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死を覚悟した瞬間から“青春の繰り返し”が始まった――。過去も未来も飛び越える、絶対、最強の恋愛小説。

あなたはここで、息ができるの?

竹宮ゆゆこ/著

1,620円(税込)

本の仕様

発売日:2018/10/22

読み仮名 アナタハココデイキガデキルノ
装幀 馬込将充/写真、新潮社装幀室/装幀
発行形態 書籍
判型 四六判
頁数 174ページ
ISBN 978-4-10-352111-2
C-CODE 0093
ジャンル 文芸作品、文芸作品
定価 1,620円

私は二十歳の女子大生で、SNS中毒で、アリアナ・グランデになりたくて。でも、いま目の前にあるのは、倒れたバイク。潰れたヘルメット。つまり、交通事故。そこで死を覚悟した瞬間から、“青春の繰り返し”が始まった。でも、何度繰り返しても、避けられない――。息が止まるほど、激しく、熱い、魂と恋の物語。

著者プロフィール

竹宮ゆゆこ タケミヤ・ユユコ

1978(昭和53)年、東京生れ。2004(平成16)年、「うさぎホームシック」でデビュー。シリーズ作品として「わたしたちの田村くん」「とらドラ!」「ゴールデンタイム」、長篇小説に『知らない映画のサントラを聴く』『砕け散るところを見せてあげる』『おまえのすべてが燃え上がる』などがある。

インタビュー/対談/エッセイ

助けにいこう、助けられないかもしれないけれど。

津村記久子竹宮ゆゆこ

新作書き下ろし小説『あなたはここで、息ができるの?』が絶好調の竹宮ゆゆこさん。その竹宮さんが〈宇宙一好き〉という津村記久子さんとの対談が、話題のお仕事小説『この世にたやすい仕事はない』の新潮文庫化を機に実現。 おふたりの趣味と個性があふれだす、初顔合わせ〈同い年〉トークをお届けします!

同い年なんです。

竹宮 私が津村さんの大ファンで、「今、一番読んでる作家さん、誰ですか」って訊かれるたびに、「津村さんです」って一生懸命答えていたら、今日このような機会が巡ってきました。なので、さっき会議室で初めてお会いした瞬間の感動を、まだ忘れられません。津村さん実在するんだって。
津村 大阪から直行したんで、すみません。大きい鞄を抱えて、オレンジジュースを飲みながら入っていって(笑)。竹宮さんとは同じ七八年の、
竹宮 二月二十四日です。
津村 私は一月二十三日です。『とらドラ!』のアニメのサムネイルは、むっちゃ動画配信で見かけますし、私もアニメ化されてる原作の著者さんと会うとか、もう初めてなんで、華やかなラノベ作家の方が読んでくださってるのに、びっくりしました。
竹宮 私も芥川賞作家とお会いするの初めてです。
津村 大阪行ったら、ほんま私そのへんにいますから(笑)。
竹宮 最初は、表紙に惹かれて『ミュージック・ブレス・ユー!!』を手にとって、それからはもう、小説もエッセイもどんどん読んでいったんです。
『大阪的』のカバー裏に、「津村さん、ラーメン二郎を熱く語る」とか書いてあるともう気になって、あ、津村さん、二郎、行ったの? と思って、「津村記久子 二郎」で検索しまくったりして(笑)。
津村 私と「Meets Regional」の初代編集長の江弘毅さんが大阪についてしゃべってる本ですね。
竹宮 とくに衝撃だったのが、最初の『君は永遠にそいつらより若い』で、買う前にパラパラっと一ページ目を読んだときで、なんかすごい傷口を見たような気がしたんです。その場に流血してる人間がいるわけでもない。でも私は見たんです、血の跡を。
津村 本当にありがとうございます。デビュー作は、編集者さんがついて書いた小説ではないから、何ていったらいいんかな、好き勝手の良さもあったんでしょうか。
竹宮 まとめようとしてない、むき出し感がすごかったです。

「私の津村さん、見ます?」

津村 いま四十なんですけど、年いったーって思うんですよ。サッカー場のゴール裏におるおっちゃんたちが、バックスタンドで肉まんを渡し合う時のトークとかが面白くなってきて。反対に竹宮さんの新刊『あなたはここで、息ができるの?』は、本当に若々しい。同じ年なのに(笑)。
竹宮 これはフレッシュな女子の一人語りですね。
津村 すごい手綱を短く握ってる感じで、バーッて女の子の語りが進む。荒唐無稽なことに巻き込まれるのかなって思っていると、反対にものすごく普遍的なところに着地します。その普遍性の部分にあらわれるキーワードは、「献身」なんだと思いました。二十歳ぐらいの女の子ってもう世界で一番自分勝手な生き物なんで(笑)、ルッキズム的な描写もあるんですが、そんな女の子の気持ちと「献身」って、現実的にはなかなかつながりにくいのに、見事につながっています。
竹宮 ネタバレになるからあまり言えないんですが、献身することを私が選んだからねっていう主体的な態度が主人公にはありますよね。
津村 そこがすごく感動的なんです。人が人を助けるのを書くのってすごく難しいですし。
竹宮 いまお話しされたことから、私は、逆に津村さんイズムを感じます。津村さんの登場人物は、なにかを失うことによって誰かを助ける。しかも、助けることで自分も次のステージに進む。みんながそれぞれに自分が差し出すものを探していて、そこがすごい好きなんです。
 たとえば『エヴリシング・フロウズ』で、主人公のヒロシが大土居に「助けるよ」と言うところ。困った状況にある同級生を前に「いや、助けるよ」って、ねっとりした言い方じゃなくサラッと返す。あのヒロシ特有の反射の速さには、カッコよさという言葉では言い尽くせない、人間性の良さがあります。
津村 ゲット・アップ・キッズという好きなバンドがあって、Don’t worry, I’ll catch youって歌う曲があるんです。これはなかなか言えないことで、たいていアーティストたちは、最初の頃は向こう見ずなこと言うんですけど、技術が高くなったり立場が変わると、だんだん慎重になって、責任の取れることしか取り扱わなくなる。それはリアリティにつながってるから別に悪いことでもないんですけれども、不意に感動するものって、その外側に行こうとしてるものやって、すごく思うんです。
 竹宮さんの『あなたはここで、息ができるの?』も、責任の取れる範囲の外にある物語だなっていうふうに思います。登場人物が一か八かのリスクを負ってるのに、「負ってます!」みたいなことを言わない。というかリスクを負っていること自体を多分わかってない。
竹宮 うん、そうなんです。
津村 そのすごく勇気があるなって思ったっていう感覚を小説にしたかったのが『エヴリシング・フロウズ』のいまおっしゃったあのへんですね。でも、それを人に言える日が来ると思ってなかった(笑)。
竹宮 そうやって津村さんは「私が書いた小説です」というものを見せてくれるじゃないですか。そして、私はそれを読む。すると読んだ瞬間にもう、津村さんの小説というより、「私の」読書体験になっていくんですよね。ここでご本人を前に感動を伝えながらも、「私の津村さん、見ます?」みたいなシュールな気持ちにもなります(笑)。

迷ったらええがな

竹宮 こんど、以前テレビドラマ化された『この世にたやすい仕事はない』が文庫になるんですよね。これは、主人公の女性が短期の仕事を転々としてゆきます。ちょっと面白げな。
津村 新卒からずっとやってきた仕事につまずいて、燃え尽き症候群になった主人公が、「ドモホルンリンクルみたいな、コラーゲンの抽出を見守るような仕事をしたい」ってハロワのおばちゃんにつぶやくと、「え、あるよ」みたいなこと言われて……。
竹宮 意外とあるっていう(笑)。
津村 ほんで、ただただ小説家を見張る仕事をする。
竹宮 これが一つ目ですね。
津村 はい、あとはもう転々と。二個目がバスの車内アナウンスを作る仕事。「次はなんとかって饅頭屋がありまーす」みたいな。三個目がおかきの袋裏の豆知識の原稿作りの仕事をやって、四個目が、ちっちゃい、高齢者の多い町にポスターを持ち込んで、「貼らせてください」と言ったり、「貼らないで」って怒られたりするっていうだけの仕事。最後の五個目は、万博公園がモデルなんですけど、大きい森のような公園で、ただただ小屋の中で、もぎりのチケットを作る。それだけの小説です(笑)。
竹宮 おかきの袋の仕事が私的にはちょっとやりたい。
津村 みんなやりたいって言いますね。
竹宮 「じゃがりこ」ってあるじゃないですか。味ごとにちょっとした小ネタがあって、「あ、じゃがりこのあの感じね、おかきは。私、できる」って(笑)。
津村 それまで、パワハラのことをいっぱい書いてきたから、それは出さずに、でも仕事がいやになる小説を書いてみたいなあと思いました。
竹宮 主人公は職場を転々とするんだけれども、その迷走が、次に踏み出す力を蓄えるための、すごいいい時間になっていますね。
津村 ありがとうございます。パワハラに遭うような明快な理由はなくても、「迷ったらええがな」みたいなことを言いたかったんやと思います。「点の失望」に囚われているより、次に行こうみたいな。
竹宮 「そういう時期もあっていいんちゃうん」みたいなことを言う、公園のおっちゃんも存在感がありますね。すごい関西人だし(笑)。
津村 あれ担当さんもすごい好きみたいで、しゃべり方を真似して、「どんと来いですわ」とかって言ってました。

絶妙に意味がないことの面白さ

津村 根拠があって計画的に進むのもそれは面白いんですけれども、パッとくるのもいいよねって思うんです。たとえば、ファミレスにおると、周りの会話とか聞いてまいません?
竹宮 めっちゃ聞いちゃいます。面白そうな話をしそうな人がいたら、イヤホン外して聞きます(笑)。
津村 私、最近一番好きだったんが、私より十五個ぐらい上のおばちゃんとおばちゃんがしゃべってて、レシート見ながら、「もう三時間もしゃべってるな」って言うんです。ほんで、その片方のおばちゃんがドリンクバーに行ってきて、で、ドリンクを持って帰ってきて、「これな、あれとあれ混ぜてんやんか」って言ってたんが、ほんまに好きで。
竹宮 オリジナルドリンク。
津村 ガストで三時間もおって、「あれとあれ混ぜたらおいしいで」って。そこに絶妙に意味がない(笑)。そういうふうに年をとりたいと思って。
竹宮 うんうんうん。
津村 「意味、あるわよ!」って話してるときほど、意外とどうでもよかったりするじゃないですか。そのおばちゃんが突然そういうことを言い出したりする不意の動きがやっぱり面白いなと思って。
竹宮 人間っぽい、リアル人間っぽい面白さですよね。
津村 さっき竹宮さんがおっしゃったヒロシのお話でも「やるよ」みたいなことを一切言わずに不意に動き出す。でも、そのあいまにラーメンを食べに行ってるとか。そういうのがなんかいいんです。
竹宮 そういえば津村さん、二郎であの呪文唱えました?
津村 何でしたっけ。
竹宮 「マシマシ」。
津村 あ、しなかったです。増されてもみたいな感じで。
竹宮 やっぱり大阪的(笑)。情報を食べた、経験を食べたんですね。

津村記久子(つむら・きくこ 作家)
1978年大阪生れ。「ポトスライムの舟」で芥川賞。ほか著書多数。最新作は『ディス・イズ・ザ・デイ』。本誌連載中の「やりなおし世界文学」は1月より「Webでも考える人」に場所を移してさらにパワーアップ。

竹宮ゆゆこ(たけみや・ゆゆこ 作家)
1978年東京生れ。シリーズ作品に「わたしたちの田村くん」「とらドラ!」、長編小説に『砕け散るところを見せてあげる』『おまえのすべてが燃え上がる』などがある。本誌先月号では中川翔子さんと対談。

(2018年10月2日神楽坂ラカグにて)
波 2018年12月号より
単行本刊行時掲載

「貪欲」は女子の強さの証

竹宮ゆゆこ中川翔子

竹宮 私は小説家としてデビューしたのが2004年なんですが、最初に短編が雑誌に載って、でも新人賞をとったわけではなくて、だから一話で終わってしまうのか、文庫が出せるのか、未来が見通せない時期があったんです。一方で、会社は辞めてしまっていたので「小説の続きを書いてみて」という編集者のふわっとした言葉に乗るしかなくて。それで、先の見えない孤独というか、「いま、ちょっとヤバいな」という時に、あるブログに出会って。
中川 ま、まさか。
竹宮 本当にたまたま、友人から「面白い子がやっているサイトがある」「コスメに詳しくて、化粧品とかたくさん紹介されてて、参考になる」と聞いて、「へぇー」と思って見始めた。それが中川さんのブログだったんです。
中川 ええー、初期の初期の初期ですよね、その頃は。懐かしい。
竹宮 深夜に執筆をしていると、しーんとして、ここに未来はないのかもしれない、と感じられる瞬間があって、それはすごく淋しくて。そんなときに「あ、しょこたん更新しているかな」と思ってブログをみると、大体いつも、更新してる。こいつ、起きてるぞ、って。
中川 あはははは(笑)。
竹宮 何か、心を開いてくれている感じがしたんですよね。書き方なんです。仲良しの一番可愛い子のブログを見ているような、すごく近い距離感で言葉があって。もちろん、芸能人のブログだっていうのはわかっているんですけど、嘘がない本当の気持ちではしゃいだり、好きだ、って書いているのが伝わってきました。パソコン越しにただブログを読んでいるだけだったんですが、中川さんの言葉に、本当に救われました。
中川 嬉しいです。ブログは「どうせ、読まれないだろう」ぐらいの気持ちで始めたんです。学生時代は全然友達ができなくて、お仕事もあまり上手くいかなくて「もう私、これからどうしよう」という感じで。私って、やっぱりダメなんだ、と腐っていたから、せめて好きなことを書き記したい、と思ってマネージャーさんに「日記をやらせてください」とお願いして。でも、好きなことを書こうと思ったら、いつの間にか更新すること自体にハマってしまった。
竹宮 そう、鬼更新でした。いつ見ても更新されてて、楽しくて。
中川 実家がゆるくて、朝方まで母親とごろごろしながら漫画を読んでる、みたいな生活がごく自然にあったので、明け方に起きているのが当たり前だったんです。更新を続けていく中で、だんだんとリアルに思っていることを口で言うより先に書くようになって。書けば書くほど楽しくて。私自身が言葉にポジティブにしてもらえた経験でした。でも、まさか竹宮先生に読んでもらえていたとは……。
竹宮 この同じ時間、ちょっと離れたところで、この女の子が面白いことを書いている、というライブ感に救われましたね。今ならツイッターとかインスタとかありますけど、でも、あの濃度で心を開いてくれる人は、やっぱりいないと思います。とにかく、エネルギーが凄かった。
中川 それが未来への種まきになっているとは夢にも思わず、夢中で書いてました。あの頃、わけもわからず書いていた言葉たちが、今のお仕事にも繋がっていたりして、助けられています。
竹宮 当時から感じていたんですが、中川さんの知的探究心は凄まじいですよね。ファンクラブに「貪欲会」って名前をつけられていますけど、中川翔子といえば「貪欲!」って感じがします。
中川 自分の中でハマった単語なんです、「貪欲」(笑)。
竹宮 ブログを書いて、役者をして、歌手もやって。好きなことをやり尽くすイメージです。他に類を見ない、というか。「貪欲」オーラが身体から……。
中川 出ちゃってますかね。
竹宮 出てます。間違いなく。たとえば、スカシカシパンの話をしていいですか。
中川 あ、はい。急ですね(笑)。私が大好きなスカシカシパン。
竹宮 スカシカシパンって海の生物で、ウニの一種なんですけど、私は中川さんが話しているのを聞いて、初めて知りました。なんであれに興味を持ったんですか。
中川 祖父が昔、図鑑を買ってくれて、それで知ったんですけど、見た瞬間からスカシカシパンだけは特別で。「卒業文集で好きな男子がここにいた!」みたいな。閉じたら忘れられなくなりました。
竹宮 「見つけた!」って感じですね。
中川 スカシカシパンマンってキャラクターを自分で作ったり、ラジオでコーナーを作ったり……。
竹宮 その好奇心は本当に凄いです。たぶん、突き詰めるとオタク気質ってことなのかな、と思うんですけど。失礼ながら、同じ種類の人間のような気が……。
中川 失礼ながら、同じ気質だと思います(笑)。

死んでも残るものは嬉しい

竹宮 昨日、中川さんがプリンセスを演じているディズニーの「塔の上のラプンツェル」を観たんです。今まで見逃していたので、お会いできるならこの機会に、と思って。
中川 わざわざ観ていただいたんですか! ありがとうございます。
竹宮 私は今回、中川さんが声をやってらっしゃると思って観たんですけど、ラプンツェルの声がとてもナチュラルというか、良い意味で中川翔子っぽくなかったんですよね。そこが新鮮で。
中川 めちゃくちゃ嬉しいです。私はアニメーションでタレントの顔が浮かぶのは違うと思っていて、だから役を受けた時の目標として、中川翔子感を消したいのと、ラプンツェルが喋っているように演技したい、ということがあったんです。ただ、私の感じを消し過ぎると、中川翔子を選んでもらった意味合いと違ってきてしまうし、そこはとても悩みました。
竹宮 映画の中で、ラプンツェルは笑うと口元が可愛いんですよね。歯が見えて。この笑顔と中川さんの声がぴったりで、中川さんでありラプンツェルである、となっていて、だから、いま目の前にいるのは「リアル・ラプンツェル」なんです、私にとって。
中川 嬉し過ぎます。鳥肌が立ちました。
竹宮 声のお仕事といえば、今度はマーベルの「ヴェノム」でヒロインの声を担当されてますよね。ニュースを観て、ヴェノム化した中川さんの写真があって、あ、合成かな、と思って記事を読んでいったら、「え、変身?」「え、メイク?」となって、びっくりしました。
中川 あれ、特殊メイクではなくてペイントだけだったので、八時間もじっとしていたんです(笑)。
竹宮 八時間!
中川 耳の穴まで塗られて、しかもよく考えると、私はヒロインの声の担当なのに、メイクはヴェノム、という(笑)。でも、スタッフさんの「やろうぜ!」という空気が面白くて。何より、写真や歌は、私が死んでも残るものなので、ディズニーもマーベルも、やれたことが嬉しかったですね。

こんなところで終われない

中川 私が竹宮先生を知ったのは「とらドラ!」で、あの作品が大好きで、ヒロインの逢坂大河にずっと憧れていたんです。髪の毛を茶色でロングにしているのも、彼女の影響で。今日も実は、大河ヘアーです。
竹宮 うわぁ、嬉しいです。大河の髪型にはこだわりがあって、普通の女の子が憧れる「可愛い髪型」にしたかったんです。ライトノベルやアニメのキャラクターは、髪を片方だけ編んでいたり、触角があったり、記号を求められることが多くて。大河も最初はそうしたキャラデザがでてきて、「いや、大河は違う」と。女の子の憧れ「ふわふわロングヘアー」で、茶色くて、それでいてお風呂に入るときは結ぶし、プールに行くときはまとめる。そうやってシチュエーションに合わせて髪型を変える子にしたかった。
中川 わかります。そのナチュラルな感じも、私が大河を好きになった理由だと思うんです。十年経っても憧れ続けている、特別な女の子。
竹宮 ありがたいですね。髪型は熱弁して今の形になったので、特に嬉しいです。
中川 竹宮先生の小説は、言葉がお砂糖みたいにすーっと溶けて、さらさらと頭に入ってくる感じがします。読みやすくて。でも、それだけじゃない。グロテスクなシーンも、修羅場の場面も、しっかりある。新作『あなたはここで、息ができるの?』の冒頭も、凄いですよね。
竹宮 ああ、事故で身体が……。
中川 はい。けれど、単純な事故や死では終わらなくて、最終的には心の恋愛が成就する、魂の救いみたいな部分があって、広く考えるとハッピーエンドにも感じられる。
竹宮 新作は中川さんに繋がるところがあって、それはやっぱり「貪欲」なんです。主人公の観波邏々かんなみららは自分の命を燃やして、生き尽くす、その意志を持った女の子。運命に翻弄されながらも、自分が決めたように生きる。ループものを書くと決めたときに、そんな人物が浮かびました。だから、中川さんに読んでもらえたのは、とても嬉しくて。
中川 私は若い頃から残りの寿命を考える癖があって、本を読まなきゃ、美味しいものを食べなきゃ、ってなるのもそうで、若い頃は寝て時間を無駄にするのも嫌で。人生において、楽しいことをやった割合、美味しいものを食べた割合が多ければ多いほど、絶対に笑顔で死ねると、そう思うんです。笑顔で死ぬために後悔しないように、今を生きている、というか。だから、新作で「あのとき、こうすればよかった」と頭の糸をたどる感じも「強さ」に感じられて、いいな、って。
竹宮 「しょこたん味」のある強さなんです、あれは。
中川 ですよね。言葉にすると恥ずかしいですけど、「こんなところで終われない!」という気持ちに、凄く共感します。
竹宮 はい、自分で決めた方向に進んでいく、意志のお話です。
中川 先生は、小説を書くときは何からイメージされるんですか。主人公の像ですか。それとも、物語の流れですか。
竹宮 私はどちらのパターンもあります。普段、心がけているのが、できるだけ自分の感受性をむき出しにしておくことで、風景でも音楽でもテレビでも、何でもいいから自分の感受性に訴えてくるものを常に探していて。飛び込んできたものが「あ、こういう感じの人間」ということもあるし、「あ、こういうテイストの物語」となる場合もあります。そうして受け取ったものから「この人間を魅力的に描くにはどんな物語が必要か」とか「このストーリーが書きたいから、どうしよう」とか、考えてきます。
中川 今回の新作は、どちらからだったんですか。
竹宮 ストーリーですね。ループの物語を一番良い形で表現できるのは、どんな子だろう、と考えながら、主人公を作っていきました。
中川 そうした「表現」の道のりって、改めて伺うと凄いですね。
竹宮 でも、それは中川さんも同じじゃないですか。さっきも言いましたけど、中川さんは本当にいろいろなことに挑戦されていて、世の中ではそれは「マルチだよね」ってことで消化されてると思うんですけど、私は今日お話ししていて「この人は中川翔子という表現を選んだんだ」って感じました。たとえば私は「小説を書く」という表現を選んだんです。自分自身を小説という出口にバスッと通していくと決めた。中川さんは、これは私が勝手に感じたことなんですけど、いろいろなところに在るというより、中川翔子として生きる、それに全力投球している、という感じがするんです。三十代になられたからこそ、その生き方の輪郭がはっきりしてきているような。
中川 嬉しい、嬉しいです。今の言葉で私、成仏しちゃいそうになりました。今日はお話しできて、本当に楽しかったです。ありがとうございました。
竹宮 まだ成仏しないでください(笑)。今日はありがとうございました。

(なかがわ・しょうこ 女優・歌手)
(たけみや・ゆゆこ 作家)
波 2018年11月号より
単行本刊行時掲載

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推薦コメント

これは外側を目指し、普遍的な場所へと着地する「献身」の小説だ。

津村記久子

思春期のデリケートな気持ちを絵の具にして描いた絵画。不条理な出来事さえも愛と優しさで包み込んでいく、せつなくて不思議な感覚。
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中川翔子

結ぼれを貫いて、まっすぐに突き刺さる。時間ループ文学史上、最高のラブストーリー。

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