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江戸の性愛術

渡辺信一郎/著

1,320円(税込)

発売日:2006/05/25

  • 書籍
  • 電子書籍あり

「抜かずに六交」「拭かずに七交」! 究極の快楽に到達する36種の交合体位を紹介! 

伊予道後で大成功を収めた遊女屋の主人が、書き記した秘伝の書『おさめかまいじょう』――この性愛指南書には、遊女の健康管理に始まり、男を籠絡する術、放縦な要求への対処法、どのように「天悦」に至らしめるかなど、あらゆる性のテクニックが網羅されている。当時の図版を掲載しながら、豊かで過激な性愛文化を明らかにする。

目次
第一章 遊女の性技指南書に見る秘技
一、『おさめかまいじょう』について
二、新入りの女の女陰検分と水揚げ
三、男経験のある新入りの女の女陰検分
四、強靱のまらを堪能させる技法
五、まら巧者の処理技法
六、ようたんぼの半立まらに応じる法
七、いきり過ぎて、萎えたまらの扱い方
八、すぼけまら(包茎)の扱い方
九、女は精液を吸い取って滋養とする
一〇、絶大な馬まらには口と舌を使う
一一、女郎の「気を遣る」のを止める技法
一二、馴染みまらに応じる技法
一三、刺身や道具を使う男への対処法
一四、乳房間の交合の技法
一五、口にほおばる技法
一六、けつ取りの場合の対処技法
一七、手技で男に気を遣らせる秘法
一八、交合以外の女陰の曲技
一九、干瓢を用いる秘法
二〇、魚の腸管を使う秘法
二一、凍りこんにゃくや高野豆腐を使う秘法
二二、「かんぶ紙」を巻いて行う秘法
二三、枠を嵌めて行う技法
二四、芋の皮を巻いて行う秘法
二五、「ぬか六」に対応する秘法
二六、様々な交合体位、三十六種
二七、女二人と男一人の技法 その一
二八、女二人と男一人の技法 その二
二九、女二人と男一人の技法 その三
第二章 女への大悦
一、女との肛交
二、外国の場合
第三章 「張形」の御利益
一、女の新たなる自己顕示
二、文献に現れた「張形」
三、どんな女たちが使用したか
四、新鉢を割る
五、月水でも
六、瞠目すべき秘録によれば
七、独楽でアクメに至るには
八、張形を使用する際には
九、使い方の実際
一〇、宿下がりとお役御免
一一、下女などは代用のものを
第四章 江戸のバイアグラ
一、提灯で餅を搗く
二、常々の補腎薬の色々
三、女が取り乱す「蝋丸」
四、女が叫春する「女悦丸」
五、世界に冠たる勃起薬「長命丸」
六、バイアグラと同等「危檣丸」

書誌情報

読み仮名 エドノセイアイジュツ
シリーズ名 新潮選書
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 224ページ
ISBN 978-4-10-603564-7
C-CODE 0339
ジャンル 日本史、恋愛・結婚・離婚
定価 1,320円
電子書籍 価格 1,320円
電子書籍 配信開始日 2019/07/19

書評

波 2006年6月号より おめこ巧者  渡辺信一郎『江戸の性愛術』

岩井志麻子


まず紹介されるのは、江戸の遊女の性技指南書。「門外不出の秘伝書として、綿々と語り継がれ、密かに筆写され続けた、最高機密の書」なり。それだけでもう、腿の辺りにサワサワ這い上がってくるものがあるというのに。
第一章の目次を見れば、いきなり「まら巧者の処理技法」だの「半立まらに応じる法」だの「萎えたまらの扱い方」だの、先走り汁がほとばしる勢い。
中盤に差し掛かれば、「絶大な馬まらには口と舌を使う」「けつ取りの場合の対処技法」「交合以外の女陰の曲技」……我がおめこにも、直接ウニウニと感じる確かな体温。いやはやもう、目次を見ているだけで気を遣ってしまいますわ。
さらに「凍りこんにゃくや高野豆腐を使う秘法」「芋の皮を巻いて行う秘法」とくれば、そこまでやってくれなくてもアアアと恥らいつつも、遣る瀬ない余韻に浸れる。
江戸の秘伝書は、タイトルからして凄い。『おさめかまいじょう』。これそのものが途方もない技ではと、期待したが。意味はしごく真面目なものなのであった。そこんとこを知りたければ本書をお読みくださいと、チクチク焦らしておく。
『おさめかまいじょう』はしかし、古の江戸の人々の助平さに思いを馳せ、エロいひとときを共有できるだけではない。平成の世にも充分すぎるほど通じる、いっそエチケットとマナーの書、といってもいい書だ。現代の風俗嬢と客にとってもかなり参考になるし、平成の風俗店経営者が真面目に読み込めば、女の子達に実に正しい指導ができよう。
助平さに感心するだけでなく感動したのが、江戸の遊女屋は女達を大切にしつつ徹底的に商品にしているところだ。といっても、女を物扱いするのではない。女をとことんプロフェッショナルであるべし、と躾け育て上げているのだ。
売られてくるのは貧しい家の娘ばかりなので、遊女屋に来たときは痩せこけている。そんな彼女らに決して手荒な扱いはせず、飯は欲しがるだけ食べさせるとも書いてある。
この本を読むまでは、遊女はさぞかしひどい扱いを受け、ろくに食べさせてもらっていなかっただろうと想像していたのだが。経営者も商品を大事に扱うからこそ、遊女達も苦界にありながらプロフェッショナルとしての矜持はあったのだ。
無論、平成の一部の女のように、遊びたいからホストクラブ行きたいからブランド物のバッグ欲しいからといった理由ではなく、家の貧しさ故に泣く泣く売られてくる女が大半だった遊女屋が、楽しい就職先や居心地のいい職場であるはずがない。経営者とて、道楽でやっているのではなく、厳しい経営と競争に勝負を賭けていたのだ。
見事な通解と解説をなされた渡辺信一郎氏も、こう書いておられる。「何とも壮絶で、凄惨な書なのであろうか」「おのれの肉体を酷使し、それで生計を立てる女郎という境涯の辛さが偲ばれる。その女郎を監督・管理しながら経営する女郎屋の経営者もまた、並大抵ではなかったであろう」。
だからこその、徹底した心構えと管理とプロ意識。特大の男根を受け入れる心得、ふにゃチンや包茎の扱い、口でのやり方にお尻の穴の使い方、いわゆる3Pの手順、もう何から何まで網羅してある。添えられた図版もまた、身も蓋もないのに芸術に迫る出来栄え。どうやったって、興味本位のエロ本になどなりはしない。
それにしても平成の『江戸の性愛術』も、江戸の『おさめ~』に負けず至れり尽くせり。
三百五十年前に女性によって書かれた秘録『秘事作法』の、張形を使って自慰で達するに至る手順など、渡辺氏の簡潔な要約でも充分長いのだから、原文の丁寧さはいかほどか。
張形もこの頃は海亀の甲を煮たものや、水牛の角、革、黄楊(つげ)などでなんとも典雅であったと知れる。大型、楕円筒、上反りと、型も様々。さらに、現代のバイアグラといってもいい精力剤、女の性感を増進させる薬まで紹介している。平成日本人より助平だった江戸日本人。「当時の数多くの艶本や色道指南書を繙くと、飽くなき実践と観察という臨床的(経験的)な処方が絢爛と述べられ、その深奥さに驚かされる」。助平は何時の世も真面目だ。

(いわい・しまこ 作家)

担当編集者のひとこと

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 さて、いきなりここで問題です。以下の文章は、誰がなにをどうしているところでしょうか?(1)
 おやま、上向きに寝る。両膝を立てて、けつを浮かすよに両手をけつ下に入れる。客は、両手突き、両膝立てて、上に乗る。おやま、両手でおのれがけつを抱かえて、抜き差しを受け、又おのれもけつを使う。又は、客両足を伸ばし、爪先立って、抜き差しする。
(2)
 おやま、別のおやまに、半逆立のよに抱かえてもらう。どたまを、そのおやまの股倉に乗せ、腹持てもらいて、腹を折り、両足を前に下ろして足を付ける。客、後ろ向きにて、うつむいて立ち、おやまのけつと、おのれのけつを向かい合せ、片手でまらをぼぼに入れる。抜き差しするに、抜けざるよに、別のおやまが、まらを持ち添え、片手は半逆立ちのおやまの腹より、おめこのさね、ねきいらいて締める。

 ヒントは、(1)は登場人物が二人、(2)は三人。ご興味のある方は『江戸の性愛術』「第一章 遊女の性技指南書に見る秘技」後半をご覧下さい。

2016/04/27

著者プロフィール

渡辺信一郎

ワタナベ・シンイチロウ

(1934-2004)江戸庶民文化研究者、古川柳研究者。1934年東京生まれ。早稲田大学卒。元都立深沢高校校長。主著に『江戸の寺子屋と子供たち』(三樹書房)『江戸の生業事典』(東京堂出版)、『江戸の女たちのグルメ事情』(TOTO出版)、『江戸の女たちの湯浴み』『江戸のおトイレ』『江戸の閨房術』(新潮選書)、『江戸バレ句 戀の色直し』(集英社新書)、『江戸の知られざる風俗』(ちくま新書)、『江戸の化粧』(平凡社新書)など。蕣露庵主人の筆名もある。2004年没。

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