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伝わる仕組み―毎日の会話が変わる51のルール―

藤井貴彦/著

1,650円(税込)

発売日:2022/02/16

書誌情報

読み仮名 ツタワルシクミマイニチノカイワガカワルゴジュウイチノルール
装幀 新潮社装幀室/装幀
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 191ページ
ISBN 978-4-10-354431-9
C-CODE 0030
ジャンル ビジネス実用
定価 1,650円
電子書籍 価格 1,650円
電子書籍 配信開始日 2022/03/16

ちょっとした工夫で大違い。27年の経験で培った実践メソッドが1冊に。

メッセージはうす味に。心を掴む極意は「生ハムメロン」。慌てたときはリフレイン。緊張は迎えに行けばいい――。「言葉が響く」「心に届く」と話題のベテランアナウンサーが日常会話や会議、プレゼンなど、さまざまな場面を念頭に、日々心掛けているメソッドを大公開。ロジカルでやさしい、満足度ナンバーワンの必携書。

目次
はじめに
1部 コミュニケーションに必要な、優しさとタフさ
~「伝わる」を生むウォーミングアップ~
01 言葉を「試着」してみる
02 メッセージにも「味の調整」を
03 伝えるための意外な努力
04 伝えたい思いはどうやって生み出すのか
05 「身だしなみ」を整える
06 言う・伝える・伝わるの違い
07 会話の「体温」を上げる
08 会話を「乗せる」3つの過程
09 「ずるい」準備が効果的
10 緊張を迎えに行く
11 緊張のエネルギーを利用する
12 視線の先に「味方」をつくる
13 頭の中で「ショートムービー」を流して話す
14 言葉の組み合わせは「生ハムメロン」で
15 掛詞はインスピレーションの宝庫
16 セルフチェックの肝は「多様性」
2部 誰かを大切にすることで、自分を磨く
~相手と向き合うマインドセット~
17 なぜあなたは、あの人のことが嫌いなのか
18 話すスピードに思いやりを
19 インタビュアーになったつもりで
20 伝わる仕組みには限界もある
21 心の中にブックエンドを用意する
22 「手ぶら」でいること
23 サブのポジションで得られるもの
24 未来の先読み
25 「先読みでサポートをする」ということ
26 大切なのは神聖さの理解
27 いい関係は「ルール作り」と「ゴール作り」から
28 アドバイスは出し惜しみするくらいで
29 「逆接」の上手な使い方
30 冗談で「逃げ道」をつくる
31 その一言は「おせっかい」か「金言」か
32 自己肯定感は低めがベター
33 自分を細分化して持ち味を見つける
34 人にお願いをする前のチェックリスト
35 励ましのポイントは「俯瞰」
36 「誰かのため」が打率を上げる
3部 あなたの弱点に隠れている、大きな可能性
~困った時の逆転メソッド~
37 アドリブは準備できる
38 伝えたいことから順番に
39 沈黙回避の秘策は「パス回し」
40 パニックになったら「リフレイン」
41 会話の脱線まで楽しむために
42 会話の締め方は「振り返り」にあり
43 本音に近づくのは難しいからこそ
44 カチンときたら、感謝する
45 「苦手な人」認定の前にラストチャンスを
46 謝罪の心得
47 批判とどう向き合うか
48 情報は偏っているもの
49 今のポジションを味わい尽くす
50 冷静と情熱の、情熱寄りで
51 「伝わること」と「同意すること」の違い
おわりに

書評

すべてのルールに通底する一つの精神

橋本忠明

「不用意な言葉で相手を傷つけ、そのことで自分も傷つく。コミュニケーションでの悩みは尽きません。
 なぜ思い通りに言葉が届かないのか、どうしたら届けられるのか、その仕組みがわかれば、アクシデントを大幅に減らせます」
 著者のこの問題意識のもとに、本書では「毎日の会話が変わる51のルール」が示される。
 そのルールは、日常会話のみならず、会議やプレゼンなどの様々なコミュニケーションの場面でも活用できるものである。また、ルールのひとつひとつが実用的なものばかりだ。それは当然といえば当然で、著者の藤井貴彦氏は日本テレビのアナウンサーであり、話すことにかけてはプロフェッショナル。しかも、毎年、新人研修を担当されているそうで、その研修内容についても適時、紹介されている。さらに、日々アナウンサーとして仕事をする中での舞台裏の話なども登場し、楽しみながら学べる一冊である。
 さて、この「51のルール」からいくつか紹介してみよう。
 まず、「言葉を『試着』してみる」というルール。
 相手に何かを伝えようとする時には、「もし、誰かからその言葉を言われたらどんな思いになるか、自分にあてがってみる」というルールである。
 この「ひと手間」をかけることの重要性は、いくら強調してもしすぎることはない。特に現代社会ではあらゆる物事が猛烈なスピードで動いているので、我々の心の余裕はなくなりがちである。ついつい思ったことをそのまま口に出してしまう。また、今日では人々の価値観もかつてないほど多様化しているので、良かれと思って言ったことが相手を傷つけるようなこともあるだろう。その先にあるのは気まずさ、衝突、炎上でしかない。
 誰かに何かを言う前に、「その言葉は狙い通りメッセージを運んでくれるだろうかと再確認することで、後悔のない言動につながる」という著者のアドバイス。心掛けたいことである。
 次に「メッセージにも『味の調整』を」というルール。藤井氏は、「伝わる仕組みの一つとして大切にしているのは、『うす味を目指す』ということです」と言う。
 ここでいう「うす味」とは、言葉に味の調整をする余地を残しているということ。我々の感情は「強めに出ることがあるので注意が必要」なのだ。
 また、「話すスピードに思いやりを」というルールも、再認識したい点である。なかなか自分では気づかないからだ。誰かに思いを伝える時は、話すスピードを大切にする。それは、ゆっくり話すとやさしいトーンになり、速く話すほどトーンがきつくなる傾向があるからだ。
 だから藤井氏は、新人アナウンサーの研修で、「もっとゆっくり」「もっとかみしめるように」と指導しているそうだ。「相手の立場で、スピード調整できるかどうか。それが伝わる仕組みの根幹です」と言う。
「アドバイスは出し惜しみするくらいで」というルールもある。
 これは部下を持つ人は忘れてはいけないポイントだろう。著者は「いいアドバイスを持っている方ほど、『伝えすぎ』の傾向があります」と言う。どんなにおいしい食事でも、食べ過ぎてしまっては良さが半減する。誰かにメッセージを伝える時も同様で、「相手の腹八分を意識すると伝わりやすい」のだ。
 そして「伝えたいことから順番に」というルール。
 藤井氏は言う。「何かを説明する時に、私がまず手を付けるのは『伝えたいことの箇条書き』です。伝えたいことを思いつくままに書き出して、その優先順位をつけます。そしてその優先順位の『高いものから順番に』伝えていきます」
 これも覚えておきたい大事なポイントだろう。このルールを心掛けることで、無駄な話がなくなり、相手に知らせたいことが明確に、そして確実に伝わる。話の途中で邪魔が入っても、被害は少なくなるはずだ。
     *
 アナウンサーは、一瞬一瞬、失敗が許されない緊張感のなかで、視聴者に「伝える」という仕事をする。その際に必要なのは、やはり基本、原理原則を大切にすることなのだと再認識した。
 最後に一言。本書で示されている「伝わる仕組み」は「話す」時のみならず、「書く」時も含め、あらゆるコミュニケーションに通用する心構えである。ビジネスコミュニケーションに必須の、常に相手の立場を考えるという「you-attitude」の精神が貫かれているからである。

(はしもと・ただあき 「TOPPOINT」編集長)
波 2022年4月号より
単行本刊行時掲載

人気アナに登り詰めた男が書く「サラリーマン秘伝の書」

栗下直也

 アラフォーの私が学生時代にテレビにかじりついていた頃、「日テレの藤井アナウンサー」といえば藤井貴彦アナではなかった。ひょうきんな表情を浮かべ、バラエティー番組に引っ張りだこの藤井恒久アナウンサーだった。「それはあなたの思い込みだろ」と指摘されそうだが、インターネットで「日テレ 藤井」と検索してもウィキペディアでは貴彦アナより恒久アナが今でも上位に出てくる。日本のお茶の間では藤井といえば貴彦アナより恒久アナの時代があったのだ。今っぽく、「目立つ方」と「じゃない方」に分ければ貴彦アナが「じゃない方」だった。少なくとも20年ほど前は。
 それが、どうした貴彦。今や押しも押されもせぬ日テレ、いや日本の夕方の顔ではないか。50歳の今、飛ぶ鳥を落とす勢いの活躍で、キャスターを務める夕方のニュース番組「news every.」の視聴率は同時間帯ではダントツの数字だとか。
 好きな男性アナウンサーランキングでも軒並み上位に位置し、1位に輝くことも。もう、「じゃない方」じゃない。「目立つ方」だった恒久アナは異動ですでにアナウンサーではなく、お茶の間の記憶も薄れつつある。今や日本で藤井といえば、貴彦を凌ぐのは将棋指しの聡太くらいだろう。
「生真面目さがいい」、「控えめな姿勢に好感をもてる」。人気アナランキングのアンケート結果にはこうした声が目立つようだ。「俺が俺が」のイケイケよりも、下手すると地味と称されかねない生真面目さが令和の今では視聴者の心をつかむのかもしれない。
 そう聞くと、「生真面目さや控えめな姿勢って生来のものだからね。簡単に真似できないよね」と思ってしまう人も多いかもしれないが、本書を読むとそれは大きな誤解であることがわかる。
 アナウンサーは人気職種だ。地味で控えめな人間はなりたくてもなれない。そもそも目指さない。藤井アナの一歩引いた姿勢も葛藤の末にたどり着いたことが本書には実体験を交えながら記されている。あの喋りも心安まる笑顔も物腰の柔らかさも努力の賜物なのだ。つまり、理屈としては、そのエッセンスを学べば私もあなたも好感度爆上がりオジサン、オバサンになれるわけだ。
 本書はアナウンス技術や話し方の本ではない。コミュニケーションの本だ。もっとわかりやすく言えば、「つまらない奴と思われない」、「うざがられない」、「なぜか嫌われない」スキルを四半世紀かけて磨き上げたサラリーマンの秘伝の書ともいえる。
 51項目に分けて、誰もが直面するコミュニケーションの難局をどう乗り切るかをわかりやすく書いている。初対面の人とどのような会話をしたらいいか、わからない場合にどうするべきか。会話が弾まない場合にどう盛り上げればいいか。アドリブはどうしたら身につくのか。社会人ならば誰もが一度は遭遇して冷や汗をかいたであろうシチュエーションがこれでもかと並ぶ。
 例えば、自分が参加している会話や会合が沈黙に包まれたらどうすべきか。藤井アナは「自分は何も語らずにずっとパスを出していればいい」と語る。「何か喋らなきゃ」と焦らずに、参加者にひたすら聞いて回る。日本人は自分からは意見は言わないが、聞かれると意外にも答える。聞いて聞いて、たまに気が向いたら自分の感想を述べて、「これだ!」という話題が出てきたらそこから話を広げる。沈黙を回避するどころか意義ある会合に様変わりする。
 他にも、後輩を励ますときにどうすればいいか、助言を求められたら何をいうべきかなども興味深い。昭和のメンタリティで軽々しくアドバイスするとパワハラと訴えられかねない時代だけに、オジサンには珠玉の助言ばかりだ。
 正直、ここまでテクニックを披露していいのかと心配にもなる。もしかすると、「藤井さん、意外に計算高いのね……」と悲しくなる藤井マニアもいるかもしれないが、これまた誤解してはいけない。藤井アナは常に「誰のためか」と問い、行動している。相手のため、後輩のため、そして、視聴者のため。常に状況を俯瞰して、最悪の事態まで想定し、最適なコミュニケーションを導き出し、備える。計算はしているが自己の利益のためではない。すべての行動に「何のため」という問いがあり、行動に矛盾がないからこそ、私たちの体に彼の言葉はすっと入り込んでくる。
 本書を手に取る人は「藤井アナのような好感度が高い人になりたい」という淡い思いを少なからず抱いているだろう。確かにそのヒントは詰まっているが、ここまで読まれた方はお気づきのように、小手先では真似できない。技術を支えるのは理念だ。理念がなければ単なる独りよがりに陥ることを本書は教えてくれる。
 藤井アナは一日にしてならない。私もあなたも好感度はすぐには上がらない。まずは「なぜそれをやるのか」と日々の生活で自問することから始めたい。

(くりした・なおや 記者/書評家)
波 2022年3月号より
単行本刊行時掲載

著者プロフィール

藤井貴彦

フジイ・タカヒコ

1971年生まれ。神奈川県出身。慶應義塾大学環境情報学部卒。1994年日本テレビ入社。スポーツ実況アナウンサーとして、サッカー日本代表戦、高校サッカー選手権決勝、クラブワールドカップ決勝など、数々の試合を実況。2010年2月にはバンクーバー五輪の実況担当として現地に派遣された。同年4月からは夕方の報道番組「news every.」のメインキャスターを務め、東日本大震災、熊本地震、西日本豪雨などの際には、自ら現地に入って被災地の現状を伝えてきた。新型コロナウイルス報道では、視聴者に寄り添った呼びかけを続けて注目された。著書に『伝える準備』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。

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