トラックドライバーにも言わせて
836円(税込)
発売日:2020/03/14
- 新書
- 電子書籍あり
幅寄せ、ノロノロ運転と急ブレーキ、路駐……。元トラックドライバーの私が深い理由を解説します。
強引な幅寄せ、ノロノロ運転と急ブレーキ、堂々と路駐……公道上でとかく悪者にされるトラック。そのドライバーも「態度が悪い」と批判されがちだが、内情を知れば、複雑な事情が見えてくる。「彼らは底辺職なのか」「休憩中エンジンを切らない理由」「プロの眠気対策」等々、これまで語られてこなかった本音を元トラックドライバーの女性ライターが徹底解説。読後、街中でトラックを見る目が一変すること必至!
書誌情報
読み仮名 | トラックドライバーニモイワセテ |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
装幀 | 新潮社装幀室/デザイン |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 224ページ |
ISBN | 978-4-10-610854-9 |
C-CODE | 0265 |
整理番号 | 854 |
ジャンル | ノンフィクション |
定価 | 836円 |
電子書籍 価格 | 836円 |
電子書籍 配信開始日 | 2020/03/20 |
インタビュー/対談/エッセイ
「送料無料」の裏で起きている様々な犠牲
「送料無料」という言葉があります。ネット通販サイトが普及する現代において当たり前に使われている表現で、顧客としてはもちろん大変嬉しいサービスの一つです。
しかし、実際送料が本当に無料なのかというと、もちろんそんなことはありません。運送業者には少ないながらも「運賃」が支払われています。
にも拘わらず、その送料・運賃がわざわざ「無料」と言い直される。過酷な労働環境や低賃金に歯を食いしばりながら日々走り続けるトラックドライバーからするとこれは、自らの労働価値の否定であり、やるせない気分になるものなのです。
実際、現役のトラックドライバーからは、「インフラを支えているというプライドだけでここまでやってきているが、送料無料という言葉はモチベーションが一気に下がる」、「直接赴いて買いに行かないのに無料とか都合よすぎる」といった声が届きます。「送料込み」、「送料弊社負担」など、他に言い方はいくらでもある中、この「無料」という言葉が使われる理由には、他でもない「顧客至上主義」、「お客様は神様である」という日本の「おもてなし文化」が背景にあります。
日本の「おもてなし文化」は、世界が認める「高サービス」の集合体からできています。日本語教師をしていた頃、学生に「日本に留学した理由」を聞くと、毎度トップ3の中に「サービスの良さ」が入っていました。しかし、こうした文化ゆえに、「客」が「神」となる傾向が強くなるのも事実。人をもてなすことは決して悪いことではないですが、「サービス=無料」が当然のカタチとして存在すると、客がクレーマーと化しやすくなり、相手のささいな失敗にも激しく反応してしまう。無料でサービスを受けているということを忘れて。
こうした「サービス=無料」というカタチが多いのが、運送業界です。
再配達や時間帯指定などがここまで正確かつ無料で受けられるのも、やはり世界広しと言えども日本ぐらいなもの。私がかつて住んでいた米国のニューヨークでは、サービスを受けるには全てにお金(=対価)が必要でした。
そんな環境から日本に戻った際にSNSで目撃した「午後5〜7時の時間帯指定で、5時1分に来るとか早すぎるだろ」という友人の怒りのツイートは、私にとって非常に衝撃的なものでした。
本書には、送料を無料とされ、「底辺職」だ「路上駐車は邪魔だ」と言われながらも走り続けるトラックドライバーの苦労や実情を、自身の経験と現役ドライバーからの聞き取りを基に分かりやすく、かつ面白真面目に描いています。普段何気なく受け取っている荷物。読了後、道路でハンドルを握るトラックドライバーや荷物を届けに来る配達員が今までと大きく違って見えるはずです。
(はしもと・あいき フリーライター)
波 2020年4月号より
薀蓄倉庫
反響続々! トラックに関する様々な「?」をドライバー目線で語ります。
前を走るとノロノロ運転、横を走ると車線を遮る、背後では追突しそうな勢いで迫ってくる――ハンドルを握る多くの人が、トラックに対して抱く「迷惑な存在」という意識。でも、ハンドルを握るトラックドライバーたちの「深い事情」を知れば、そんな見方も一変するはず。著者の橋本愛喜さんは10年間、大型トラックのハンドルを握り、繁忙期には1日に800〜1000キロ走行していました。著者だからこそ知る、トラックやドライバーを巡る諸問題の解説に、現役ドライバーはじめ物流関係者からも多くの感想が寄せられています。一読すると、街でトラックやドライバーを見る目が一変すること必至です。
掲載:2020年3月25日
著者プロフィール
橋本愛喜
ハシモト・アイキ
フリーライター。元工場経営者、日本語教師。大型自動車一種免許を取得後、トラックで二百社以上のモノづくりの現場を訪問。ブルーカラーの労働問題、災害対策、文化差異、ジェンダー、差別などに関する社会問題を中心に執筆中。各メディア出演や全国での講演活動も行う。