異論正論
836円(税込)
発売日:2022/06/17
- 新書
- 電子書籍あり
嫌われても、言う。長いものに巻かれず、空気を読まず、正面から政治の意味を語る論考集。
意見が対立することや面倒な議論を政治家は先送りにしてきた。経済、医療、安全保障等、すべてにおいてツケは溜まっていくばかり。次の世代がその負債を背負わされ、国が滅びていくのを見過ごして良いはずがない。ならば、どんなに煙たがられようとも、異議を唱え、信じる正論を語り続けるしかないではないか――政界きっての政策通が新型コロナ禍から国防まで直近のテーマをもとに正面から堂々と語る論考集。
2 近場の良さを知ってみませんか
3 税制も含めた経済論議が急務である
4 野党はもっと本質的な議論を挑むべきである
5 中国の「巡視船」を軽視してはならない
6 新型コロナと緊急事態条項の議論は別にすべきである
7 国民への「お願い」よりも先にやるべきことがある
8 不安ばかり煽るメディアは別の恐怖を忘れていないか
9 主権者が変わらなければ、政治も変わりません
10 外交の場では歴史の素養が求められる
11 「コロナ危機」だけに目を奪われてはいけない
12 コロナ禍で近づく総選挙では何を問うべきか
13 常態化している政治不信を看過してはならない
14 東京の家庭は所得が多いのに日本一豊かではない
15 「そもそも論」を軽視する風潮を憂慮する
16 「いっそ新党を作れ」の声に答える
17 感染症の時代になることを前提に考えよ
18 やはり地方創生しかない
19 地方創生をもとにした成長戦略を推進せよ
20 たまには思いっきり「お国自慢」をしてみよう
21 迫力の無い野党は国のためにならない
書誌情報
読み仮名 | イロンセイロン |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
装幀 | 新潮社装幀室/デザイン |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 192ページ |
ISBN | 978-4-10-610956-0 |
C-CODE | 0231 |
整理番号 | 956 |
ジャンル | ノンフィクション |
定価 | 836円 |
電子書籍 価格 | 836円 |
電子書籍 配信開始日 | 2022/06/17 |
蘊蓄倉庫
東京の家庭は貧乏だった?
「東京一極集中で豊かになり、地方は貧しくなるばかり」――こんな論調をよく目にします。たしかにさまざまなデータは「東京は豊かだ」ということを示しています。たとえば都道府県別賃金の1位は東京(374万円)。しかし、それは物事の一面に過ぎない、と石破茂元地方創生担当大臣は『異論正論』の中で指摘しています。
同書では東京の家庭の実質的な可処分所得は全国最下位という意外なデータを紹介しているのです(国交省発表)。
どういうことか。まずは家賃、光熱費、食費等々を引いていきます。さらに通勤時間をコストとして見て引いてみる。都道府県の平均的な通勤時間を算出して、それをお金に換算してみたうえで、所得から引いてみるのです。
こうして「可処分所得」から「基礎支出」を引いてさらに「通勤時間(の費用換算分)」を引くと、東京は47位になってしまうというのです。
「もちろん、これは一つの統計にすぎません。しかし、東京こそが豊かであるという、これまでの前提を考え直すには重要な視点を提示しています」
そう石破氏は述べています。
掲載:2022年6月24日
担当編集者のひとこと
「納得できる」話が「通じない」状況でいいか
本が世に出るまでには、校閲担当者が厳しくチェックすることは随分知られるようになりました。当然、この『異論正論』でもその過程を経ています。
その校閲担当者がどういう趣味か、どういう本が好きか、そういうことを私はほとんど知りません。ただ、高い確率で政治の本よりは小説などのほうが好きなのではないかなあと思っています。
その点では、何だか固い話が並んでいる本を担当してもらって、申し訳ないような気にならなくもありません。仕事だから仕方がないのですが。
ただ、この本についてゲラ(本になる前のプリントです)のやり取りをしている際に感想を聞いてみたところ、「とてもわかりやすくて納得した」と言われました。これはとても嬉しいことでした。
この本のベースは、「デイリー新潮」というネットメディアでの連載ですが、その際にもそちらの担当者から「すごく納得できた」という感想をよく貰いました。
「新型コロナ対応だけを考えるのではなく、次のパンデミックに備えるようにしないと、また同じような‟医療危機”が起きてしまう」
著者の石破茂氏はこう訴えています。誰もが納得する正論なのに、そのような議論は進んでいないようです。
本書の冒頭で、著者が同僚の議員たちによく言われた、次のような言葉を紹介しています。
「あんたの言っていることは正しいよ。私もそう思う。でも世の中の人にそれは通じない。話してもわかってもらえないよ」
つまり、正論を述べても、「通じない」「わかってもらえない」と片付けられてしまう。
普通の人が「わかりやすくて納得した」と思えるような話が、単なる「異論」扱いになってしまう。
それでいいのか、大丈夫なのか。多少なりとも政治の現状に疑問を抱いている方にはどうか本書を手に取っていただきたいと思います。
2022/06/24
著者プロフィール
石破茂
イシバ・シゲル
1957(昭和32)年生まれ、鳥取県出身。慶應義塾大学法学部卒。1986年衆議院議員に初当選。防衛大臣、農林水産大臣、地方創生・国家戦略特別区域担当大臣などを歴任。2024年、第102代内閣総理大臣就任。著書に『国防』『日本列島創生論』など。