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ベストセラー伝説

本橋信宏/著

836円(税込)

発売日:2019/06/17

  • 新書
  • 電子書籍あり

冒険王、少年画報、「科学」と「学習」、平凡パンチ、ノストラダムスの大予言 etc. 昭和だから許された!? 裏技、秘技の数々!

「科学」と「学習」はなぜ校内で販売されていたのか。「平凡パンチ」で素人を脱がせていたのは誰だったのか。世間を震撼させた「ノストラダムスの大予言」の著者は今何を考えているのか……。60年代から70年代にかけて、青少年を熱中させた雑誌や書籍には、前代未聞の企画力や一発逆転の販売アイディアが溢れていた。その舞台裏を当時の関係者たちから丹念に聞き出した秘話満載のノンフィクション。

目次
はじめに
第1章 「冒険王」と「少年チャンピオン」
――手作り感があった付録と漫画
縁日の夜店風の雑誌/ブローカーが買い占めた紙で出版業に/泥臭く作れ/付録は社員が作っていた/みんなが面白いと言うものはつまらない/「ブラック・ジャック」で手塚治虫を再生/「サイボーグ009」を初コミックス化
第2章 「少年画報」と「まぼろし探偵」
――オリンピック直前に戦記物大ブーム
1963年の躁状態/「黄金バット」と「赤胴鈴之助」/新社屋落成にザ・ピーナッツ/表紙のモデルの江木俊夫は今/駆け出し時代の梶原一騎/撮影用の軍服はアメ横で調達
第3章 「科学」と「学習」
――みんな実験付録に夢中になった
校内で直販されていた学習雑誌/公職追放の元校長を販売部長に/実験機材を付録につけることで大成功/寝ても覚めても付録のこと/「学研のおばちゃん」の登場/「科学」から「大人の科学」へ
第4章 ポプラ社版「少年探偵シリーズ」
――学校図書室に「怪人二十面相」が置かれていた謎
あれは夢か幻か/なぜ小学校に必ず置かれていたのか/なぜポプラ社版が刊行されたのか/なぜ挿絵の少年が魅力的なのか/なぜ乱歩は洋館で創作するのか/なぜ自作の評価に厳しかったのか
第5章 「平凡パンチ」と「週刊プレイボーイ」
――ヌードグラビアが元気だった頃
ナンパが編集者の仕事/日活ともめた浅丘ルリ子のヌードイラスト/編集にも口を出すデザイナー/人生は運と縁/胸は大きく、写真は“明るく”/ヘアヌード解禁!
第6章 「豆単」と「でる単」
――受験生なら一度は使った英単語集
1700万部以上売る驚異的ロングセラー/愛すべきマスコット/元は日比谷高校のプリント/単語集にエンターテインメント性を/著者の絶大なる自信/「老舗」のリベンジ/「でる単」に感じる俳句のセンス
第7章 「新々英文解釈研究」と「古文研究法」「新釈 現代文」
――復刻までされた伝説の受験参考書
未来のエリートのための参考書/行間からにじみ出る毒舌/復員した教え子のためにひと肌脱ぐ/近代文学が入試問題に出始める/名著の意外な結末
第8章 「ノストラダムスの大予言」
――子供から大人まで世紀末を予感した
空から恐怖の大王が降ってくる/格下扱いだった光文社/「日本沈没」も担当していた/タイトルが一番大事/「サソリの勉」というあだ名
おわりに

書誌情報

読み仮名 ベストセラーデンセツ
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
雑誌から生まれた本 新潮45から生まれた本
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 224ページ
ISBN 978-4-10-610819-8
C-CODE 0295
整理番号 819
ジャンル ノンフィクション
定価 836円
電子書籍 価格 836円
電子書籍 配信開始日 2019/06/21

インタビュー/対談/エッセイ

懐かしいあの本に会いたい

本橋信宏

 夕陽の向こうに消えていった懐かしいあの本にまた会いたい。
 物書き稼業をしてきた私の一丁目一番地のテーマがある。芥川龍之介太宰治といった文豪のセピアカラー写真のキャプションに、「1人おいて」という記述が目にとまる。1人おかれてしまった人物の人生を追うのが、私が自分に課したテーマであった。そして1人おかれてしまった人物の多くが編集者であり、黒子であるべきだと表に出てこなかった、歴史に埋もれてしまいがちな編集者を特定して記録できないだろうかと思ってきた。
 ベストセラー書はどんな人物がたずさわったのか、人間の顔を浮かび上がらせたかった。私が長年抱いていたベストセラーの謎を解こうと思った。
 ポプラ社版江戸川乱歩の怪人二十面相シリーズが、なぜ小学校の図書室に置かれていたのか。1963年、小学1年生だった私が熱読していた「少年サンデー」「マガジン」「キング」といった少年漫画週刊誌でなぜ戦記物が誌面を占領したのか。学研の「科学」と「学習」はなぜ学校内で堂々と生徒に販売できたのか。100万部を超えた週刊プレイボーイ、平凡パンチの素人ヌードはだれが脱がせたのか……等々。
 これまでにも企画を立ててみたものの、忘れ去られたベストセラーを、いまこの時代に掘り起こすことに意味があるのか、果たして関係者を探せるのか、探し出しても取材は可能か、誌面化することは不可能ではないかと思われ、なかなか実現できなかった。
 連載が決まると、著者や担当編集者の消息をつかみ、取材交渉し、可能な限り多くの関係者に会い、インタビューをおこなった。時間がかかったために、連載は不定期になりあしかけ6年間におよんだ。携わった著者や編集者が消息不明だったり、地上から姿を消しているケースも多かった。
 時は待ってくれない。
 東京オリンピックの聖火ランナーの格好をした子役時代の江木俊夫が表紙になった「少年画報」1964年10月号はいまも私の記憶に留まっている。この表紙を担当した編集者がご健在で当時の話を聞けたときは、本当にこの仕事を選んでよかったと思った。
 連載をしていた掲載誌休刊の知らせが飛び込んできたのは、「ノストラダムスの大予言」著者・五島勉を取材していたときだった。
「生産性」云々の問題で休刊という残念な結果になってしまったが、私の非生産的な原稿をいつも誌面ですくい取ってくれたのも他ならぬ「新潮45」であった。
 出会った人々の貴重な証言を活字に残すことができたいま、本書が様々な人々に読まれることを心より願っている。

(もとはし・のぶひろ ノンフィクション作家)
波 2019年7月号より

著者プロフィール

本橋信宏

モトハシ・ノブヒロ

1956(昭和31)年埼玉県生れ。ノンフィクション作家。早稲田大学政治経済学部卒業。ノンフィクション・小説・エッセイ・評論と幅広い活動を行う。2019(令和元)年、『全裸監督 村西とおる伝』がNetflixでドラマ化。世界190カ国に配信され、大ヒットを記録する。他に『東京の異界 渋谷円山町』『東京最後の異界 鶯谷』『歌舞伎町アンダーグラウンド』『高田馬場アンダーグラウンド』『新橋アンダーグラウンド』『東京裏23区』『裏本時代』『AV時代』『ベストセラー伝説』など著書多数。

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