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たびたび

さくらももこ/著

1,870円(税込)

発売日:2026/03/25

  • 書籍
  • 電子書籍あり

ももこワールド全開&大爆発! お久しぶりの旅の本!

奇跡の爆笑雑誌『富士山』から生まれた、単行本未収録のエッセイ11編! ミッフィーちゃんのブルーナさんに会いに行ったユトレヒト、美しすぎた夏の富良野、大感動&大好きなバリ。国内も海外も、世界のどこを旅しても、ももこがいればそこに笑いあり。めくるたびに、面白い! 作家・朝井リョウさんによる特別寄稿も収録。

目次

こんにちは ブルーナさん
福島 田舎で遊ぼう!!
ももこ茶つみをする
ももこのやりたいほうだい紀行 京都
感動の旅 バリ
大阪 満腹満足満喫の旅
近くて近い外国体験!? 新潟ロシア村
香港 お茶買い行商の旅
山口県 秋芳洞と萩と下関水族館
なんでもおいしい福岡
美しき夏の富良野

特別寄稿 非日常も日常 朝井リョウ

書誌情報

読み仮名 タビタビ
装幀 さくらももこ/装画、祖父江慎+志間かれん(コズフィッシュ)/装丁
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 192ページ
ISBN 978-4-10-407306-1
C-CODE 0095
ジャンル 文学・評論、歴史・地理・旅行記、旅行・紀行
定価 1,870円
電子書籍 価格 1,870円
電子書籍 配信開始日 2026/03/25

書評

仰々しくない旅

イモトアヤコ

 さくらさんの作品は小さい頃からずっと好きです。『ちびまる子ちゃん』のアニメ、漫画と好きになって、小学校の高学年でさくらさんの初エッセイ集『もものかんづめ』に出会いました。学校の「朝の読書」で読んだら、静かにしないといけないのに笑いが止まらず大変で。「文章でこんなに面白いことってあるんだ!」と、興奮を隠せませんでした。さくらさんの文章の何がすごいって、小学生でもびっくりするほどスラスラ読めちゃうところ。漢字とひらがなのバランスが絶妙で、音読して気持ち良いのは読みやすさの秘訣ですよね。私も文章を書く仕事をするときは、この「音読しても気持ち良い」というのを意識しています。
 日常の切り取り方が独特で、ちょっとシニカルな部分もあるさくらさんのエッセイや漫画は、物事を見る角度がナナメで、しかも俯瞰的でもある──そんな世界観に触れたのはさくらさん作品が初めてでした。それに、まるちゃんが絶妙な自虐をしたり、地の文やナレーションがツッコミのような役割をしていたりと、出来事をどう面白がるか、そのやり方がまるで「芸人」みたいなんですよね。私はさくらさんの作品から自然と、芸人に大切なことを学んでいたのかもしれないって思います。女芸人にはさくらさんのファンがとても多いのですが、きっと、世界の見方や表現の仕方にすごい共感できるからだろうなぁ。
 今も時々読み返しますが、『もものかんづめ』で特に印象深いのは「メルヘン翁」。自分のおじいさん、つまり、あの「友蔵」のことを綴った一編ですが、冒頭に、「祖父は全くろくでもないジジィであった」とはっきり書いてあるのに当時びっくりしました。読んでいくと、実際「ろくでもないジジィ」で(笑)。家族のことを書くこと自体が難しいし、漫画やアニメの「友蔵」のイメージとは違う「リアル友蔵」を書くのはもしかしたら勇気がいるかもしれない。でもさくらさんは、特段構えることなく、自身が見たままを淡々と書いて読み手を面白がらせちゃう。私もそんなふうにできたらって、いつもその「視点」のあり方を想像しながら読んでいるけれど、めちゃめちゃ難しくて……。さくらさんは日常を面白がる、唯一無二の天才だったと思います。憧れしかありません。
『たびたび』はさくらさんが編集長を務めた雑誌「富士山」に掲載された旅エッセイですが、雑誌が発売されたのは26年前で、私は中学生。書籍やコミックスとは違って普段馴染みがない「雑誌」だったからか、「富士山」を私はちゃんと読めていないんです。だから、こうして今改めて読むことができるのがとても嬉しい!
 国内外、さまざまな土地を訪れていますが、どこに行っても誰と会っても、さくらさんは決してぶれません。映像で言う「撮れ高」を本当にまったく気にしないで行動されています。エッセイを書くための「ネタ」を探す素振りがなくて、なんなら、疲れたし面倒そうだからと訪問先を減らすことすらしちゃう……。私だったら不安で、ハプニングが起きそうな方に行こうとするでしょう。
 旅エッセイですが、「情報」が全然ないのもさくらさんらしいなと感じました。バリ、富良野、福岡、大阪、ユトレヒト……。どの場所でもいわゆる観光地には行かず、会いたい人に会い、食べたいものを食べる。平気で予定も変更するし、「せっかく来たんだから元を取ろう」「すべて網羅しよう」という気持ちがない。今でいうタイパ・コスパとは対照的な旅の仕方で、やっぱり構えてないんです。多分、そういう「マス」な部分に興味がなかったんだろうなぁ。旅先だから特別ではなくて、普段通り、そこで出会う人や何気ない出来事を楽しむ──それが旅の本来の醍醐味なのかもしれないと、この本を読んで改めて思いました。
 11編の中で特に好きだったのは「感動の旅 バリ」です。現地でお世話になった長尾さんのメイドさんの手料理が抜群に美味しいと聞くと、「心から図々しいよなァ」と思いつつ「だが、バリで一番おいしい料理を作るメイドさんがいるなんて、ぜひ食べてみたい」と、長尾さんちの料理を食べさせてくれないかと思い切って頼んじゃうくだりには笑いました。好奇心に勝てなかったんでしょうね。「やった!! 長尾さんちに行ける!!」と素直に喜んで自宅にお邪魔する。子供みたいなところがかわいいです。頼まれた長尾さんも大喜びで、結果、みんなの良い思い出になったから素晴らしい。無防備すぎて、ある種少女のままのような旅の楽しみ方にも感じられます。「旅っていったって、あんた、そんな仰々しく考えなくていいんだよ」とまるちゃんの口調で言われているような心地もしました。
 まるちゃんもコジコジも国民的な人気作品ですが、さくらさんご自身には「マスに届くように漫画や文章を書く」なんて気持ちはなかったでしょうし、そもそもどこも目がけていないのかもしれない。でもだからこそ、たくさんの人の心に響く作品になったのだと思います。
 3、4年前にさくらさんの真似をして飲尿した時期があったのですが、一週間で限界がきてしまい……(笑)。今度はさくらさんの「旅の仕方」を真似してみようかな。

(いもと・あやこ  タレント)

波 2026年5月号より
単行本刊行時掲載

インタビュー/対談/エッセイ

一瞬で喋るように書く

祖父江慎

 さくらさんと初めて装丁でお仕事させてもらったのは『神のちから』(1992年刊)。そこからたくさん一緒にお仕事させていただきましたが、どれもこれもが刺激的で面白くて、思い出がたくさんあります。だから今回新潮社さんから依頼があった時「え!? 新刊!?」ってびっくりしつつ、「おまかせあれ!」ってふたつ返事でOKしました。
 新刊『たびたび』では、『あのころ』(1996年刊)の時のやり取りを思い出しました。『あのころ』では、僕が提案した本文の書体を見たさくらさんが「なんか違う、いつもの書体が良い」っておっしゃったから僕は内心「ぎくっ……」。「いつもの書体」とは既刊の『もものかんづめ』シリーズで使われていたもので、当時一番一般的な書体。書体に人一倍こだわりがある僕としては「絶対使いたくない~!!」って気持ち。それに、その前に一緒に作った『そういうふうにできている』(1995年刊)は「いつもの書体」じゃなかったし、内容に合わせて当然変えた方がいいよねって思っていて。だからいろんな書体で組んであれこれ説明したんだけれど、さくらさんは「どうも違う人みたいに見えるんだよね」って意見を変えなかった。で、いざ「いつもの書体」で組んでみたら、驚き桃の木! 僕の考えた書体よりずっと「さくらももこ」らしいの。「版面ごとさくらももこ」そのものでした。さくらさんの直感は間違いなかったというわけ。それに、さくらさんのエッセイの単行本って、一般的な単行本より少し小さい判型なんだけれど、それもさくらさんのこだわりでした。初エッセイ集『もものかんづめ』(1991年刊)からずっとそうで、自分の「好き」「これだよね」を大事にして、独自の世界観に満ちた“ももこワールド”を作るのが本当に上手な人だったなあ。だから『たびたび』も、さくらさんが生きていたら「こうしたい」ってきっと言ったよね、っていうのを僕なりに考えてデザインしました。
『たびたび』は雑誌「富士山」(2000年・2002年刊)に掲載されたうち、単行本に収録されていなかったものから、旅エッセイを中心に集めた本です。「富士山」はさくらさんが編集長になって、取材・文章・漫画のすべてをご本人みずから担当した前代未聞の驚きの雑誌。三〇代半ばくらい、元気でパワフルなさくらさんが「好きなこと全部やっちゃおうよ!」って、まさにやりたい放題だったの。僕も張り切って、企画ごとにデザインも変えちゃったりして大変だったけれど、すごく楽しかった! しかも、このときさくらさんが作ったオリジナルのピンバッジの絵が『たびたび』のカバーになったから、すばらしい一石二鳥とも言えるよね(笑)。
 加えて、息子の「さくらめろん」くんとの共作絵本とか、さくらさんがタカラジェンヌに扮装するとか、漫画やエッセイともまた違うアプローチの企画などなど、盛りだくさん。僕は『ちびまる子ちゃん』だけで追っていくと、さくらももこという存在は分からなくなっちゃうと思っているんだけど、「富士山」ではさくらももこという「とんでもない存在」を三六〇度、あらゆる角度から見られたと思う。誰も手がつけられない、やばくてすごい人!! そんな「やばくてすごい!!」は、『たびたび』のエッセイでもたくさん感じられます。ミッフィーちゃんの生みの親のディック・ブルーナさんを訪ねた「ユトレヒト紀行」はじーんとしちゃうし、かと思えば「感動の旅 バリ」では、取材もそこそこにお土産探しに夢中になって編集者に呆れられる。どんなときも自分がどう見られるかは気にしないで行動して、そのままのエッセイを書いちゃうの。潔さがかっこいいよね。しかも旅先で大きな出来事が起きるわけでもなく、「読者が知っても得はしない話」こそ面白がらせちゃう。自分の身に起きた良いことも悪いことも、自分のダメさまでも面白がらせる──。こんな人はいないと思う。
 エッセイといえば、2022年から始まって今も巡回している「さくらももこ展」で、漫画の原画に加えてエッセイの手書き生原稿を展示したんだけど、あまりにも修正が少なくてきれいなの。「これって清書した原稿でしょう?」って誤解されないか心配になったくらい。エッセイは原稿用紙に鉛筆で、独特の丸めの文字で書かれていて、消しゴムの跡がほぼなかった。一編に一、二か所、原稿用紙の右端に加筆の文言が入っているとむしろホッとするくらい、最初から完成された原稿でした。さくらさんは書くスピードがものすごく速くて、喋るように書く人。その姿も印象に残っています。本当にあらゆる面ですごい人でした。
「さくらももこって何だったんだろう」って僕はいまもずっと、考えているんだけれど、きっとさくらさんは、まだまだ未知のファンや読者を「面白がらせる」計画をしていたんだと思います。さくらさん的には起承転結の「転」のところまでしか来ていなかったんじゃないかな。残念なことではありますが、でも『たびたび』を通して、さくらさんに新たに出会ったり、改めて出会い直したりしてくれる人がたくさんいたらすごく嬉しいです。そして今年の夏にはもう一冊、エッセイ集『ふじさん』が出るから、みなさんぜひ、期待していてね!

(そぶえ・しん グラフィックデザイナー)

波 2026年4月号より
単行本刊行時掲載

著者プロフィール

さくらももこ

サクラ・モモコ

(1965-2018)1965(昭和40)年、静岡県清水市(現清水区)に生れる。1984年、漫画家デビュー。1986年、『ちびまる子ちゃん』を「りぼん」に連載開始、1989(平成元)年、講談社漫画賞を受賞し、1990年にはTVアニメとなって国民的人気を獲得。エンディングテーマ「おどるポンポコリン」の作詞も担当、同年のレコード大賞に輝いた。以来、ナンセンスとメルヘンとお笑いが絶妙にブレンドされた作品世界で大活躍を続ける。エッセイ『もものかんづめ』三部作はすべてミリオンセラーを記録。漫画『コジコジ』、『神のちからっ子新聞』、エッセイ『あのころ』三部作、『ひとりずもう』など。さくらももこ編集長の雑誌「富士山」(全5号)も話題をよんだ。

SAKURA PRODUCTION (外部リンク)

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