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ちょっと不運なほうが生活は楽しい

田中卓志/著

1,595円(税込)

発売日:2023/08/31

  • 書籍
  • 電子書籍あり

「どこかの優しい誰かが読んでくれたら……」。アンガールズ田中の初エッセイ集!

真面目すぎる性格なのにふざける仕事を志し、第一印象が「キモい」だった山根とコンビを組み、港区女子合コンの悔しさをバネにめでたく結婚。人気芸人の悲喜こもごも(悲、強め)の日常は、クスリと笑えて妙に共感。「ベスト・エッセイ2022」にも選出され280万人が涙した、母のお弁当の思い出を綴ったあの一編も収録!

  • 受賞
    第14回 広島本大賞 文芸部門
目次
まえがき
停電したなか卯で通じ合った
いじめっ子とお笑いと
18歳、なんでもない人間
人生で一番の修羅場
休み時間の変態ごっこ
ブレイクはしたものの
最高の食事
朝のパチンコ屋で
「待て! そこの新選組!!」
初めてのテレビ収録
空手と嘘
ヤンキーにからまれたら
無防備な魅力
山から降りてくる鳥使い少年
18年目のジャンガジャンガ
幻のパワーワード
港区女子と紅茶と僕と
リミッターが外れた
ランキングの信憑性
薄毛の僕だから
相方か友達か
結婚相手の条件
あとがき

書誌情報

読み仮名 チョットフウンナホウガセイカツハタノシイ
装幀 小幡彩貴/装画、青木登(新潮社写真部)/写真、新潮社装幀室/装幀
雑誌から生まれた本 小説新潮から生まれた本
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判
頁数 224ページ
ISBN 978-4-10-355281-9
C-CODE 0095
ジャンル ノンフィクション
定価 1,595円
電子書籍 価格 1,595円
電子書籍 配信開始日 2023/08/31

インタビュー/対談/エッセイ

誰かが笑ってくれるなら

田中卓志蛭子能収

2023年8月末に初エッセイ集を刊行した田中さん。田中さんにとって蛭子さんは「20年以上芸人を続けてこられた恩人」だそう。久しぶりの対談に、どうにも笑いが止まらないのは……。

忘れられない蛭子さんの言葉

田中 8年くらい前、蛭子さんと二人でドライブする番組で共演した以来ですね。所沢のうどん屋さんでご飯を食べ、狭山のスキー場で一緒にスキーをして。スマホに写真が残っているかな。

蛭子 (田中さんの本のカバーを指さして)ちょっと不運なほうがいい?

田中 そうです、これ、僕の初エッセイ集です。あ、写真ありました!

蛭子 (本の帯を見て)「向かい風の多い人生です」って書いてある。不運を、他の人を喜ばせる方に変える……?

田中 そうです、そうです! 僕はこれまで、人生で「ちょっと不運なこと」が色々とあったけれど、それをエッセイに書くことで、誰かがクスッと笑ってくれたらいいなと思って。

蛭子 そうですね。

田中 これ、一緒にドライブしたときの写真です。偶然にも、二人ともオレンジ色の服だったんすよ。

蛭子 なんで裸なの?

田中 裸……? え……僕、服着てますよ! 裸でロケしないですよ(笑)。(スマホの画面を拡大して)ほら見て下さい、裸じゃないでしょ?

蛭子 へへ、もう大丈夫です。そうと言われたら、そうとしか言えないんで(笑)。

田中 この本の中に、蛭子さんとの思い出も書かせてもらったんです。

蛭子 へぇ~。

田中 覚えていらっしゃるか分かりませんが、僕が芸人になって4年目くらいにテレビに出始めて……。

蛭子 えっ、芸人さんでしたっけ?

田中 蛭子さん、僕、お笑い芸人なんですよー。蛭子さんがよく共演されている、有吉(弘行)さんと同じです。

蛭子 そうか。

田中 今から20年前くらいですかね、アンガールズとしてブレイクできたタイミングの時、テレビに出ても全然笑いが取れなくて、スベってばかりで。実力がないのに人気だけはあってお仕事は頂けていたから、仕事を受けてはスベるという悪循環で……。

蛭子 20年前ね。

田中 何もかも楽しくなく、精神的に追い詰められていた時に、雑誌の企画で蛭子さんと対談させて頂いたんです。もともと蛭子さんの漫画が大好きだったので、僕から希望させてもらって。

蛭子 ああー。

田中 それで対談の最後に当時のその悩みを相談したら、蛭子さんが、昔、同時期に漫画の連載をしていた競艇雑誌とエロ雑誌の締め切りが両方ギリギリだった時、慌てて原稿を送ったら、競艇の方にエロ漫画を、エロの方に競艇漫画を送っちゃってて、あとで気が付いて焦ったんだけど、両方ともそのまま掲載されたことがあったって。

蛭子 へへへへ(笑)。

田中 だから、田中君もテレビでスベることを気にしているけれど、そもそも世の中の人はそんなに田中君のことを見ていないから大丈夫、って言って下さったんです。テレビに出るたびにスベって、情けない姿を全国民に見られている……なんて、僕が思い込んでいただけだったと、蛭子さんのそのお話に気持ちがぐっと楽になりました。

蛭子 それは良かった。

田中 それからは、とりあえず目の前のことをしっかりやろうと無心になれて、仕事も少しずつ楽しめるようになって……。蛭子さんの言葉がなかったら、芸人をやめていたかもしれません。

蛭子 そうだったんですね。でも、お金とかは全然、要求しないですから。

田中 あはははは! 要求されたら払いますよ(笑)。それくらい、蛭子さんには助けて頂きました。今日のこの対談の謝礼もちゃんと払いますからね。

蛭子 いやいや、そこまでしてもらわなくてもいいですよ。

田中 今日はぜひもらって下さい(笑)。

書くことは、ちょっと楽しい?

田中 蛭子さんは3年前、ご自身が認知症を患われていると公表されましたが、認知症になる前、あの8年前のドライブの時すでに、僕と初めて対談した時のことも、僕にかけてくれた言葉も、覚えていらっしゃいませんでした。

蛭子 そうだったかな。

田中 今思い出しても、あの時の話の噛み合わなさに僕は笑ってしまうのですが、蛭子さん自身が忘れてしまったとしても、あの時の僕と同じように、今必死にもがく誰かの救いになったらいいなと願いながら、今回エッセイに書かせてもらいました。蛭子さんは週刊誌で、読者の悩みに答える「人生相談」の連載もされていましたが、人の悩みに答えるのは得意ですか?

蛭子 そうですね。やっぱり人って、他人からの言葉に弱いところがあるというか……。逆の方に考えるっていうのは楽しいんですよ。

田中 逆の方? 真剣に考えすぎない方がいいってことですか?

蛭子 うん、そうそう(笑)。

田中 違うでしょ、今の僕の質問に答えるの、面倒になってるでしょう(笑)。

蛭子 へへへ(笑)。

田中 全然いいですけど(笑)。漫画や人生相談以外にも、蛭子さんはエッセイの本も色々出されていますよね。

蛭子 そうでしたっけ?

田中 『ひとりぼっちを笑うな』とか、僕、何冊も持っています。

蛭子 一人か二人、騙されて買ってくれた人がいたらいいのだけど。

田中 一人か二人どころか、ベストセラーになりましたよ!

蛭子 どっちが儲かってる?

田中 え、蛭子さんの本と僕のと? それは蛭子さんのです。印税がたくさん入ったと思いますよ。

蛭子 それなら何の文句もないです(笑)。

田中 僕も蛭子さんみたいに、読者の感情をちょっとだけでも震わせられたらいいな、そんなエッセイが書けたらなと、1年半以上連載を続けました。書くと決めた日は朝から近所のルノアールでパソコンに向かうのですが、話がうまく運ばない時ももちろんあって、ルノアールからルノアールにはしごしても終わらないことも……。それでも、「締め切りには必ず間に合わせる」という自分に課したルールは、最後までなんとか守ることができました。

蛭子 へへへへ(笑)。

田中 これまでもコンビでやるネタを書いてきましたが、エッセイを書く時に、頭で考えていたままに面白い文章が書けた時はすごく楽しくて、ネタを作っている時に面白いくだりが書けた時と同じような快感を覚えました。それにエッセイでは、その時々の自分の感情や情景を細かく書き込めるのも新鮮でした。テレビのエピソードトークだと、例えば15秒以内にはオチをつけないと間延びする、一言で笑わせないとダメといった意識が働くので……。

蛭子 へへへへへへ(笑)。

田中 って蛭子さん、なんで笑ってるんですか? 「田中君、語っちゃってるよ~」みたいな?(笑)

蛭子 (笑いが止まらない)

田中 僕も語るときだってありますよ~!(笑)

蛭子 ごめんなさい、すぐ笑う癖があって。何でこんなにおかしいんだろう。

田中 しんどいこともあったけど、楽しい瞬間もあったという話でした(笑)。

蛭子 (まだ笑いが止まらない)

田中 もう少しだけ語らせてもらうと、今回、エッセイに書くネタは、思いついたらスマホにメモしていたのですが、蛭子さんは漫画を描かれていた時にはネタのメモってされていましたか?

蛭子 俺は新しいことを描くのが好き。

田中 その場で思いついたことを筆が進むままに描いていた、ということですね。天才だなぁ。

蛭子 ……すみません、なんか大袈裟に言っちゃったかも。

田中 すぐ否定した!(笑)。アイディアが出ない時もありました?

蛭子 うん、ほとんどって言っていいくらい。

田中 ほとんど!(笑)。締め切りが近づいて追い込まれたら何か出る、という感じですか?

蛭子 そうでした。

田中 描くこと自体は楽しかったですか?

蛭子 楽しいです、やっぱり。そう、楽しいんですけど、急に笑わせないといけないから……。適当にはやれない。

田中 なるほど。蛭子さんの場合、ギャグの要素を入れるから、そこはきちんとやらないといけない、と。今度、「最後の展覧会」という絵の個展もやられますよね(編集部注・AKIO NAGASAWA Gallery AOYAMAにて、2023年9月30日までの開催)。全点新作と伺って、蛭子さんがまだ絵を描かれているということが、僕はすごく嬉しくて。

蛭子 ありがとうございます、本当に喜ぶと思います。

田中 急に他人事じゃないですか(笑)。

蛭子 (田中さんの本のカバーを指さしながら)これはいいですね。

田中 イラストレーターさんにヤンキーの絵を描いて頂いて、僕の写真と合成したんです。イラストで、僕の写真に「汗」が足されているのがいいでしょう? 汗は蛭子さんの漫画にもよく出てきますよね。

蛭子 汗は簡単だから……。

田中 そうそう! 「汗を描けば感情が一発で伝わるから」って以前もおっしゃっていました。

蛭子 楽しそうですね~。

田中 え、楽しそう? 電車で居眠りしたヤンキーが、僕の肩にもたれかかってきちゃっているのに!?

蛭子 そうかそうか、ごめんなさい(笑)。

田中 汗の意味が伝わってないじゃないですか(笑)。

田中はこれからどう生きるか?

田中 今日は蛭子さんとせっかく再会できたので、また悩みを相談してもいいですか?

蛭子 どうぞどうぞ。

田中 僕はまだまだ芸人を続けていきたいのですが、47歳になって、どこまで続けられるんだろうという不安も最近感じるようになりました。今後、どうしていけばいいですかね?

蛭子 そうですね……。「生活は楽しい」か……うん、楽しいな。

田中 タイトルに、ずっとすごい食いついて下さっていますよね! 結構悩んだタイトルだったので、蛭子さんの琴線に触れたのなら嬉しいです。

蛭子 そうだね、タイトル変えた方がいいかな、うん。

田中 え? 変えた方がいいですか!? もう発売しちゃってますけど(笑)。

蛭子 本当はね。

田中 どこを変えたらいいですか?

蛭子 「不運は生活の方がいい」かな……。

田中 深い……! もし次作を出せることになったら、そのタイトルにしますか(笑)。今日は久しぶりにお目にかかれて、本当に嬉しかったです。ありがとうございました。

蛭子 面白い方、ですね。

田中 えっ! それは光栄です!

蛭子 (また笑いが止まらない)

田中 そんなに笑って下さって、嬉しいなぁ。蛭子さんに、芸人として認めてもらえた気がします。これからも、蛭子さんやみなさんに笑ってもらえるように頑張ります。また一緒にドライブロケにも行きましょう!

蛭子 へへへへへ(笑)。

(たなか・たくし アンガールズ)
(えびす・よしかず 漫画家)
波 2023年10月号より
単行本刊行時掲載

著者プロフィール

田中卓志

タナカ・タクシ

1976(昭和51)年、広島県生れ。広島大学工学部第4類建築学部を卒業後、2000(平成12)年に山根良顕と「アンガールズ」を結成。ネタ作りを担当している。紅茶、苔、バイオリンなど多趣味でもある。2022(令和4)年、エッセイ「最高の食事」が日本文藝家協会編「ベスト・エッセイ2022」に選出され、話題に。2024年、初エッセイ集『ちょっと不運なほうが生活は楽しい』で、広島本大賞を受賞。

アンガールズ田中卓志(@ungirls_tanaka) • Instagram (外部リンク)

判型違い(文庫)

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