フィリピンパブ嬢の経済学
902円(税込)
発売日:2023/06/19
- 新書
- 電子書籍あり
初めての育児、就職と転職、家族への送金、綱渡りの家計……。「大丈夫。なんとかなるよ」。『フィリピンパブ嬢の社会学』映画化!
フィリピンパブ嬢との出会いと交際は、すったもんだの末に見事ゴールイン。これで平穏な日々が訪れるかと思いきや、妻が妊娠。新たな生命の誕生とともに二人の人生は新たな局面に突入する。初めての育児、言葉の壁、親族縁者の無心と綱渡りの家計……それでも「大丈夫、何とかなるよ」。異文化の中で奮闘する妻と支える夫の運命は? 話題作『フィリピンパブ嬢の社会学』に続く、抱腹絶倒のドキュメント第二弾!!
書誌情報
読み仮名 | フィリピンパブジョウノケイザイガク |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
装幀 | 新潮社装幀室/デザイン |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 240ページ |
ISBN | 978-4-10-611002-3 |
C-CODE | 0236 |
整理番号 | 1002 |
ジャンル | 社会学 |
定価 | 902円 |
電子書籍 価格 | 902円 |
電子書籍 配信開始日 | 2023/06/19 |
インタビュー/対談/エッセイ
外国人妻との生活で見えてくること
2015年10月、フィリピンパブで出会った、フィリピン人女性ミカと結婚した。
交際当初、フィリピンパブ嬢との交際に周囲は大反対。ミカも奴隷扱いともいえる契約を暴力団関係者と結ばされ、低賃金に加え、日常生活も厳しく管理され、自由は全く無い状況での交際だった。
様々な困難を乗り越えながら、結婚するまでの過程は前著『フィリピンパブ嬢の社会学』で詳しく書いたので、そちらを読んでいただきたい。
無事に結婚した僕たちだが、安定した生活とは程遠かった。妻はフィリピンパブ嬢。夫である僕はたまにある日雇い現場仕事やアルバイトをするだけ。収入の殆どは妻に頼っていた。
しかし、転機が訪れる。子供が産まれたのだ。僕たち夫婦は、ついに生活について向き合う時が来た。
外国人であるミカは、日本で子供を産み、育てながらも、日本語の問題や支援制度への繋がり方、母国の家族との関係、送金などの問題に直面する。
外国人が日本に暮らしているのが当たり前になった今、メディアやSNSで取り上げられる彼らの姿は「可哀想」や「たくましく生きる」「迷惑」といった側面ばかりが強調されがちだ。
本書ではそんな「特別」な姿ではなく、外からの取材では見えてこない、外国人妻と一緒に日々生活しているからこそわかる「日常」の部分を書いた。
フィリピン人妻ミカを傍で見ていると、外国人だから困ることもあれば、外国人だからこそ気づく日本の良さもある。
衣食住など、生活する上で必要なものは日本人でも外国人でも同じだ。子育てや日々の生活の中で、同じように悩み、喜び、幸せを感じる。
人生は計画通りにいかない。出稼ぎ目的で来日し、数年したら母国に帰ろうと考えていた外国人の多くも、日本で生活の基盤を築き、幸せに日本で生活を続けることを望むようになる。
また、我が子のように日本人とフィリピン人の親を持つフィリピンハーフも既に多くいる。日本とフィリピンにルーツを持ち育った彼らに、幼少期からを振り返ってもらい、様々な話を聞いた。
貧しい幼少期を過ごした人。日本国籍を持ちながらフィリピンで育ち、日本に「出稼ぎ」に来た人。両親がフィリピン人で本当は日本人になる要件を満たさなかったが「日本人」として産まれてきた人。自身の見た目や名前で苦しみながらも、前向きに生きる方法を見つけた人。
フィリピンハーフとして生きてきた彼らの姿は、真剣に外国人との共生を考えなければならないということを、日本社会に突き付ける。
僕たち家族のドタバタ劇を楽しんでもらいながら、日本に住む外国人の「日常」を知るきっかけとなってくれれば、これほど嬉しいことはない。
(なかしま・こうしょう 文筆家)
波 2023年7月号より
蘊蓄倉庫
大人になった「フィリピンハーフ」様々なパターン
この本の主人公である中島さんとフィリピン人妻のミカさんの子供は日本人とフィリピン人のハーフになるわけですが、本の中では何人かの20代、30代の「フィリピンハーフ」にインタビューしています。ただ、「フィリピンハーフ」とはいえ、そのパターンは様々。日本人父とフィリピン人母を親に持つパターンは多いですが、両親の離婚で生活が不安定になったり、フィリピンで育った後に日本行きを思い立ち、日本語がわからず苦労するケース。実の両親ともにフィリピン人だが、日本に滞在するために母親が日本人男性と結婚し、その後も子供が親の偽装結婚に関する不安を抱え続けるケース。それぞれ、様々な困難があるようです。
掲載:2023年6月23日
担当編集者のひとこと
「慣れてきたら楽しかったよ」
妻のミカさんは出産、子育てで奮闘します。日本人だって簡単にはいかないのに、何しろ関係書類の中でタガログ語で書いてあるのは母子手帳だけなのですから、夫や義母の手助けがなければ最初は何もわかりません。行政はいろいろな情報を出していても、それが外国人に届いているのかどうかは相当怪しいわけです。その上、幼稚園に入ると手提げ袋、靴入れ、給食袋などは全部手作りで、持ち物すべてに名前を入れなければなりません。大変です。ただミカさんは最初は戸惑うものの「慣れてきたら楽しかったよ」と順応していきます。本のオビにあるように、何とかなるものなんですねえ。
2023/06/23
著者プロフィール
中島弘象
ナカシマ・コウショウ
1989(平成元)年、愛知県春日井市生まれ。中部大学大学院修了(国際関係学専攻)。会社員として勤務するかたわら、名古屋市のフィリピンパブを中心に取材・執筆等を行う。『フィリピンパブ嬢の社会学』は映画化が決定された。