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引きこもりの7割は自立できる

二神能基/著 、久世芽亜里/著

858円(税込)

発売日:2023/10/18

  • 新書
  • 電子書籍あり

「まずは親子の対話から」「信じて待つ」「本人の意思を尊重」→何も変わりません! 問題解決のための「最終回答」。

「まずは親子の対話から」なんて信じてはいけない。引きこもりは、親子が理解し合って解決することもあれば、理解し合えないと分かって解決することもある。家族をひらき、第三者を介入させよ。「解決なんて無理」と諦めるなかれ。一歩踏み込む「おせっかいな支援」をすれば、ほとんどの引きこもりは自立可能なのだ――。支援活動を30年続けてきた団体創設者による、引きこもり問題への最終回答。

目次
まえがき
第1章 子どもを犯罪者にしないために
農林水産省元次官の息子殺し/問題を家族で抱え込むな/母数が増え、引きこもりの犯罪も増えた/「どうせ解決なんて無理」というニヒリズム/考えるよりも行動を
第2章 家族をひらく
事例(1)/「引きこもりは家族の問題」という世論/家に抱え込んだら長期化まっしぐら/親はひとつの事例しか知らない/親は親。支援者にはなれない/親がまず子離れせよ/地元から離すことの効果/家の外では子どもは違う顔を見せる/親の考える「理由」はズレている/第三者を家に入れる/第三者に子どもを委ねる/事例(2)/事例(3)
第3章 「信じて待つ」は3年まで
30年言われ続ける「信じて待ちましょう」/いったい何年待つべきなのか/抜け出した人は3年以内が大半/ニュースタートの支援はおよそ2年/3年経つと「引きこもりの心と体」になる/引きこもりとゲームの関係/居たくて家に居るわけじゃない/最初の1年の対応を間違えると家は居場所になれない/親も引きこもりに慣れていく/いつもの親子の会話パターンが出来上がる/3年で引きこもりが「固定化」する/3年過ぎたら第三者の支援へ/支援はどんどん変えていい/「断らない支援」というトラップ/つながり続けることが自己目的化していないか/リスクのない選択肢はない/待つことにもリスクがある/「信じて待つ」から「信じて背中を押す」へ/8050問題を前にしても「引きこもりでいい」と言えるのか/事例(4)/事例(5)/事例(6)
第4章 「まず親子の対話から」という誤解
支援の主流は「まず対話を」/親の相談を受けるのは次善の策でしかない/厚生労働省「ひきこもり支援ガイドライン」の中身/親子の対話のステップで止まっている人が大半/世代による価値観の違い/親だからこそ言えないことがある/一度失った信頼はなかなか取り戻せない/心配そうな親の目線に縛られる/実はコミュニケーション能力がないのは親の方/嫌われたくなくて本音が言えない親/「本人の意思尊重」の落とし穴/子どもの奴隷になったら対話は不可能/「親子だから分かり合える」は幻想/むしろ家族以外との対話を目指す/事例(7)/事例(8)
第5章 引きこもり支援のゴールは自立である
自立に繋がらない支援/「引きこもりでもいい」では救われない/安易に病院に連れて行かない/居場所から次に行かない危険性/勉強を逃げ道にしてしまう/「普通になりたい」と言う若者たち/自立できたら自信が持てる/働けと言ってはいけない/「どんな仕事がやりたいの?」と聞かない/実家に居たままで働いても長続きしない/就労支援より「幸せ支援」を/自立できないなら家族信託や死後事務委任契約を/「自立できる」と信じて背中を押す/事例(9)/事例(10)/事例(11)/事例(12)
第6章 一番イヤでない仕事で食い扶持を稼げ
「失われた30年」とぴったり重なる/欲しいものがない/やりたいこともない/下流志向/「役に立っている」と思えれば頑張れる/「一番イヤでない仕事で食い扶持を稼げ」/「お国のため」にも自立を/今後は引きこもりすら減っていく

書誌情報

読み仮名 ヒキコモリノナナワリハジリツデキル
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 208ページ
ISBN 978-4-10-611015-3
C-CODE 0236
整理番号 1015
ジャンル 社会学、思想・社会
定価 858円
電子書籍 価格 858円
電子書籍 配信開始日 2023/10/18

インタビュー/対談/エッセイ

「もっと早く押し出してほしかった」

久世芽亜里

 圭一くんは、専門学校を卒業し4年ほど働いていたものの、退職から5年間引きこもっていました。「後ろめたさもあって、自分が情けなくて」と圭一くんは親と話をしなくなり、親も「傷つけてはいけない」という気持ちで何かを聞くことは避け、日常会話もなくなっていきました。
 親の依頼でニュースタートの男性スタッフが訪問すると、圭一くんは最初から普通に話をしてくれました。何度も訪問するうちに、楽しく雑談できるようになりました。3ヶ月の訪問の後、ニュースタートの寮へやって来ます。2年弱の寮生活の中で、資格を取り、仕事を見つけ、一人暮らしを始め、無事に圭一くんは自立しました。
 圭一くんに、引きこもっていた当時、親にしてほしかったことを尋ねると、「今思えば、もっと早く押し出してほしかった」と答えました――。

「引きこもり」という言葉から連想されるのは、長期化し、中高年になり、いわゆる8050問題にまで行きつく、時には事件になるといった、暗いイメージでしょう。何とか引きこもり状態からは脱しても、親の経済援助などが必要で、自立は程遠いと思われている印象です。
 ですが、私たちがこの約30年の支援活動の中で出会ってきた引きこもりの若者は、大半が「自立できる人」でした。実際に7割以上が、年によっては実に9割もの人が、自立していきました。
 前著『コンビニは通える引きこもりたち』で説明しましたが、引きこもりは単なる状態像で、その詳細は本当に多様です。その多様さゆえに適切な支援につながっておらず、本来なら自立できる人の多くが自立できていない、結果、「引きこもりは自立できない」というイメージになり、ますます自立が遠のくという、悪循環に陥っているように思います。
 本書には、圭一くんの他に、何人もの実例を載せています。まずは多くの引きこもりの人が自立できている事実を知ってください。
 そして実例では、それぞれがどんな支援で引きこもりを抜け出したのかも書いてあります。「『信じて待つ』は3年まで」「『まず親子の対話から』という誤解」など、私たちが約30年の経験から得た支援の考え方を説明し、各テーマに合わせた実例を複数選びました。
 前著『コンビニは通える引きこもりたち』が「引きこもりに関する本」であるのに対し、本書は「引きこもり支援に関する本」です。
 経験を発信する当事者も増え、単に引きこもりを理解する段階は終わったと言えるでしょう。次はそういった方々に具体的に何をすればいいのか、支援の中身を考える段階です。本書がその参考になれば幸いです。

(くぜ・めあり 認定NPO法人ニュースタート事務局スタッフ)
波 2023年11月号より

蘊蓄倉庫

「役立ち感」を刺激せよ

 30年前から若者支援を続ける著者たちには、時に想像の上を行くような相談事例が持ち込まれますが、20年余り前にはある親からこんな相談を受けたそうです。引きこもっていた息子が神戸の震災を見て、突然バイクに乗って現地のボランティアに行った。半年頑張ってきたが、帰ってきたらまた3年間も引きこもってしまった。どうすればいいか、と。結局、この息子さんは著者たちのNPO法人が運営する寮で一年間生活し、その後老人介護の仕事について、自立に至ったそうです。
 彼に必要だったのは、お金を稼ぐことよりも、「ありがとう」という言葉によって承認欲求が満たされることの方だったようです。著者はこのケースを一つの例として挙げながら、「引きこもりになるような子たちは、『お金』よりも何らかの『役立ち感』にうったえた方が頑張れる」と語っています。

掲載:2023年10月25日

担当編集者のひとこと

「まずは親子の対話から」という誤解

 引きこもりの数は近年、激増しています。2019年の調査で115万人とされたのが2022年の調査では推定146万人。この間、日本もコロナ禍に見舞われ、引きこもりがむしろ推奨されていたという事情もありますが、それにしても急な増え方です。
 あまりにもありふれた現象となって、引きこもりの問題を「諦めてしまう」ケースも増えてきました。引きこもりは、自立はおろか、その状態からの脱出すら難しいイメージが定着してきています。

 しかし、30年にわたって若者支援、引きこもり支援を行ってきた著者(二神能基さん、久世芽亜里さん)は、「ほとんどの引きこもりは自立可能」と言います(全員、と言わないのは、本当に病気や発達障害の人もいるため)。
 にも関わらず、なぜ「支援しても無駄」という諦めムードが蔓延してしまうのか。そこには「支援のミスマッチ」があります。

 現在の引きこもり支援の主流は「まず親子の対話を」「信じて待ってあげて」「本人の意思を尊重して」というスタンスです。
 しかし、こうしたスタンスでは、引きこもり問題を本当に解決することは困難です。引きこもりは、親子が理解し合って解決することもあれば、子どもが「この親とは理解し合えない」と分かって諦めて出て行くことで解決することもある。考えてみれば当たり前。普通の家族だって、親子が本音で対話しているケースはそんなに多くないでしょう。むしろ、親子だからこそ本音は話しにくい、というのが通常の感覚ではないでしょうか。

「本人の意思を尊重して」「信じて待つ」。これも微妙なやり方です。そもそも、引きこもりには「意思がない」人も多い。親の干渉が面倒くさくて適当な理由や言い訳をでっち上げているケースも多いのですが、何であれ希望にすがりたい親は、その片言隻句に一喜一憂してしまう。そうして、信じて待っている間に、時間だけがズルズルと過ぎていく。本人の意思を尊重していても、事態は簡単に動きません。
 親は支援者にはなれない。だからこそ、家族をひらき、第三者を介入させ、「一歩踏み込む」支援に踏み切ることが大事なのです。

 著者たちの団体「ニュースタート事務局」は、「レンタルお姉さん」「レンタルお兄さん」という、引きこもり当事者に直接働きかける支援活動をしています。こうした活動によって、7、8割の引きこもりは、自立に至ると言います。これは、他の支援団体と比べても、圧倒的に高い実績です。

 現在は「引きこもりも個性」なんて、言い方もされますが、著者たちによると、抜け出したあとに「引きこもりで本当に良かった」と言い切った人は今までに一人もいない。やはり、引きこもりはそこから脱すべき「通常ではない状態」なのです。引きこもり支援の最大のゴールは自立なのです。そのために何をすべきなのか、それを詳述したのが本書『引きこもりの7割は自立できる』です。

 今年80歳になった二神能基さんは、本書を「遺言として書いた」と記しています。この本は主として「当事者」を読者に想定しているので、全国146万人の引きこもり、及びその関係者に一冊でも多く届いて欲しいですが、引きこもり問題に興味を持つ人が読んでも、教えられるところが多くあると思います。ご興味があれば、ぜひご一読ください。

2023/10/25

著者プロフィール

二神能基

フタガミ・ノウキ

1943年生まれ。早稲田大学政経学部在学中から塾を経営。1990年代より若者支援の活動に着手し、1999年に「ニュースタート事務局」を創設。著書に『希望のニート』『暴力は親に向かう』等。

久世芽亜里

クゼ・メアリ

認定NPO法人「ニュースタート事務局」スタッフ。2023年10月現在は主に親の相談、事務、広報などを担当している。青山学院大学理工学部卒。著書に『コンビニは通える引きこもりたち』。

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