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今月の表紙の筆蹟は、沢木耕太郎さん。

波 2022年11月号

(毎月27日発売)

100円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2022/10/27

発売日 2022/10/27
JANコード 4910068231123
定価 100円(税込)
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阿川佐和子/やっぱり残るは食欲 第62回
【沢木耕太郎『天路の旅人』刊行記念特別エッセイ】
沢木耕太郎/空と天
山本文緒『無人島のふたり―120日以上生きなくちゃ日記―』
角田光代/寄り添われる、という読書

ローベルト・ゼーターラー、浅井晶子 訳『野原』(新潮クレスト・ブックス)
小池水音/そのようにしか語りえなかった声

辻堂ゆめ『君といた日の続き』
荻原 浩/読み返さずには、いられない。

ピストジャム『こんなにバイトして芸人つづけなあかんか』
中山功太/芸人じゃなければ100点満点

松田文登、松田崇弥『異彩を、放て。―「ヘラルボニー」が福祉×アートで世界を変える―』
楠木 建/福祉にイノベーションを起こした会社の起業物語

鈴木ともこ『山とハワイ(上・下)』
浜島直子/ハワイの魅力を新発見!

トム・ニコラス、鈴木立哉 訳『ベンチャーキャピタル全史』
鈴木立哉/スタートアップ投資は「文化」である

呉座勇一『武士とは何か』(新潮選書)
河野有理/武士の本懐とウィル・スミス

佐々木 譲『裂けた明日』
[対談]佐々木 譲×佐藤誠一郎/あなたが小説を書く前に知っておきたい二、三のこと。
【特別寄稿】
末盛千枝子/あのほほえみ――天に一人を増しぬ

バッキー井上/京都裏寺オーバー30 第四部
【短篇小説】
北村 薫/ブランデーから授業 前篇
【私の好きな新潮文庫】
鈴木啓吾/日本語と酒とちょっぴり珍味
 井上ひさし『私家版 日本語文法
 開高 健、吉行淳之介『対談 美酒について―人はなぜ酒を語るか―
 杉浦日向子『ごくらくちんみ
【今月の新潮文庫】
望月諒子『殺人者』
宇田川拓也/冷徹にして、哀しく、凜々しき殺人者
【コラム】
アンナ・レンブケ、恩蔵絢子 訳『ドーパミン中毒』(新潮新書)
茂木健一郎/「ドーパミンの沼」から「人間」を取り戻す

田中優介『その対応では会社が傾く―プロが教える危機管理教室―』(新潮新書)
田中優介/大企業も著名人も失敗する危機対応

三宅香帆/物語のふちでおしゃべり 第8回

三枝昴之・小澤 實/掌のうた

崎山蒼志/ふと、新世界と繋がって 第2回

[とんぼの本]編集室だより
【新連載】
橋本 直(銀シャリ)/細かいところが気になりすぎて
【連載】
近藤ようこ 原作・梨木香歩/家守綺譚 第2回
エリイ(Chim↑Pom from Smappa!Group)/生時記 第3回
南沢奈央 イラスト・黒田硫黄/今日も寄席に行きたくなって 第35回
高嶋政伸/おつむの良い子は長居しない 第7回
二宮敦人/ぼくらは人間修行中 第24回
伊与原 新/翠雨の人 第11回
春画ール/春画の穴 第13回
川本三郎/荷風の昭和 第54回
編輯後記 いま話題の本 新刊案内 編集長から

立ち読み

編集長から

今月の表紙の筆蹟は、沢木耕太郎さん。

◎この夏、平松洋子さんの『おあげさん』と太田和彦さんの『75歳、油揚がある』が立て続けに出ました。油揚げ、凄い人気。僕もあのはんなりして艶やかな狐色の食物に目がなく、字面を見るだけで興奮してくるので、とりわけ全篇油揚げへの愛を告白し続ける平松本は読み進めるのに難儀しました。太田さんが今はない下北沢「両花」で嬉しそうに焼き油揚げ(三七〇円)をつついているお姿を目撃したこともあります。
◎油揚げ界のツートップ(きつねうどんと稲荷寿司)に話を絞りますが、子供心を刺激したのは『巨人の星』の伴宙太が花形満の前で豪快に啜る「大阪のけつねうどん」。ここの描き方や、数年後に書かれた丸谷才一さんの食エッセイで「アブラゲを甘く煮たやつがはいつてゐて」と説明してあるのを見ると、1970年頃の東京ではきつねうどん(明治後半に大阪で発祥)はまだ一般的でなかったのかなと思えます(古川緑波ロッパの戦後の随筆でも「油揚げの入った奴。無論関西から来たもの」と説明的)。尤もこれには強力な反証があって、城山三郎さん(『落日燃ゆ』)によると広田弘毅は外相時代(昭和十年前後)、「外務省での昼食は、きつねうどんときまっていた」。
◎広田同様、昼はうどんの男が同好の女性と再婚するのが田辺聖子さん「慕情きつねうどん」(『春情蛸の足』所収)なら、極上の手作りおいなりが発端になるのは柚木麻子さん「恋する稲荷寿司」(『あまからカルテット』所収)。椀物や甘い物等も出す稲荷寿司の屋台(どれも旨い)の親父が素的なのが宮部みゆきさんの時代小説『初ものがたり』。『二十四の瞳』(あの十二杯のきつねうどん!)もあった! ついでに吉行エイスケの詩の冒頭は「ある夜娼婦がおいなりさんなでたらおいなりさん笑がもれた」。うーむ、だれか油揚げ文学の名作撰アンソロジーを編んでくれませんか(僕は興奮しすぎて無理)。
▽次号の刊行は十一月二十八日です。

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。