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今月の表紙の筆蹟は、川上未映子さん。

波 2022年3月号

(毎月27日発売)

100円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2022/02/28

発売日 2022/02/28
JANコード 4910068230324
定価 100円(税込)
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阿川佐和子/やっぱり残るは食欲 第54回
【川上未映子『春のこわいもの』刊行記念特集】
筒井康隆/読者を首肯させる力
[漫画書評]矢部太郎/あの春を思い出して
[追悼]五木寛之/石原慎太郎さんの含羞
パオロ・コニェッティ、関口英子 訳『フォンターネ 山小屋の生活』
椎名 誠/黄金の沈黙の日々と、その豊かな謎

一條次郎『チェレンコフの眠り』
稲泉 連/とても不条理で、切実な物語

古川日出男『曼陀羅華X』
管 啓次郎/世界を鎮める戦いとして

伊藤朱里『ピンク色なんかこわくない』
児玉雨子/小さな「私」たちから祈りをこめて

暖 あやこ『幾度めかの命』
紫野京作/命をトリートする技能者

藤井貴彦『伝わる仕組み―毎日の会話が変わる51のルール―』
栗下直也/人気アナに登り詰めた男が書く「サラリーマン秘伝の書」

【徳井健太『敗北からの芸人論』刊行記念】
[鼎談]徳井健太×オークラ×佐久間宣行/「腐り」の先の徳井だけの芸とは?
【遠藤周作新発見戯曲】
遠藤周作/切支丹大名・小西行長『鉄の首枷』戯曲版(後篇)
加藤宗哉/なぜ“面従腹背”の劇を書いたか
筒井ともみ『もういちど、あなたと食べたい』
[特別エッセイ]筒井ともみ/深作欣二さんと「キムチ鍋」
【短篇小説】
北村 薫/札 後篇

【私の好きな新潮文庫】
原田維夫/私は忍者の末裔かもしれない
 沢木耕太郎『深夜特急(1〜6)
 司馬遼太郎『梟の城
 山本一力『研ぎ師太吉
【今月の新潮文庫】
時武里帆『護衛艦あおぎり艦長 早乙女碧』
東えりか/艦長の器
【コラム】
鈴木 穣『厚労省―劣化する巨大官庁―』(新潮新書)
鈴木 穣/国民の命を守る巨大官庁の実像とは

三枝昴之・小澤 實/掌のうた

[とんぼの本]編集室だより

【連載】
高嶋政伸/おつむの良い子は長居しない 第4回
南沢奈央 イラスト・黒田硫黄/今日も寄席に行きたくなって 第27回
伊与原 新/翠雨の人 第3回
二宮敦人/ぼくらは人間修行中 第16回
春画ール/春画の穴 第5回
川本三郎/荷風の昭和 第46回
編輯後記 いま話題の本 新刊案内 編集長から
*今月はジェーン・スー「マイ・フェア・ダディ!」は休載です。

立ち読み

編集長から

今月の表紙の筆蹟は、川上未映子さん。

◎先月号からの北村薫さんの「札」には、「い いい人はいいね」(『伊豆の踊子』)に始まり「す 迷 羊ストレイシープ 迷 羊ストレイシープ」(『三四郎』)へ至る自作の『文学かるた』が登場。札の文句は絢爛たる引用の花束のようで、様々な連想が広がります。〈一本の映画を観る時、自分の映画的記憶をかき集めて観る。飯を食う時、飯的記憶をかき集めて食うように〉という確か和田誠さんの言葉がありますが、本を読む時も同じことをしていますよね。
浅田次郎さんの『母の待つ里』を読んでいると、いろんな名作が隠し味のように潜んでいるのに気づきます。例えば「誰もおらず、何もないところに来てしまったと、松永徹は思った」。これは三島天人五衰―豊饒の海・第四巻―』の「記憶もなければ何もないところへ、自分は来てしまつたと本多は思つた」(副主人公の名は安永透)を踏まえているでしょう。
◎また「傘を搏つ雨音が、おまえは何をしに来たのだと問うているような気がしてならなかった」は、中也「あゝ おまへはなにをして来たのだと……/吹き来る風が私に云ふ」。「青梅雨」という章題は永井龍男だし、「そのとき、雪の夜の底から大声が聞こえた。/『おかあちゃーん、おかあちゃーん』」は『雪国』の「駅長さあん」? 長篇小説を読みつつ、同時に日本文学の詞華集も味わっている感覚。物語に感動しながら一気に読了しましたが、右の仕掛けを十分堪能するために忽ち再読へと誘われます。
◎となると小林秀雄が定価四千円(今だと七、八千円?)の自著(『本居宣長』)について、「読者は(略)二度三度と読んでしまふ」「読書時間から割り出すと(略)一万二、三千円どころの値打ちはある」「大変な割引です」と言ったように、『母の待つ里』一七六〇円(税込価格)はいよいよ安く感じますねえ。
▽次号の刊行は三月二十八日です。

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。