今月の表紙の筆蹟は、津野海太郎さん。
波 2022年4月号
(毎月27日発売)
発売日 | 2022/03/28 |
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JANコード | 4910068230423 |
定価 | 100円(税込) |
阿川佐和子/やっぱり残るは食欲 第55回
【新連載小説】
梨木香歩/猫ヤナギ芽ぶく 第一回 続 からくりからくさ
【短篇小説】
北村 薫/水 その1
【オルナ・ドーナト、鹿田昌美 訳『母親になって後悔してる』刊行記念特集】
柚木麻子/勇気を出して語り出した母たち
[漫画]田房永子/母の口をつぐませるもの
永田和宏『あの胸が岬のように遠かった―河野裕子との青春―』
永田和宏/「あの胸」は、いま……
津野海太郎『かれが最後に書いた本』
佐久間文子/かなしみと、不思議なおかしみ
遠藤周作『善人たち』
加藤宗哉/さらに拡がる遠藤文学の世界
アリ・スミス、木原善彦 訳『春』(新潮クレスト・ブックス)
星野智幸/希望のなさに捧げる
薬丸 岳『刑事弁護人』
東えりか/迫真のリーガルサスペンス
京橋史織『午前0時の身代金』
香山二三郎/時代の最先端をゆく誘拐ミステリー
みうらじゅん『永いおあずけ』
前野健太/魔法のことば
杉本博司『杉本博司自伝 影老日記』
青木 淳/自伝という名のウロボロスの世界
東畑開人『なんでも見つかる夜に、こころだけが見つからない』
ヒグチアイ/私が歌詞で書きたいことは全てこの本に書いてある
加藤弘士『砂まみれの名将―野村克也の1140日―』
中溝康隆/異端の記者が照らし出すノムさん最後の青春の日々
信友直子『ぼけますから、よろしくお願いします。 おかえりお母さん』
首藤淳哉/認知症の悲しい現実を乗り越えるユーモアの力
藤井貴彦『伝わる仕組み―毎日の会話が変わる51のルール―』
橋本忠明/すべてのルールに通底する一つの精神
沖田瑞穂『すごい神話―現代人のための神話学53講―』(新潮選書)
山本貴光/現代に転生する世界の神話
小笠原弘幸『ハレム―女官と宦官たちの世界―』(新潮選書)
篠原千絵/漫画にできそうな2タイプのハレムの住人
【エリイ『はい、こんにちは―Chim↑Pomエリイの生活と意見―』刊行記念】
[対談]エリイ×高山羽根子/人間と「スーパーラット」のアーカイヴ
【特別読物】
バッキー井上/京都裏寺ハタチ過ぎ 第三部
【私の好きな新潮文庫】
朱野帰子/中年の危機を生き延びるための文庫たち
【今月の新潮文庫】
川端康成『少年』ほか
新潮文庫編集部/川端康成没後五十年 幻の作品文庫化&新装版
【新連載コラム】
三宅香帆/物語のふちでおしゃべり
【コラム】
テート小畠利子『知的に見える男、バカっぽく見える男』(新潮新書)
テート小畠利子/できる男は、「骨格タイプ」を知っている
三枝昴之・小澤 實/掌のうた
[とんぼの本]編集室だより
【連載】
南沢奈央 イラスト・黒田硫黄/今日も寄席に行きたくなって 第28回
伊与原 新/翠雨の人 第4回
二宮敦人/ぼくらは人間修行中 第17回
内田 樹/カミュ論 第12回
春画ール/春画の穴 第6回
川本三郎/荷風の昭和 第47回
編輯後記 いま話題の本 新刊案内 編集長から
*今月はジェーン・スー「マイ・フェア・ダディ!」は休載です。
立ち読み
編集長から
今月の表紙の筆蹟は、津野海太郎さん。
◎「GQ」誌でF・コッポラのインタビューを読む。小澤身和子さんの訳。ワイナリーを売って得た私財で数十年来の企画「メガロポリス」を遂に映画化する由。これは『幻に終わった傑作映画たち』という本にチャップリンのナポレオン映画や、ダリが監督するマルクス兄弟主演映画等と並んで載っている怪物的プラン。楽しみですねえ。
◎陽の目を見なかった作品というのは想像力を刺激するもので、かつてヴェンダースが編集した「カイエ・デュ・シネマ」の記念号は没になった映画特集でした。確か小津の「遙かなり父母の國」が入っていた筈。
◎幻に終わった小説も勿論あって、昔の小社広告を見ると〈純文学書下ろし特別作品〉として予告されたきりの作品も結構あります。遠藤周作『戦争』、武田泰淳『夷狄の女』、安岡章太郎『怠惰の悪魔』、開高健『白い紙』etc.。三島由紀夫と小島信夫の予告作はこの叢書からでなく、夫々『獣の戯れ』『抱擁家族』として刊行された模様。
◎高校生の頃、書店で小冊子を貰うと、やはりあのシリーズの近刊案内があって、『虚航船団』、『みいら採り猟奇譚』、『志願囚人』(改メ『方舟さくら丸』)、『一分ノ一』(講談社から出たもの?)、『背徳遊戯』(ついに刊行されず)……迫力ある題ばかりで憶えていますが、再見したくても宣伝物は小社資料室にも揃ってないんですね。どなたか譲って下さいませんか。
◎叢書から離れると、作者の死によって書かれずに終わった長篇で読みたかったのは、谷崎潤一郎〈天児閼伽子〉(登場人物名。題は未定)や澁澤龍彦『玉蟲物語』等のほか、吉行淳之介『華麗なる陰謀におけるギャフペック氏の存在』もそう。試作が二枚だけ発表されていて、「必要以上に揺れ動き、軋みつづけるロッキングチェアの上に、ゆったりと腰をおろし……」。
▽次号の刊行は四月二十七日です。
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バックナンバー
雑誌バックナンバーの販売は「発売号」と「その前の号」のみとなります。ご了承ください。
雑誌から生まれた本
波とは?
1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。
創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。
創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。
現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。