ヒトの壁
858円(税込)
発売日:2021/12/17
- 新書
- 電子書籍あり
たかがネコ、されどネコ。たかがヒト、されどヒト。コロナ禍の2年間、84歳の知性が考え抜いた、究極の人間論。
病気はコロナだけじゃない。そして、死は誰にでも平等にやってくる。新型コロナウィルス禍と五輪、死の淵をのぞいた自身の心筋梗塞、愛猫まるの死――ヒトという生物であると実感し、2年間の体験からあらためて問い直す。人生そのものが、不要不急ではないか。それでも生きる価値はどこにあるのか。84歳の知性が考え抜いた、究極の人間論! 「壁」シリーズ4年ぶり待望の最新刊。
書誌情報
読み仮名 | ヒトノカベ |
---|---|
シリーズ名 | 新潮新書 |
装幀 | 新潮社装幀室/デザイン |
雑誌から生まれた本 | 新潮から生まれた本 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 208ページ |
ISBN | 978-4-10-610933-1 |
C-CODE | 0240 |
整理番号 | 933 |
ジャンル | 哲学・思想 |
定価 | 858円 |
電子書籍 価格 | 858円 |
電子書籍 配信開始日 | 2021/12/17 |
薀蓄倉庫
『ヒトの壁』のはじまり方
新型コロナに関するテレビ報道では、よくコロナウイルスの電子顕微鏡写真が映されていました。多くの人が、アナウンサーの後ろに大きく映ったあのウイルスを何度も見たことでしょう。では、ウイルスがあの大きさで見える倍率の顕微鏡で、アナウンサーを見たらどのくらいの大きさになるのか? 本書の1章には、こんな意表をつく問いかけが書かれています。
養老さんの計算では、おおよそ100万メートル(1000キロメートル)の桁に達するそうです。画面では、アナウンサーとウイルスは当然のように一緒に映っていますが、そこに「現代人の盲点」が示されている、というのです。その盲点とは何か。
新型コロナ禍という世界的な事件、死の淵をのぞいたというご自身の心筋梗塞、そして愛猫まるの死という個人的な悲しい出来事を経て、養老さんの思索はどう深まったのか。これほど生物学的な「ヒト」であるという実感、そして他人の存在を意識したことがあったでしょうか。84歳の知性は、その経験から考えていきます。
掲載:2021年12月24日
担当編集者のひとこと
ん? この帯写真の養老先生はおいくつ?
ん? この帯写真の養老先生はおいくつ?
そんなふうに思われた方もいらっしゃるかもしれません。養老さんの日常を追うドキュメンタリー番組「まいにち養老先生、ときどきまる」(NHK)でお馴染みとなる「まる」が、生まれて初めて取材を受けたのが、この写真を撮影した2006年の新年でした。撮影と取材は猫写真家でもある岩田麻美子さんによるもの。その後数多くのカメラマンを困らせ、感動させたまるですが、小さい頃はこんな風にカメラに興味津々。本を手に取ると、まるの目線を受けられるように、帯に掲載させていただきました。
長年の間、養老さんがヒトと比較する自然対象として、身近に寄り添ったまるが、永遠の眠りについたのは2020年12月21日のことです。享年18。第8章「ヒト、猫を飼う」で養老さんは記します。
「まるという猫はなんだったのか。いなくなっても、距離感や関係性は変わらない。今も、いつもの縁側の窓辺にまるがいそうな気がする。頭をたたいて『ばか』と言えるのはまるだけだった。それがもう口癖だったので、もし再会できたとしたら『ばか』と言ってやろうと思う。」たかがネコ、されど唯一のネコ。大切な存在とはいったい自分の何なのか。猫一匹がさまざまなことを、教えてくれるのです。
2021/12/24
著者プロフィール
養老孟司
ヨウロウ・タケシ
1937(昭和12)年、鎌倉生れ。解剖学者。東京大学医学部卒。東京大学名誉教授。1989(平成元)年『からだの見方』でサントリー学芸賞受賞。著書に『唯脳論』『バカの壁』『手入れという思想』『遺言。』『ヒトの壁』など多数。池田清彦との共著に『ほんとうの環境問題』『正義で地球は救えない』など。