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もっと言ってはいけない

橘玲/著

924円(税込)

発売日:2019/01/17

  • 新書
  • 電子書籍あり

日本人の3人に1人は日本語が読めない!? 「置かれた場所」で咲くのは不幸!? 人種で知能はちがう!? 高所得をもたらす性格は!? 人間社会のタブーがまた、明かされる!

この社会は残酷で不愉快な真実に満ちている。「日本人の3人に1人は日本語が読めない」「日本人は世界一“自己家畜化”された民族」「学力、年収、老後の生活まで遺伝が影響する」「男は極端、女は平均を好む」「言語が乏しいと保守化する」「日本が華僑に侵されない真相」「東アジアにうつ病が多い理由」「現代で幸福を感じにくい訳」……人気作家がタブーを明かしたベストセラー『言ってはいけない』がパワーアップして帰還!

目次
まえがき 日本人は世界でもっとも「自己家畜化」された特別な民族
プロローグ 日本語の読めない大人たち
日本人の3分の1は日本語が読めない?
先進国の成人の半分はかんたんな文章が読めない
無意識は高い知能をもっている
知能とポピュリズム
知識社会に適応できるのは1割強
【1】「人種と知能」を語る前に述べておくべきいくつかのこと
なぜ知能が問題になるのか?
統計的事実とブラックスワン
差別とは合理的に説明できないこと
遺伝率と遺伝決定論
同性愛は生得的なものか?
「ゲイ遺伝子」の発見
同性愛はなぜ自然選択されたのか?
リベラルな社会ほど遺伝率が上がる
【2】一般知能と人種差別
白人と黒人のIQのちがい
レイシストは誰か?
捏造された知能のデータ
一般知能は「統計的実在」
IQの高い黒人の子どもたち
年齢とともに遺伝率は上がる
教育への投資効果は年率10%?
教育無償化は社会的弱者の子どもたちへ
お金を渡せば教育効果は高まるのか?
先進国の知能は低下しはじめている
極端な男の知能、平均的な女の知能
知能とは知能テストが測ったもの
【3】人種と大陸系統
すべてのヨーロッパ人の祖先
私もあなたも「天皇家の遠縁」
犬種を論じるのはイヌ差別?
人種は社会的構築物
人類はかつて水生生活していた?
赤ちゃんはなぜ泳げるのか?
サピエンスの誕生は77万~55万年前
覆される通説
サピエンスはユーラシアで誕生した
ネアンデルタール人になにが起こったか?
「出アフリカ」はわずか1000人?
ヒトの「進化」は加速している
遺伝と文化は「共進化」する
【4】国別知能指数の衝撃
アボリジニのIQは高い
学力ランキングはよくてIQランキングは差別?
知能の基準はサン人
寒冷地への移住で知能が上がる
ヨーロッパはなぜ北にいくほどIQが高いのか?
宗教改革と知能
科挙が東アジア系の知能を上げた?
稲作というイノベーション
産業革命と勤勉革命
アメリカ黒人の知能は高い
ユダヤ人の知能は高くない?
パレスティナ人はイスラームに改宗したユダヤ人
キリスト教の誕生とユダヤ人の知能
差別から生まれた「高知能集団」
バラモンの知能
ヨーロッパ人とインド人は同祖集団
言語的知能が低いと保守的になる?
知能の高い国はリベラルになる?
制度決定論は「空白の石版」
【5】「自己家畜化」という革命
成功した日本人移民
生き延びるために賭けるもの
日本にはなぜ華僑財閥がないのか?
「遺伝決定論」を否定したヒトラー
弥生人の“ジェノサイド”
「下戸遺伝子」でわかる弥生と縄文の遺伝分布
アメリカ社会でもっとも成功したアジア系移民
アファーマティブ・アクションで「差別」されるアジア系
アジア系は内向型人間
ペットになったキツネ
石槍という「大量破壊兵器」
道徳の起源は相互監視
農耕という第二の「自己家畜化」
チワワとドーベルマン
【6】「置かれた場所」で咲く不幸――ひ弱なラン
高い所得をもたらす性格とは?
内向的な脳と外向的な脳
セロトニンとうつ病
楽観的な脳・悲観的な脳
敏感と鈍感の進化論
日本のリベラルは睾丸が小さい?
なぜ日本人は子どもとまちがえられるのか?
日本人は「ひ弱なラン」
咲ける場所に移りなさい
あとがき
注釈:参考文献

書誌情報

読み仮名 モットイッテハイケナイ
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 256ページ
ISBN 978-4-10-610799-3
C-CODE 0236
整理番号 799
ジャンル 社会学
定価 924円
電子書籍 価格 880円
電子書籍 配信開始日 2019/01/25

書評

人をひきつけるタブーの本質

山口真由

 生来的な知能の優劣――これほどタブー視され、それと同時に人をひきつけるものもないだろう。それは、前作『言ってはいけない―残酷すぎる真実―』がベストセラーになったことでも明らかだ。そして、本書はさらにこのタブーの本質に深く切り込んでいる。
 黒人よりも白人のIQが高いのは、1960年代には既によく知られた事実だった。しかし、この時代、人々は希望に満ちていた。これこそ、奴隷とされた黒人が経済・社会的に劣位に置かれ続けてきた結果だろう。この現実を変えようというのが、人種間の差別をなくす公民権運動の原動力となったのだ。ところが、数十年を経た後、人種間のIQ格差は気まずい沈黙へと変わっていく。その理由について「長期にわたる『人種差別とのたたかい』にもかかわらず、白人と黒人のIQ格差はほとんど変わっていなかったからだ」と本書は説く。表面的に平等になった社会に、いまだ根深い差別が残るからだろうという反論もあろう。それは否定できまい。だが、こちらも虐げられてきたアジア系アメリカ人(例えば、日系アメリカ人は、第二次世界大戦中には「敵性民族」として財産を没収されたうえでキャンプに強制収容されていた)が、世代を経るごとに大学進学率を大幅に上げ、社会的地位を向上させる。となると、社会的な差別だけで格差を説明することが難しくなる。それでも「リベラル」な人々は「すべての人は平等」という理想に向けて、振り上げた拳を決して降ろそうとはしなかった。代わりに「表現」が攻撃されるようになる。「黒人」「白人」などという肌の色に着目した呼称は差別を助長するので、「アフリカ系アメリカ人」「コーカソイド」に改めよう。女性の職業であるとの先入観に基づく「看護婦」も性差別、「看護師」に変えよう。いわゆる「ポリティカル・コレクトネス」の胎動である。
 しかし、本書の出色はその先である。建前を徹底的にクリーンに塗り替えていったこの社会で、現実がどれだけ変化したのだろうか。「アフリカ系アメリカ人」のIQがどれだけ上がり、「看護師」に占める男性の割合がどれだけ増えたのか。そこが変わらないならば、むしろ表現だけを整えることは、そこにある確かな違いを糊塗することに過ぎないとの考えも成り立つ。さらに進んで、本書のアボリジニのIQの話は示唆的だった。伝統的な社会に暮らす人々のIQは低い。アボリジニも例外ではない。ところが、空間記憶能力についていえば、白人の子どもと比較して相当程度高いという。ここで我々ははたと気づく。そもそもIQという指標は「知能」を測る物差しとして適しているのかと。それぞれの地域や文化の中で、人は生き延びるための能力を発達させる。砂漠に追いやられたアボリジニは、自らの居場所を見失わないように空間記憶能力を高めたとのこと。ならば、それぞれの暮らしに即した知恵があり、おのおのの尺度があってしかるべきではないか。それをIQというスタンダードのみにはめこんで優劣をつけることが果して妥当だったのか。
 そう考えると、現代社会というのは、本書でいうところの「自己家畜化」の進んだ西欧文明を基軸として、どれだけそれに適応しているかで「知能」の高さを評価しているといえる。とすると、社会の根本的な仕組み自体が、特定の人に有利に作られている可能性がある。だから、遺伝と知能はタブーになったのかもしれない。そこに着目し、この議論を進めていけば、社会構造を根底から覆す結果になるかもしれないという確かな直感。それが、そこに踏み込むことを躊躇させる。と同時に、見たことのない世界からの手招きが我々を強く惹きつける。
「卓越したアーリア人種」というヒトラーの狂気によって生まれたホロコースト、黒人奴隷制度、女性差別――こういった歴史的な悲劇を繰り返さないためと言えば聞こえはいい。しかし、同時に、遺伝と知能という事実に正面から向き合わなかったことが、格差を拡大し続ける社会システム自体を温存することにつながった可能性はないか。そして今、世界がこの矛盾の前で悲鳴を上げている。トランプ大統領の誕生、ヨーロッパ各地での極右政党の台頭などの反知性主義とされる運動は、社会の構造的な不公正に対する直観的な抗議にも見えてくる。さて、我々はどうすべきか。パンドラの箱を開け、「人の平等」に反するかもしれない不都合な真実を徹底的に研究して、新しい公平へと向かうべきなのか。その過程に巨大な混乱が待ち受けていることを覚悟したうえで……。本書が突きつける問いは重い。

(やまぐち・まゆ ニューヨーク州弁護士)
波 2019年2月号より

蘊蓄倉庫

日本人は本当にすごいのか?

 本書で、分析され、説かれている国際調査(OECD主催のPIAACによる)によると、日本人について以下のようなことが明らかになってきます。
(1)日本人のおよそ3分の1は日本語が読めない。
(2)日本人の3分の1以上が小学校3~4年生の数的思考力しかない。
(3)パソコンを使った基本的な仕事ができる日本人は1割以下しかいない。
(4)65歳以下の日本の労働力人口のうち、3人に1人がそもそもパソコンを使えない。
 これには驚愕しますが、これを疑わしいと感じるのは、その人が知能の高い集団のなかで生活しているからに過ぎないのです。
 特に問題にならないは、それでもできる仕事がたくさんあったからなのだそうです。
 このような現実でも、世界的には、日本はトップクラスなのです。
 この不思議なカラクリと検証から、日本人とは何か? という壮大な問いに本書は鋭く迫っています。

掲載:2019年1月25日

担当編集者のひとこと

ファーストリーダーとしての至福

 編集者としての大きな楽しみは、作家が書かれる原稿を、誰よりも一番最初に読むことができることにあります。
 多くの読者と同様、個人としても橘玲さんの愛読者なのです。
 本書は、長い時間をかけて、橘さんに書下ろしていただきました。
 最初の原稿を読んだときの、衝撃の余韻はいまでも続いています。
 現代の人間社会でのタブーが次々とスリリングに提示されているとともに、橘さんの筆致やストーリーテリングに魅了されているからです。
 本書の刊行までに、原稿やゲラ(印刷所からの校正刷)で、少なくとも3~4回は読みます。そのたびに、新鮮な感動が生まれ、至福な思いになりました。
 
 50万部を突破し、新書大賞を受賞した前作『言ってはいけない―残酷すぎる真実―』に続く本書では、現代という高度な「知識社会」における、さらに口外できないタブーを、エビデンス(証拠)に基づいて、深く書かれています。
 以下にその内容から抜粋します。
=====
◎ 日本人は優れているのか、愚かなのか?
   ・日本人の3分の1が日本語が読めない!?
   ・それでも日本人は先進国でトップクラス
   ・日本人は世界一「自己家畜化」された特別な民族
   ・古代の大虐殺の果てに誕生した日本人
   ・海外で成功した日本人の知られざる秘密
   ・「日本が華僑に侵されなかった」真相
   ・縄文人と弥生人のちがいは「下戸遺伝子」
   ・「内向性」にも遺伝子が関係
   ・「置かれた場所」で咲いても不幸がある
   ・日本人は「ひ弱なラン」
   ・現代の日本で幸福を感じにくいワケ
 
◎ 人種と知能の禁断の関係
   ・「国別知能指数ランキング」の衝撃
   ・白人と黒人のIQを比較してみたら
   ・IQの高い国と低い国があるという統計
   ・知能の低い国民が多いほど、その国が混乱する
   ・科挙が東アジア系の知能を上げた?
   ・アボリジニのIQは高い
   ・欧州ではなぜ北に行くほどIQが高いのか?
   ・知能の高い人が低い人から搾取する社会
   ・男の脳は極端、女の脳は平均を求める
   ・東アジアには遺伝的に「うつ病」が多い
   ・遺伝とその国の文化は「共進化」する
 
◎ これが残酷すぎる「社会の黙示」である
   ・ネットやSNSが、実は未来の希望を塞いでいる
   ・知識社会で生き抜くための知能のハードルは上昇中
   ・知識社会に対応できるのは全体の一割
   ・リベラルな社会ほど遺伝率が上がっている
   ・高年収をもたらす性格がある
   ・恋愛、結婚、老後に遺伝が影響している
   ・年を取るほど、親に酷似する
   ・天才は難病に見舞われやすい
   ・楽観的な脳と悲観的な脳がある
   ・言語が乏しいと保守化する
   ・教育無償化で弱者はさらに苦しむ
   ・「ゲイ遺伝子」が存在する意味
   ・日本のリベラルは睾丸が小さい?
   ・やはり努力は遺伝に勝てないのか?
=====
 このような刺激的でスリリングな内容を、緻密で精確に、しかも、エンターテインメントの筆致により、物語として堪能できるのです。
 人間社会のタブーを豊富に盛り込みながら、とてもドラマチックな展開は、ノンフィクションも小説も、両方を手掛けられる橘さんでなければ、叶わないでしょう。
 ぜひ、多くの方々に一読をお薦めします。

2019/01/25

著者プロフィール

橘玲

タチバナ・アキラ

1959年生まれ。作家。2002年、金融小説『マネーロンダリング』でデビュー。『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』が三十万部超のベストセラーに。『永遠の旅行者』は第19回山本周五郎賞候補となり、『言ってはいけない 残酷すぎる真実』で2017新書大賞を受賞。

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