ホーム > 書籍詳細:指揮者の歴史

指揮者の歴史

岡田暁生/著

2,200円(税込)

発売日:2026/10/21

  • 書籍
  • 電子書籍あり

指揮者はなぜ要るのか──権力の真骨頂を学べる音楽史。

いつ指揮者は生まれ、どういう経緯を辿って今のような存在になったのか。合理化と民主主義の時代に逆行するかのように、独裁的で呪術師のようなカリスマが次々と登場したのはなぜか。西洋音楽史の第一人者が、「近代社会と権力」の文脈から、巨匠たちの系譜を一望し、時代と共に変化してきた「権力の特質」を鮮やかに描く。

目次

はじめに

第1章 指揮者はいつ生まれたのか?──鬼軍曹スポンティーニ
指揮とは「タクト」である/疎外なき「わいわいがやがや」/モーツァルトの舞踏会の時計/「指揮者」の誕生とスポンティーニと王笏と/オペラ指揮者とコンサート指揮者/それでも親密圏は残る/ベートーヴェンは『第九』を指揮したのか?

第2章 「近代現象」としての指揮者──怪物ベルリオーズのマンモス・オーケストラ
巨大イベントに憑かれた時代の始まり/カリスマ指揮者は鬼軍曹かイベント・プロデューサーか?/指揮者はメトロノーム?/メトロノーム発明と指揮者登場は同じ時代/時間の平均律化と自由の抑圧/イタリア的「帳尻合わせ」の妙

第3章 作曲家は神、指揮者は従僕──ワーグナーとビューロー
指揮者ワーグナーの偉大さ/完璧主義と精神性/ワーグナーのテンポ理論/下僕のごときビューロー/ビューローとベルリン・フィルの設立/音楽マネージメントの歴史/ヴォルフ音楽事務所は元祖クラシック界のドン?

第4章 巨匠指揮者の系譜──ニキシュ/マーラー/シュトラウスの時代
バイロイトの跡目争い/急拡大する「業界」/スター指揮者ニキシュ/御曹司シュトラウス/若い指揮者へのアドバイス/文化の外部者マーラー/マーラーの剛腕独裁政治家ぶり/伝統を転覆させる者の最期?/マーラーはどんな演奏をした?

第5章 トスカニーニと新即物主義──二十世紀ここに始まる
ロマン派の終焉と一九二〇年代/プフィッツナーが振り返る大戦前の指揮界/新即物主義とトスカニーニの衝撃/ドイツ音楽中心主義を征服した最初の「外人指揮者」/アドルノのトスカニーニ批判/トスカニーニと複製芸術の時代/シェルヘンとレイボヴィッツ──「真の」新即物主義者?/齋藤秀雄と新即物主義/シェルヘンの『指揮法教程』/国際化と合理化

第6章 フルトヴェングラーは「文化」を救済する──時間の中で生成するもの
無名だったフルトヴェングラー/一九二二年とはどんな年だったか?/フルトヴェングラーはディレッタントか/内面性と魔力/絶対テンポと構造性/時間の中での生成を共体験する/クラーゲスの有機体論/失われたときを求めて/フルトヴェングラーの悔悟

第7章 カリスマ権力について──オーケストラをいかにして征服するのか
「ザ・権力」としての指揮者/王なき時代の王か、それとも首相か?/オーケストラと共和制/オーケストラという地雷原/マックス・ウェーバーの支配の三類型と似非カリスマ/合法性による支配──冷静沈着、無駄口は叩かない/伝統が与える威光/カリスマは魔術で奇跡を起こす/催眠術にかける眼?/カリスマと信者と評判

第8章 「スター」カラヤンと戦後西側資本主義──指揮者イメージの究極形
戦後西側社会の広告塔カラヤン/ダルムシュタットと音楽における戦後処理/バイロイトの戦後処理のやり方/カラヤンはあまりゲルマン的でない/カラヤン・サウンドのふたつの「武器」/再生装置のための音楽?/映像とキッチュとナチスの美学/怪物ストコフスキーをめぐる補足

第9章 アバドとビートルズ世代──「指揮者のいないオーケストラ」という夢
ポスト・カラヤン時代=ポスト冷戦時代/ヤングスター指揮者とポピュラー・カルチャー/ポスト・カラヤン世代はどんな時代に育ったのか/アバドと家父長的モダンの拒否/冷戦が終結したころアバドは何を夢見たか/熟議民主主義とミュージッキング/クライバーは「ひきこもりの巨匠」/ラトルとミュージッキング路線/「指揮者のいないオーケストラ」というユートピア/指揮者の自我はアクかコクか?

第10章 指揮者はどんな神の代理人なのか?──カール・シュミットと考える
指揮者は司祭?/ワーグナーの嗜虐趣味/威光の直接性は薄まっていく/「かくあるべし」が困難な時代/定言命法と決断/「聖なるものの代理人」の類型について

第11章 古楽は現代音楽かロック・バンドか?──一九七〇年代に起きたこと
「古楽」に指揮者がいる不思議/古楽はいつからメジャーになった?/ヒンデミットと古楽演奏のルーツ/古楽復興とユーゲント運動/ベッセラーと「みんなでする音楽」の理想/なぜ一九七〇年代以後だったのか/ピリオド奏法は「現代音楽」の座を奪った?/ハードロックと古楽ブームは同時代現象

第12章 復古・幻視・フェスタ──現代の三人の指揮者をめぐって
アンチ・グローバリズムの予兆?/ティーレマンは「ドイツ的」たることを恐れない/一九六八年世代へのルサンチマン/アンチ・スタイリッシュ/商業主義への呪詛/ティーレマンは(も)ポストモダンなのか?!/クルレンツィスはシベリアにユートピアを求める/クルレンツィスの否定神学/「この世界で生きるのがいやなら別の世界を創造しなければいけない」/南米サルサ文化とドゥダメル/オーケストラ音楽の未来とヴァナキュラーな土/ドゥダメルについての補遺

おわりに

註
参考文献・動画

書誌情報

読み仮名 シキシャノレキシ
シリーズ名 新潮選書
装幀 駒井哲郎/シンボルマーク、新潮社装幀室/装幀
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 352ページ
ISBN 978-4-10-603954-6
C-CODE 0373
定価 2,200円
電子書籍 価格 2,200円
電子書籍 配信開始日 2026/10/21

著者プロフィール

岡田暁生

オカダ・アケオ

1960年、京都市生まれ。音楽学者。大阪大学大学院文学研究科博士課程単位取得満期退学。京都大学名誉教授、同志社大学客員教授。『オペラの運命』でサントリー学芸賞、『ピアニストになりたい!』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、『音楽の聴き方』で吉田秀和賞、『音楽の危機』で小林秀雄賞受賞。著書に『オペラの終焉』、『西洋音楽史』、『モーツァルトのオペラ 「愛」の発見』など多数。片山杜秀との共著に『ごまかさないクラシック音楽』がある。

この本へのご意見・ご感想をお待ちしております。

感想を送る

書籍の分類