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墓は知っている。春日局の執念、お由羅騒動の真相、家光兄弟の確執、越前家始祖の本心――。江戸時代の愛憎と恩讐の物語10篇。

墓が語る江戸の真実

岡崎守恭/著

799円(税込)

本の仕様

発売日:2018/10/17

読み仮名 ハカガカタルエドノシンジツ
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 204ページ
ISBN 978-4-10-610786-3
C-CODE 0221
整理番号 786
ジャンル 歴史・地理、歴史・地理
定価 799円
電子書籍 価格 799円
電子書籍 配信開始日 2018/10/26

なぜそこにあるのか、誰が建てたのか、並び方の意味は……。墓は歴史を知り、その真実を浮かび上がらせる。悪女と恨まれた側室と藩主の絆(鹿児島・福昌寺)、後継ぎの兄よりも弟の自分を愛してくれた母への強い思い(高野山奥の院)、死後も将軍家を見守ろうとした乳母の執念(湯島麟祥院)、百万石の安泰をもたらした不遇の兄への気配り(金沢・野田山墓地)……。墓が語る、江戸時代の愛憎と恩讐の物語十話。

著者プロフィール

岡崎守恭 オカザキ・モリヤス

1951(昭和26)年東京都生まれ。早稲田大学人文科卒業。日本経済新聞社入社、北京支局長、政治部長、編集局長(大阪本社)などを歴任。歴史エッセイストとして、国内政治、日本歴史、現代中国をテーマに執筆、講演活動中。著書に『自民党秘史 過ぎ去りし政治家の面影』。

目次

はじめに
第一話 死んでもお前は隣――お由羅と島津斉興【鹿児島・福昌寺】
廃仏毀釈で廃寺に/殿と愛妾が並ぶ/「蘭癖」の曾祖父の薫陶/秘密のローマ字日記/“後妻”として認知?/「国父」様の生麦事件/鬱憤晴らしの花火/正室は離れてひっそり/岡山藩の存続にも貢献/言葉少ない慶喜/みんなお由羅の血筋
第二話 死んでも母が一番――お江と徳川忠長【高野山奥の院】
建立は愛された弟/初代の御台所/竹千代殿これへ/乱行の果ての切腹/二代将軍を飛ばす/三人が三つの天守/徳川家霊台は兄/老境を感じさせないのに
第三話 死んでもお前は別――鷹司孝子と徳川家光【小石川傳通院】
摂関家からの第一号/御台所と呼ばれず別居/弟は厚遇/お万の方との日々/佐々成政の家系/家康生母、お大の方/悲劇の千姫も/一一代家斉の側室群/十把ひとからげの感
第四話 死んでも穴から見てる――春日局と淀藩稲葉家【湯島麟祥院】
鴎外、漱石もからたち寺/謀反人の子なのに/家光公、御腹は春日局/過激な東照大権現祝詞/火宅を逃れぬるかな/末裔は淀藩で老中/裏切りではなく「中立」
第五話 死んでも思いは豊臣――松平秀康と越前家【福井・大安禅寺】
表は徳川、裏は豊臣/生まれる前から冷遇/順番通りなら自分/後継ぎの配流/越後騒動に続く/石高の浮き沈み/門葉は広がる/幕末、将軍家とは一線
第六話 死んでも落ち着けず――お保良と柳沢吉保【上野寛永寺】
隠し子が二人/生母は若死に/“保身”の石灯籠/本当は慎みの人?/次男は将軍になれず/君と寝ようか五千石とろか
第七話 死んでも兄上が上――前田利久と利家【金沢・野田山墓地】
八十基の墓石/信長の命で当主交代/墓は兄より下に/遺骸は長持で金沢へ/養子の名は慶次/子孫は自重に自重/家老も徳川家から/幕末は右往左往/野田山、歴史のイフ
第八話 死んでも見捨てられず――高尾太夫と榊原政岑【池袋本立寺】
徳川四天王の名門/吉宗の逆鱗に触れる/身請けに六千両/高尾太夫あれこれ/江戸に戻って四十六年/藩主のすり替え/姫路ゆかたまつり
第九話 死んでも悪評は続く――藤堂高虎と徳川将軍家【春日大社】
将軍にも大御所にも/二元政治へのバランス/次々に出奔と仕官/出家して加増/豊臣包囲網で三十二万石/「先鋒は井伊と藤堂」/裏切りで新政府軍に/三人一緒に鎮まる地
第十話 死んでも戒名に差別――寺坂吉右衛門と赤穂義士【高輪泉岳寺】
切腹は四十六人、墓は四十八人/「逃げた」の戒名/本当に不届者?/弟大学に報告/一人だけ別に埋葬/「仔細」ありて別れ/城明け渡しは予習済み
おわりに
主な参考図書

インタビュー/対談/エッセイ

墓石から覗く愛憎劇

岡崎守恭

 たしか池波正太郎氏のエッセイにもあったと思うが、雪の日の東京には江戸がよみがえる。
 特にそうなのが、たとえば上野公園である。東京国立博物館の辺りの広い一画。しんしんと雪が降りつもり、人通りもほとんどない朝、ここにたたずんでみる。
 すると静寂の中に昔の江戸の姿が脳裏に浮かんでくるばかりか、その香りさえも漂ってくるように感じる。
 この一画がすべて徳川将軍家の菩提寺である東叡山寛永寺という江戸にゆかりの特別な場所だったから、なおさらなのだろうか。
 ところで雪の日でなくても、往時を存分に偲ばせてくれるところがある。「墓域」である。
 しかもしばしばそれはひっきりなしに観光バスが訪れる城郭や神社、仏閣のすぐ裏手などにある。にもかかわらず人の姿を見ることは稀である。
 風に吹かれる木々の葉音しか聞こえない墓域で、誰がこんなに巨大な墓石(供養塔)を建てたのか、どうして奇妙な形にしているのか、なぜこの配置なのかなどをじかに見聞すると、歴史の知識として学んできたことが「時代の真実」として俄然、眼前に開けてくる。
 遠く南に飛んで、鹿児島の今はなき大寺院の跡に残る島津家の墓地を訪ねてみる。放送中の大河ドラマの「西郷どん」で、小柳ルミ子さんが演じて強烈な印象を残したお由羅の方の墓が島津家の家族を祀るこの墓域にある。
 それも寵愛された藩主の墓の隣に立つ実に立派な石塔である。ずらりと並ぶ歴代の藩主の墓の傍らに「正室」ではなく、「愛妾」の墓があるのはここだけ。多くの血が流れた幕末の「お由羅騒動」がどんなに苛烈なものであったか、この墓の配置が如実に物語ってはいないだろうか。
 木造の建物と比べれば、格段に頑丈であり、火災で焼失する心配もない墓石。昔のままの姿でいつまでも残っていきそうである。
 が、そうそう安閑としてもいられないのである。都市化の波に洗われて、由緒ある墓域そのものがいつのまにかなくなって、一般の墓地として分譲されていたりもする。
 今のうちに見ておいて、墓が突き付けてくる史実を実感してもらいたいものである。繰り返すが、長くその地を治めた「殿様」たちの墓というレベルでも、人がほとんどいないところがいい。その時代に思いを馳せるには最高である。
 舞台は江戸(東京)、鹿児島のほか、金沢、福井、奈良、和歌山などの日本列島の各地である。無機質であるはずの墓石を通じて、将軍、大名、側室、乳母、遊女、浪士などの幅広い愛憎劇を覗いた。
 墓が自ずと語る人間模様に納得し、頷くことのできる「なるほど江戸のお墓」の世界である。

(おかざき・もりやす 歴史エッセイスト)
波 2018年11月号より

蘊蓄倉庫

徳川の墓だって、いつまでもあるとは限らない。

 徳川将軍家ゆかりの墓であれば未来永劫そのまま残るかと言えば、そんなことはありません。上野寛永寺の「徳川将軍家御裏方霊廟」には、将軍の5人の正室、6人の生母の墓がありましたが、今は宝塔などが撤去され、跡地が霊園として分譲されています。山手線に沿った日暮里駅と鶯谷駅の間の高台で、墓域としては都心の一等地。2.64㎡の区画だと、価格は墓地使用料と墓石工事一式で税込1000万円に迫ります。『墓が語る江戸の真実』では、ついこの間までここに葬られていた6代家宣の生母、お保良の生涯を取り上げています。

掲載:2018年10月26日

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