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欲が出ました

ヨシタケシンスケ/著

1,100円(税込)

発売日:2020/07/17

書誌情報

読み仮名 ヨクガデマシタ
装幀 浅妻健司/ブックデザイン・彩色、ヨシタケシンスケ/装画
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 151ページ
ISBN 978-4-10-352452-6
C-CODE 0095
定価 1,100円
電子書籍 価格 1,100円
電子書籍 配信開始日 2020/08/07

大人も子どもも、欲の出やすいすべての人へ――。「しいていうなら、くらしの知恵に!」人気絵本作家の、大好評イラストエッセイ集、第二弾!

お菓子をもう一個取っていいんじゃない? もうちょっと寝ててもいいんじゃない? 人間って、プチ欲が出たとき、何とも言えなーい顔をする。そんな一瞬を、絵本作家ヨシタケシンスケが、「深く浅く」切り取ってみると……欲が出るから失敗するけど、欲が出るから人間って面白い!?

目次
はじめに
第1章 家でも外でも、欲が出ました
欲が出た時の顔
人間が午前中にやってしまいたいこと
ニャーウ
トイレットペーパーの袋
もうネ、それだけで15%!
表面にうかんでるイロイロ
感謝を促す係
なぜうまくいかないのか
だってホラ本人だもの
引力の強すぎるものには近付かないようにしています
サァ! 今日も元気に顔色をうかがっていこっ!
欲しいものシリーズ
肯定係。そのままでいいのよ
人間は平らなところが好き
途中まで完璧だったんスよ
実際にいいことがなくても
人類よ。
人生において大事なことは
心にはめる軍手
植物のように与えられる光と水の通りに
必要なところだけじゃまなものをどける
スケッチコーナー(1)
第2章 親子そろって、欲が出ました
期間限定
ハイチュウたべていい?
大きなものを持つと
犬はぜんぶ男で、ネコはぜんぶ女だと思ってた
イスカンダル
そんなことが楽しいのか
オッパイ
やさしくそーっとひっぱると
おなかがバカーッてなって、しんでもいいから
あの日にまつわるアレコレ
正しいかどうかではなく、「気がすむ」かどうか
ボク、1回、まっぷたつになったことあるんです!
これはきな
フーセンをふくらませて
うまーくゴマかす大人になりたい
よごれてもよごれても丸洗いできます!
スケッチコーナー(2)
第3章 朝から晩まで、欲が出ました
以下のコンテンツを視聴するにはやさしさが必要です
まちがいには2種類ある
わー! イライラしてきた!
どこまでなら失敗してもいいですか
キミの一部がほしいんだ
すべての死は早すぎるか遅すぎるのだ
すごく好きはすごくきらいになっちゃうかもしれないから
アーヤとフーヤ
「考えてみよう!」っていうのは
ボクを選ばなかったことを
自分を肯定できないならば
北欧の人たちはどんな暮らしにあこがれてるのかしら
「仕事は、愛だ」というとそれっぽいけど
そーなんですけどネー
知りたくないことは
行かないでぼくの興奮
重力ターン
今までで一番明日が来てほしくなかった日
「その問題に一番興味の無い人々の視点」
スケッチコーナー(3)
おわりに

書評

スケッチ“解凍”エッセイは“ネタ帳”である

山田ルイ53世

 かねてより、ヨシタケシンスケ氏にはお世話になっている筆者。と言っても、面識があるわけでも、SNSで“つながっている”わけでもない。
 筆者には2人の娘がいる。現在、長女が小学2年生、次女は1歳になったばかりで、最近はご無沙汰だが、数年前までは妻と交代でよく「読み聞かせ」をしていた。
 妻が選ぶ絵本は、「死んだ母親が幼い息子を心配して化けて出る」とか「引っ越しの途中ではぐれた犬が新居まで追いかけてきた」といった類の美談風のものが多く、いくら「情操教育に良いのだ!」と薦められても、正直辟易としてしまう。
 好みの問題だが、これが夫婦の小競り合いの原因となり、
「“大袈裟な設定”に頼るヤツはダメだ!」
 などと“モノ創り”をする人間の端くれとして一席ぶってみたものの、(あっ、俺“貴族キャラ”だった……)と“大袈裟な芸”で飯を食ってきた我が身を思い出し、ツッコまれる前に話題を変える、なんてことも。情けない。
 話を戻そう。あれは、長女が幼稚園生の頃だったか。「読み聞かせ」中に、不覚にもウトウトしてしまった筆者。
(ん?)……気付けば、5センチと離れぬ近さで、娘が此方をまじまじと見詰めている。
「やっぱりそうだー!」
 という意味深な一言に、(えっ? 何々!?)と焦って辺りを見回すと、彼女がメガネを手にしていた。先程まで筆者の顔にあったものである。結構値の張る代物なので、
「こらー! メガネは触っちゃ駄目!」
 と慌てて取り返そうとするも、
「ほらー! メガネとったらひげだんしゃくじゃーん!?」
 とニヤニヤする我が子に、背筋が凍った。
 筆者は自分の仕事を娘に明かしていない。
 理由は一発屋。別に恥じてはいないが、「負け」や「失敗」といった苦み成分を含んだこの言葉を、人生が始まったばかりの娘に触れさせたくない、その一心である。
「……違うよ? おやすみー」
 とぎこちなく否定しそそくさと退散したが、(そろそろ限界か……)と苦い夜になった。
 以来、ただの「読み聞かせ」が、「寝たら駄目だ!」と雪山で遭難したかのような、緊張の場と化す。
 その窮地から“レスキュー”してくれたのが、ヨシタケシンスケ作の絵本『りんごかもしれない』であった。
 テーブルの上にりんごを見つけた少年が、「これはりんごじゃないのかもしれない」と妄想を開始。「丸まった赤い魚かも」「何かの卵かも」とひたすら“りんご大喜利”を繰り広げるのだが、「読み聞かせ」る必要がない。
 放っておいても子供は夢中でページを捲り、知らぬ間に寝息を立てている。要するに、面白いのだ。
 自由で斬新な発想とテンポ感抜群の構成。上質な漫才やコントさながらのヨシタケ氏の絵本を“芸”とするならば、エッセイはその源泉――“ネタ帳”だと言えよう。
 前作『思わず考えちゃう』同様、最新作『欲が出ました』も、氏が周囲を観察し、ふと頭を過ったアイデアを、スケッチの形で書き留め、
「このときは、こういうこと考えてて……」
 と後日“解凍”、もとい“回答”していく一冊である。
 タイトルの通り、テーマは「欲」だが、氏が欲するのは“天井に大きなブラシがくっついてる部屋(下を走り抜けると髪の毛がサラサラに!)”とか、“心にはめる軍手(苦手な人のことを考える際、ちょっと気が楽になる!)”、「フーセンふくらませてー!」と子供が書斎に駆け込んでくる瞬間、といった具合。お金でも、地位や名誉でも、勿論“美談”でもない。
 他にも、「トイレットペーパーが入ったビニール袋を“うにー”と破く時間も人生の一部だ」、「夫婦が一緒にい続ける理由など“大きなものが畳みやすい”という1点で十分ではないか」等々、ユーモアに溢れ、示唆に富んだ氏の頭の中を堪能することが出来る。
“街頭インタビューを受ける中年サラリーマン”のイラストに、「おっぱいは好きですね。やっぱり哺乳類なんで!」と添えてなお上品な“絵本作家”など他にはいまい。
 むしろ、そういう部分に、作り手としての誠実さを感じるのは筆者だけだろうか。
 いずれにせよ、この“ネタ帳”、およそ「ハズレ」が見当たらぬ。
 往年のSF映画の名作で、シガニー・ウィーバーがエイリアンと死闘を演じた後、大量の卵を発見し、(これが全部“あれ”になるの!?)と愕然とするシーンがあったが、筆者の読後感も同じ。(これ全部“作品”になるの?)。そう考えると、確かにヨシタケシンスケ氏は「強欲」と言える……かもしれない。

(やまだるいごじゅうさんせい 芸人)
波 2020年8月号より
単行本刊行時掲載

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著者プロフィール

ヨシタケシンスケ

ヨシタケ・シンスケ

1973年神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。日常のさりげないひとコマを独特の角度で切り取ったスケッチ集や、児童書の挿絵、装画、イラストエッセイなど、多岐にわたり作品を発表。絵本デビュー作『りんごかもしれない』で、第6回MOE絵本屋さん大賞第1位、第61回産経児童出版文化賞美術賞、第8回「(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞」を受賞。『りゆうがあります』で第8回MOE絵本屋さん大賞第1位、『もうぬげない』で第9回MOE絵本屋さん大賞第1位、ボローニャ・ラガッツィ賞特別賞を受賞。『このあと どうしちゃおう』で第51回新風賞を受けるなど数々の賞を受賞し、注目を集める。近著に『あるかしら書店』『ヨチヨチ父』『おしっこちょっぴりもれたろう』『思わず考えちゃう』『もしものせかい』等がある。2児の父。

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