今月の表紙の筆蹟は、加藤シゲアキさん。
波 2023年7月号
(毎月27日発売)
発売日 | 2023/06/27 |
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JANコード | 4910068230737 |
定価 | 100円(税込) |
筒井康隆/美食日記ふたたび 第5回
阿川佐和子/やっぱり残るは食欲 第70回
【加藤シゲアキ『オルタネート』文庫化記念特集】
[著者インタビュー]加藤シゲアキ/加藤シゲアキの現在地
福田里香/悲しい時に何食べる? 「フード小説」としての『オルタネート』
珠川こおり/高校生にとっての養分 「SNS小説」としての『オルタネート』
三浦しをん『墨のゆらめき』
酒井順子/文字を通じて歩み寄る、「書く男」と「見る男」
乃南アサ『雫の街―家裁調査官・庵原かのん―』
池上冬樹/「生きる価値がある」ことをかのんが教えてくれる
鈴木涼美『浮き身』
桐野夏生/虚空に漂えば
高橋弘希『叩く』
佐藤厚志/あなたかもしれない
新川帆立『縁切り上等!―離婚弁護士 松岡紬の事件ファイル―』
藤田香織/「明日」のために「今」読まれたい物語
マギー・オファーレル、小竹由美子 訳『ルクレツィアの肖像』(新潮クレスト・ブックス)
南沢奈央/一枚の肖像画の、その先に
春画ール『春画の穴―あなたの知らない「奥の奥」―』
新井見枝香/春画の中にストリップ劇場の影を見る
武石勝義『神獣夢望伝』
池澤春菜/有望の作家、世に出づ
中西智佐乃『狭間の者たちへ』
古川真人/支配の核を射抜く目
益田ミリ『ツユクサナツコの一生』
津村記久子/新しい実感のその向こう
オバック 絵、たけむらたけし 文『アイラブみー じぶんをたいせつにするえほん』
てぃ先生/自分のためのシャンパンを注ごう
新城道彦『朝鮮半島の歴史―政争と外患の六百年―』(新潮選書)
小此木政夫/朝鮮独特の「政治の磁場」
【特別企画】
高橋洋二/極私的「タモリ倶楽部」回顧録 中篇
【短篇小説】
北村 薫/手品から蜂
【私の好きな新潮文庫】
青木祐子/ひとりの夜に読みたい小説
星 新一『ようこそ地球さん』
朱野帰子『わたし、定時で帰ります。』
太宰 治『人間失格』
【今月の新潮文庫】
早見 俊『ふたりの本多―家康を支えた忠勝と正信―』
末國善己/見事に噛み合う正信の知と忠勝の勇
【コラム】
[とんぼの本]編集室だより
中島弘象『フィリピンパブ嬢の経済学』(新潮新書)
中島弘象/外国人妻との生活で見えてくること
三宅香帆/物語のふちでおしゃべり 第16回
三枝昴之・小澤 實/掌のうた
崎山蒼志/ふと、新世界と繋がって 第10回
【連載】
エリイ(Chim↑Pom from Smappa!Group)/生時記 第11回
近藤ようこ 原作・梨木香歩/家守綺譚 第10回
大木 毅/指揮官と参謀たちの太平洋戦争 第8回
橋本 直(銀シャリ)/細かいところが気になりすぎて 第9回
二宮敦人/ぼくらは人間修行中 第28回
高嶋政伸/おつむの良い子は長居しない 第10回
伊与原 新/翠雨の人 第18回
川本三郎/荷風の昭和 第62回
編輯後記 いま話題の本 新刊案内 編集長から
立ち読み
編集長から
今月の表紙の筆蹟は、加藤シゲアキさん。
◎先月号に「四畳半襖の下張」を掲載しました。これを掲載した雑誌(「面白半分」)が押収され、編集長(野坂昭如氏)と発行人(佐藤嘉尚氏)が起訴されたのは丁度50年前の事。
◎別冊太陽『発禁本』によれば、「××××」(伏字の方が猥褻ですね)の四文字(ひらがな)が解禁されたのは1949年刊のメイラー『裸者と死者』(山西英一訳)から。この戦争小説は一旦猥褻文書として摘発されたものの、CIE(民間情報教育局)が〈摘発は民主主義に反する〉旨の声明を出すと、忽ち撤回されました(おお、配給された自由!)。もっとも占領軍はイギリス文学の旧作には無関心だったのか、『裸者~』直後のロレンス『チャタレイ夫人の戀人』の摘発は看過され、おかげで用心深い新潮社はミラー『セクサス』をホットパートは原文のまま刊行します。「彼女はすこしも疲れていないと言い、getting down from the table and solicitously squeezing my cock...」(大久保康雄訳)。
◎その後も猥褻か否かをめぐる攻防は続き、摘発まではされずとも、編集長が警視庁に呼び出されるのは初中終で、「小説新潮」の編集長(川野黎子氏)が行った時は「ムチムチした白い太腿」という文章に赤線が引かれていた由。生前、団鬼六さんに伺うと「まだ警視庁からダメだと言われていない新しい表現を考え出しましたよ。北原武夫さんは『若草のような繊毛』とか『双臀』とかね。『樹液』『肉芽』なんかは僕の造語じゃないかな。今考えるとお笑い草だけど、あの頃は文字だけで興奮したから、桜田門の気持もわかる」。
◎十何年か前、さる巨匠お二人から、新作が猥褻だと摘発されないか愉しみだ、と告白されました。2作とも自負に相応しい内容で僕は劣情を刺激されたのに、共に桜田門へ呼ばれなかったのは頗る残念でしたねえ。
▽次号の刊行は七月二十七日です。
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雑誌から生まれた本
波とは?
1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。
創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。
創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。
現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。