-351781-8 |
C-CODE | 0026 |
ジャンル | 国内旅行 |
定価 | 1,760円 |
電子書籍 価格 | 1,408円 |
電子書籍 配信開始日 | 2018/10/05 |
インタビュー/対談/エッセイ
散歩にもっと驚きを
旅が好きで会社をやめ、旅の本ばかり出しているうちに、気がつけば紀行作家もしくは紀行エッセイストなどと呼ばれるようになり、いい仕事ですね、などと人に会うたびに言われたりしている。なかには、気楽でいいわよね、とはっきりとやっかみを口にする人もあるというか妻がある。「こ、子どもはおれが見てるから、どこか行ってきたら?」と思わず答えると、「そんなお金がどこにあるの」との返事。そうなのである。お金はないのである。紀行作家はちっとも食えない。ほんとすいません。
最近はどうも紀行作家というようなものは流行らなくて、むしろインスタグラマーのほうが流行っているらしい。旅に出ていい感じの写真を撮ってアップすることで多くのフォロワーを集め、そうするとスポンサーがついてお金になるのである。実にうらやましいが、ただそうすると懸念されるのは、スポンサーに都合の悪いことは言えないというジレンマが生まれることだ。そこは大人だからまだ我慢するにしても、自分が書きたいものとスポンサーが見せたいものが大きく食い違っていては話にならない。
以前、ある航空会社の機内誌に寄稿する機会があり、ジェットコースター乗り倒しの旅という記事を提案したら、即座に却下された。ものすごい角度で急降下! とか、落下最高! とか書かれては困るとのことであった。なるほど、それもそうである。
まあ、どっちにしても、かわいい女性ならともかく、しょぼくれたおっさんが旅する姿などアップしたところでフォロワーは増えないだろう。スポンサー以前の問題である。そんなわけでインスタグラマーはあきらめ、話は紀行作家に戻る。
長く自分の好きなものばかり追いかけて、自由なテーマで旅を書いてきた。
ジェットコースター乗り倒しの旅も独自にやり、それ以外にも、いい感じの石ころをひたすら拾いに行く旅や、ベトナムのふしぎな盆栽を探して歩く旅、さらにシュノーケリングでそこらじゅうの海に浮かぶ旅だの、日本全国の巨大な仏像を見て回る旅だの、増築を繰り返して迷路のようになった温泉旅館へ迷子になりに行くとか、水族館の奥のほうにある無脊椎動物の水槽だけを見て回るなんていうこともやった。自分が本当に見たいものだけを見、本当に行きたい面白そうな場所だけ行ったわけだが、そうこうしているうちに、ずっと気にかかっていたけれど、そのテーマで一冊書けるほどではない場所がいくつか溜まってきて、それについてもなんとか行って書いてみたいと思うようになった。それで考えたのが、そんな場所にぷらぷら行ってみる気楽な旅企画である。
思えば今は散歩ブームで、なかでも、都市化に取り残された路地裏とか、昭和レトロな雰囲気を残す町、隠れ家のようなカフェ、のどかな自然の残る郊外など、おだやかでノスタルジックな散歩に人気があるようだ。
わたしも散歩は大好きだが、ただ、あまりおだやか過ぎる散歩では刺激が足りない。根が貧乏性であるせいか、昭和レトロな喫茶店なんかを訪ねても興奮しないのである。そこは自分の世界の側だからかもしれない。そういう散歩も見方を変えれば楽しくなるとは思うが、そこはむしろ刺激に疲れたときにとっておきたい。
今はもっとびっくりする場所やものを見にいきたい気分だ。見たことのないもの、奇想天外なものに出会いたい。そんな思いで行き先を厳選した。
とりあげたのは、町の下にひっそり存在する地底湖や、隠れキリシタンの秘密の神像、源流から河口まで1時間半で歩ける原初の川、ジェットコースターのようなモノレール、稀代の天才彫師の寺社彫刻、火山の噴火口を探検したゴンドラなど、わたしの普段の日常生活ではあまり出会うことのないタイプの場所だ。関西で生まれ育ったわたしにとって、関東は平野ばかり広くて単調な場所というイメージがあったが、こうして歩いてみると思っていた以上の変化に出会え、楽しかった。探せばまだまだスペクタクルな何かがありそうである。
タイトルを「スペクタクルさんぽ」としたのは、文字通り見応えを重視したということである。あと「東京近郊」と頭についているのは純粋に予算の都合である。
(みやた・たまき エッセイスト)
波 2018年5月号より
単行本刊行時掲載
【GoPro動画】アクションカメラを持って、スペクタクルスポットに行ってみた
湘南モノレール編 ダイジェスト版
素掘りトンネル編 ダイジェスト版
スペクタクルスポットMAP
本書に出てくるスペクタクルなさんぽスポットをまとめました。
アイコンをクリックすると写真や住所など詳細がご覧いただけます。
イベント/書店情報
著者プロフィール
宮田珠己
ミヤタ・タマキ
1964年兵庫県生まれ。大阪大学工学部卒業後、会社勤めの傍らアジア各地を旅する。1995年、『旅の理不尽〜アジア悶絶篇』を自費出版してライターデビュー。以来、旅とレジャーを中心に幅広い分野で執筆活動を続けている。『旅の理不尽アジア 悶絶篇』『わたしの旅に何をする。』『ジェットコースターにもほどがある』『なみのひとなみのいとなみ』『だいたい四国八十八ケ所』『日本全国津々うりゃうりゃ 仕事逃亡編』『日本ザンテイ世界遺産に行ってみた。』など著書多数。