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大人恋愛塾

柴門ふみ/著

1,430円(税込)

発売日:2015/12/17

  • 書籍
  • 電子書籍あり

死ぬまで恋愛したいですか? 恋愛の神様がついに、塾を開設!!

熟年不倫、二股三股なんて、もはや当たり前のこのご時世。アラフィフ・アラフォーたちの乱れた恋愛事情を分析すると、皆、いつまでもSEX&恋愛したいらしい……。なのに、当のみなさんは意外と恋愛ベタで、大人げなくクヨクヨ悩んでいる。思い当たる節のあるあなた。サイモン塾長の門下に入れば、生涯ハッピー間違いなし!

目次
はじめに
一限目 ものすごいことになっています。
『死の棘』夫婦
まだまだ枯れない男と女
アラフィフ恋の現役
アラフィフ恋の現役 PART II
愛子さんのレンアイ
それはキスから始まった
フーゾク純愛
夫婦はフィフティ・フィフティ
幼児返りの夫たち
男のロマン 女のリアル
二限目 女は、若きもやっちゃってます。
可愛げ女
アラサー女子には御意見無用
アラサー女の、のど自慢
迷える半沢直子38歳
あっけらカン子性の大冒険
クリスマスの魔法
全身恋愛感帯
ずっと片思い
女芸人の恋愛事情
三限目 男も、やっぱりやってます。
モテオ伝説
美人のおそばに、洗脳男
NOと言えない妄想男
男やもめのご乱行
ややこし好きの、男
悲しいイブの夜
爽やかな野獣
恋愛感情欠乏脳
結婚しない中高年
オラオラ男と尽くす美女
ゆとり世代の低空飛行恋愛

書誌情報

読み仮名 オトナレンアイジュク
雑誌から生まれた本 小説新潮から生まれた本
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判
頁数 224ページ
ISBN 978-4-10-431704-2
C-CODE 0095
ジャンル 倫理学・道徳、恋愛・結婚・離婚
定価 1,430円
電子書籍 価格 1,144円
電子書籍 配信開始日 2016/06/03

書評

恋のトラップに引っかかりがちなあなたへ

三浦天紗子

 若いときに情熱的な恋をし、互いを慈しみ合いつつ男女としては枯れていく。たとえていえば、ヨーロッパの絵はがきなんかにある、寄り添う老夫婦のあの姿。それこそが美しき人の道だと思っていたが、周囲を見渡せば、我が身を含めて、そんなにスッキリ生きている人なんていやしない。
 未婚のまま還暦を迎えた先輩のバースデーを先だって祝ったときには、いまも愛の奇跡を夢見ているようであったし、年末に参加した平均年齢四〇超えのとある女子会では、幸せな既婚者と、未婚とバツイチで構成するイタい連合の割合は一対五であった。
 面白いのは、そんな失敗組にも「恋愛なんてもういいや」という思いと、「もしかしたら」という両極の思いが、天気図の高気圧と低気圧の勢力図のようにせめぎ合っていること。これまでに何度も“やらかしちゃって”トホホな思いをしてきたはずなのに、「この先は、恋とは無縁で清廉に生きよう」とならないのが、生の矛盾そのものだ。
『大人恋愛塾』は、三年前に出版された『大人のための恋愛ドリル』のいわば続編。元祖“恋愛の神様”と呼ばれた著者が、今回も恋愛に悩む人たちをリアルに取材し、イマドキの恋愛事情を分析、考察していく。
 人は、自分と利害関係のない相手に自分の恋バナを聞いてもらうのが大好きだ。ゆえに占い師や占い館が流行るわけだが、本書でも、悩める人、のろけたい人、自慢話がしたい人は、ここぞとばかりに著者にあれこれぶちまける。
 たとえば、「迷える半沢直子38歳」の回。銀行員の〈半沢直子(仮名)〉さんは、結婚してもいいかなと思っていた交際相手に思わぬ肩すかしを食わされ、結婚相手探しに苦労していると著者に相談する。著者は、気心の知れたサークル仲間の男友だちにしろと勧めるが、モテてきた女性ほど、男に多くを望むもの。案の定、彼女は「彼には男としてときめかない、彼とはエッチできない」と突っぱねる。だが、著者はそこで「結婚して十年もすればほとんどの夫婦はセックスレス。結婚十年から始めたと思えばいいじゃない」と知恵を授ける。
 また、「NOと言えない妄想男」の回では、ある種の大人の男が考える、お洒落で垢抜けたデートとやらは、自分で悦に入ってるだけ。〈奴らは仕事でいっぱいいっぱいで、それ以外に頭も気持ちも回らない、ウツワのちっちゃな男なのではないか〉と看破。「モテオ伝説」の回では、著者自身も〈まあ、モテるだろうな〉と一応は認める四七歳の独身男〈モテオ〉の仰天のモテ理屈〈女には荒っぽく接しますよ〉〈女は欲張りだから、自分を痛めつけた男に自分から別れを言いださない。損した分を取り返したいと考えるから〉を引き出して、警告してくれる。
 仕事もお金もありひとり上手すぎるシングル美人のサバサバ失恋ストーリー「クリスマスの魔法」、恋愛ボルテージが思い切り低い青年の「ゆとり世代の低空飛行恋愛」など、エピソードの千差万別ぶりにも驚くが、やはりキモは、聞いただけの体験から恋愛のセオリーを発見し、箴言を生み出していく著者の慧眼だ。ひそかに〈少子化対策一人NPO活動〉を続ける著者のアドバイスは、基本、女子の味方。恋のトラップに引っかかりがちな女性には特に読んでいただきたい。
 前作ではアラフォーくらいの「大人男女のウブ感」を感じるエピソードが印象的だったが、本作ではアラフィフ、アラ還の恋愛事情についての割合がアップ。ナマナマしくて、ねじれていて、ヘンに一途。世間では孫がいても不思議はない世代が、いまだ達観できず、恋や性欲にもがいているのだから、人間とはつくづく業が深いと思うばかり。
 それだけに、アラフィフ、アラ還世代の読者なら、みんなも悩んでいるんだと救われるし、それより下の世代なら、いくつになっても恋は厄介だと覚悟ができる。
 わかっているつもりでも、あらためて思う。なんでもありがまかり通る、恋愛のエネルギーとは何なのか。
 ただし、「結婚とは、恋愛とは、こういうもの」とガチガチの理想をお持ちのモラリストやドリーマーには、本書は毒かもしれない。いや、流行りの免疫療法的に、抗体を作るつもりで読んでおくのも悪くないかも。

(みうら・あさこ ライター、ブックカウンセラー)
波 2016年1月号より

著者プロフィール

柴門ふみ

サイモン・フミ

1957(昭和32)年、徳島県生れ。お茶の水女子大学卒。1979年漫画家デビュー。あらゆる世代の恋愛をテーマにして『東京ラブストーリー』『あすなろ白書』『同窓生――人は、三度、恋をする――』など多くの作品を発表している。またエッセイ集として『恋愛論』『ぶつぞう入門』『愛の哲学』などがある。ペンネームは中学時代からファンであったポール・サイモンに由来している。『大人恋愛塾』は、『大人の恋力』『大人のための恋愛ドリル』に続くシリーズ第三弾。

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