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その対応では会社が傾く―プロが教える危機管理教室―

田中優介/著

836円(税込)

発売日:2022/10/15

  • 新書
  • 電子書籍あり

みずほシステム障害の頭取会見、香川照之のテレビ生謝罪、ユニクロのロシア事業“迷走”、どんなコメントなら挽回できた? ゼミ形式の実践書。

情報流出、クレーム、身内の犯罪、デマ――。いざ危機に直面して、取るべき対応をネット検索するのは大間違い。株価や評判が吹き飛んだ失敗事例ばかりだからだ。必要なのは、危機管理の「四つのステップ」と素早い決定だとコンサルタントは語る。「楽観役、悲観役を置いて未来予測」「相手の怒りを吸い取る話術」「社員同士の不倫を見抜くには」「怪文書を読むポイント」――ゼミ形式で学ぶ、組織ディフェンスの“強化書”。

目次
はじめに
第一章 危機管理の全体を理解する
政界、財界からスポーツ界まで
危機管理に失敗する五つの要因
(1)気が動転して思考停止に陥る/(2)事態の展開の予測を誤る/(3)多方面からの助言に惑わされる/(4)罪の重さの変化を見落とす/(5)二つのトウソウ本能に支配される
危機発生時にまず問うべき五つのポイント
成功のための二つの課題
(1)危機管理の理論を習得する/(2)他者(他社)の事例を疑似体験する
危機管理に必要な技能を磨く
(1)展開の予測力/(2)人心を掌握する話術/(3)整理して事務処理をする能力
第二章 危機管理ゼミナールI 基礎理論編
他者事例を疑似体験する/リスクマップの作り方/不正を見破る技/“怪文書”を読むポイント/クレームは六種類、対応も六種類/危機の本質を見極める四つのポイント/「二つの見えにくい罪」/情報流出には二八パターンある/“現場の嘘”に騙されてはいけない/「楽観・標準・悲観」で未来を予測する/許しを得るための四つのステップ/一〇種の悪い謝罪と五つの禁句/被害者が辿る心理を理解しておく/望ましいコメントの出し方/マスコミの「大義名分」を知っておく/地図、方位磁石、ビニール袋、鈴/良い人間関係を築く五つの能力/コミュニケーションが難しい局面で
第三章 危機管理ゼミナールII 応用編
責任の所在を定める/法律と危機管理の危うい関係/制裁をきちんと受けるメリット/アドバイザーは上下左右に必要/いいことずくめの対応は無い/コメントで状況は激変する/Q&AよりQ&Pを作成する/情報開示マニュアルの作成手順
第四章 生存競争のために必要な八つの能力
引退後に成功するプロ野球選手/〈1〉共感力/〈2〉通意力/〈3〉協働力/〈4〉親和力/〈5〉発動力/〈6〉確動力/〈7〉論理力/〈8〉創造力
付録:危機管理の要諦

書誌情報

読み仮名 ソノタイオウデハカイシャガカタムクプロガオシエルキキカンリキョウシツ
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 192ページ
ISBN 978-4-10-610970-6
C-CODE 0234
整理番号 970
ジャンル ビジネス・経済、実践経営・リーダーシップ、ビジネス実用
定価 836円
電子書籍 価格 836円
電子書籍 配信開始日 2022/10/15

インタビュー/対談/エッセイ

大企業も著名人も失敗する危機対応

田中優介

 令和四年は危機管理の年。というより、危機喚起の年と呼ぶべきかも知れません。なぜなら危機に対応したはずが逆効果、火に油を注いだ事案が連続したからです。
 トラック業界のトップを走る日野自動車が、ほぼ全車種の生産停止に追い込まれました。排ガスや燃費のデータ不正が次から次へと発覚し、国交省からエンジンの型式指定を取り消されたのです。プロモーションで内容を小出しにする手法はティーザー広告と呼ばれ、読者や視聴者の関心を高めたい時に用います。ですが、それを不祥事の対応に用いたのは失敗でした。
 自民党幹部の方々も同じでした。旧統一教会の関連団体との交流について、次々と新たな事実を認めるだけの展開となってしまったのです。
 人気絶頂だった香川照之さんも銀座のクラブでの猥褻行為が発覚した時、マスコミの取材を拒否したため厳しい続報を招くことになりました。沈没した知床遊覧船や、園児を置き去りにした川崎幼稚園の経営者も同じ。マスコミの突撃取材を無視して逃げ回ったのです。東京五輪にまつわる贈収賄容疑で逮捕された方々は、テレビカメラの前で更に呆れた言動をしました。収賄容疑を問われた高橋治之元組織委員会理事は「してない!」と記者に怒鳴ったのです。贈賄容疑を問われたKADOKAWAの角川歴彦会長(当時)も「一緒にしないで、もう!」と気色ばんで反論していました。
 なぜ、このようなダメな対応をしてしまうのか? 答えは簡単です。人は危機に遭遇すると思考停止に陥って、“闘争”と“逃走”という二つのトウソウ本能に支配されてしまうからです。
 これを防ぐためには、危機管理のノウハウを知っておくことと、いつか自分の身にも起きる覚悟で疑似体験をしておくことしかありません。危機管理は「感知・解析・解毒・再生」の四ステップが基本です。たとえばマスコミ対応に「解毒」の意識をもって臨めば、取材拒否や反論は選択肢にすら入りません。また高橋元理事や角川会長は、かつて雪印の社長が記者に「私は寝てないんだ!」と口走った事例を忘れてしまったのでしょうか。
 本書では近年の様々な危機事例を引きながら、危機管理の本質をご紹介します。ゼミ方式で、様々な危機の解決策を疑似体験できる仕立てにもなっています。登場する四人の学生には個性があります。理論的で冷静な狸タイプ、勝ち気な狐タイプ、要領の良い兎タイプ、マイペースな亀タイプ。教授の意見に流されたり、白熱したり迷走したりする様子は、企業の対策会議で広報室と法務部が対立したり、社長の顔色を窺いながら議論が進んだりする様子にふしぎとよく似ています。
 危機は突然やってきます。会社を傾かせるような対応をしないために、本書をぜひお役立てください。

(たなか・ゆうすけ 危機管理コンサルタント)
波 2022年11月号より

著者プロフィール

田中優介

タナカ・ユウスケ

1987(昭和62)年東京都生まれ。企業の危機管理コンサルタント。明治大学法学部卒業後、セイコーウオッチ株式会社入社。お客様相談室、広報部などに勤務後、株式会社リスク・ヘッジ入社。同社代表取締役社長。著書に『地雷を踏むな 大人のための危機突破術』等。

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