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国家は巨大ITに勝てるのか

小林泰明/著

924円(税込)

発売日:2023/09/19

  • 新書
  • 電子書籍あり

ロビー活動に年間82億円。AI規制が緩い日本に「照準」。ルール変更で判決を骨抜きに。知られざる攻防の全貌。

グーグル、アップル、メタ、アマゾン、マイクロソフト――便利で快適なサービスを提供し続ける巨大IT企業は、グローバルビジネスの覇者だ。しかし近年、市場の独占と秘密主義を危惧する国々が、国家権力をもって押さえ込みへと舵を切りはじめた。最先端のデジタル技術と膨大なマネー、エリート人材と強力な訴訟能力を備えたビッグテックと、アメリカや日本など各国政府との知られざる攻防を徹底的にえぐり出す。

目次
はじめに
第1章 日本政府、GAFAに挑む
アップルvs日本政府/「規制なんてできるのか」/秘密会議と鈍い公取/第1ラウンド:有識者会議vsGAFA/第2ラウンド:自民党vsGAFA
第2章 「4割下げられる」菅発言の裏側
iPhone人気と異常な値引き合戦/容易に崩せない業界ピラミッド
第3章 「問題児」フェイスブックの野望
メタバース支配を狙うザッカーバーグの賭け/国際金融マフィアに潰されたリブラ構想/「人間を登録する電話帳」/「いいね!」履歴で人格がわかる/対立を煽る「壊れたインセンティブシステム」/若者のIT依存とシリコンバレーの欺瞞/「キラー買収」を反トラスト法違反で提訴
第4章 「最強企業」アップルの政治力と訴訟力
10年後も変わらない「神」の威光/創業のカリスマから卓越した経営者へ/最強ビジネスと秘密主義/最強企業トップの巧みな政治力/不発に終わった米議会の追及vsクックCEO/深すぎる中国依存、試される政治力/ゲーム企業の反旗と法廷闘争/訴訟から見えた最強企業の凄み/米連邦地裁vsアップルの最終勝者
第5章 「テクノロジー・ゴリラ」アマゾンの支配力
ネット通販市場のシェアは4割/出店者の身を削る過酷な低価格競争/「出店者は奴隷みたいなもの」/米議会vs創業者ベゾス/「国防クラウド」で見せたアマゾンの凄み/「人間として扱って」倉庫作業員の叫び/公取vsアマゾン頭脳集団
第6章 「ネットの覇者」グーグルの慢心
2019年、米司法省が動いた/広い支配領域と高いシェア/独禁法違反で全面対決へ/オバマとの蜜月、トランプとの対立/投手、打者、審判の三役をこなす/ピチャイCEOへの議会の追及/グーグルを去った人々の警鐘
第7章 バイデン政権vs巨大IT企業
「アマゾンの天敵」独禁トップに/アマゾン、フェイスブックが宣戦布告/シカゴ学派vs新ブランダイス学派/ロビー攻勢で潰された巨大IT規制法案/「グーグルの敵」カンターの反撃/バイデン大統領の「反巨大IT」宣言
第8章 GAFAの「政治とカネ」研究
ロビーマネーを追う/アマゾン:「花への水やり」プログラム/グーグル:独禁当局トップは元ロビイスト/アップル:巧妙なアップストア規制阻止/潤沢なマネーでロビー活動を拡大/学界とのただならぬ関係/「巨大ITと反トラストに関する10の神話」/「トランプ嫌い」の政治献金
第9章 マスクの手に握られるツイッターの「言論」
マスク、ツイッターをこき下ろす/流出した内部文書ツイッターファイル/トランプ復活、広告停止で大混乱
第10章 GAFAの苦境、チャットGPTの衝撃
人員削減の嵐が意味するもの/チャットGPTの衝撃、未来への焦り
第11章 GAFAと国家の未来図
「ナショナル・チャンピオン企業」と化す巨大IT/AIが次の主戦場に?/危険な「テクノポーラーの世界」/GAFAの10年後生存確率
おわりに
主要参考文献

書誌情報

読み仮名 コッカハキョダイアイティーニカテルノカ
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 256ページ
ISBN 978-4-10-611012-2
C-CODE 0233
整理番号 1012
ジャンル IT
定価 924円
電子書籍 価格 924円
電子書籍 配信開始日 2023/09/19

インタビュー/対談/エッセイ

国家vs巨大IT企業 新旧・巨大権力の知られざる死闘

小林泰明

 今、国家と巨大IT企業が静かに、しかし激しい攻防を繰り広げている。そう聞いてぴんと来る人は多くないかもしれない。GAFAと呼ばれる巨大ITの取材を始めた7年前の私がそうだった。あらゆることを調べられる検索サービス。精巧に作られた美しいiPhone。世界の人を結びつけるSNS。ほしいものがすぐに手に入るネット通販。その便利さに感謝こそすれ、そこで問題が起きているなどとは思いもよらなかった。
 しかし、取材を進めると、彼らが消費者にみせる顔はほんの一部にすぎないことに気づいた。膨大な個人データをもとに多額の金を生み出す強力な広告システム。アプリやiPhoneの取引先にみせる傲慢な姿勢。ネット通販の出店者から少しでも多くの金を搾り取ろうとする巧妙なビジネスモデル。そして、自らに刃向かう者はロビイストやスター弁護士を雇い、容赦なくたたき潰す。取材から浮かび上がってきた彼らの「裏の顔」は華やかなハイテク企業とはほど遠かった。
 当初は、そうした行為を問題視する公正取引委員会、経済産業省など日本政府と巨大ITの「局地戦」を追うだけだった。しかし、その後、米国政府までもが巨大ITの取り締まりに舵を切る。
 本書で描く最強国家・米国と、最強企業群・GAFAの戦いは壮絶だ。米政府が反トラスト法(独占禁止法)違反で会社分割を求めれば、巨大IT側は規制当局のトップを自社の調査から引きずり下ろそうとする。米議会に提出された規制法案に巨大IT側が凄まじいロビー攻勢をかけ、廃案に追い込んだこともあった。
 そうした動きを追いながら、いつしか「私は今、国家vs巨大ITという全く新しい戦いを目撃しているのではないか」と思うようになった。
 自ら創造したデジタル空間を統べる巨大ITはまるで世界規模の領土をもつ国家のようだ。国家の目の及ばない世界で、彼らは住む者のルールを決め、意に沿わない者は追い出す。世界トップ級のエリート人材という「選民」が優れたテクノロジーを開発し、多くの金を生み出すビジネスモデルを作る。その強大なヒト、モノ、カネの前では、国家もかすんでしまう。
 一方の国家は「独占禁止」を旗印に巨大ITを押さえ込もうとしている。様々な理屈はあるだろう。だが私には、自らの存在を脅かす者への「恐れ」が国家を取り締まりに突き動かしているようにみえる。国の支配領域を超えて拡大し続ける「超国家」と、それを封じ込めようとする国家。私たちが今、目にしているのは新旧の巨大権力による勢力争いなのだと思う。
 GAFAの影響力は経済のみならず、政治や軍事、司法、学界にも及ぶ。国家をも恐れさせる強大な力。果たして国家は巨大ITに勝てるのか。

(こばやし・やすあき 読売新聞記者)
波 2023年10月号より

著者プロフィール

小林泰明

コバヤシ・ヤスアキ

1977(昭和52)年生まれ。エネルギー専門紙記者を経て、2005年、読売新聞社入社。2015~2016年、米ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)客員研究員。2019年からニューヨーク特派員、2022年に帰国。東京本社経済部所属。著書に『死刑のための殺人』等。

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