今月の表紙の筆蹟は、筒井康隆さん。画は、とり・みきさん。
波 2023年11月号
(毎月27日発売)
発売日 | 2023/10/27 |
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JANコード | 4910068231130 |
定価 | 100円(税込) |
筒井康隆/心臓と血管 シリーズ第9回
阿川佐和子/やっぱり残るは食欲 第74回
【小川 哲『君が手にするはずだった黄金について』刊行記念】
[対談]小川 哲×カズレーザー/才能なんて、ないほうがいい
【南沢奈央『今日も寄席に行きたくなって』刊行記念】
[対談]南沢奈央×蝶花楼桃花/明日も寄席が楽しくて 前編
筒井康隆『カーテンコール』
小川 哲/「レイト・ワーク」の先までも
キャスリン・ペイジ・ハーデン、青木 薫 訳『遺伝と平等―人生の成り行きは変えられる―』
平野啓一郎/また新たな基礎的教養書の登場
苅部 直『小林秀雄の謎を解く―『考へるヒント』の精神史―』(新潮選書)
片山杜秀/なぜ本居宣長を頼んだか
乙川優三郎『クニオ・バンプルーセン』
乙川優三郎/あやしい胸底のあれこれ
甫木元 空『はだかのゆめ』
前野健太/はだかのこえ
大塚ひかり『嫉妬と階級の『源氏物語』』(新潮選書)
山崎ナオコーラ/紫式部の作家論
岸 政彦、齋藤直子 イラスト『にがにが日記』
朝井まかて/泣いてもいいし、笑ってもいい
谷口桂子『吉村昭と津村節子―波瀾万丈おしどり夫婦―』
川本三郎/家庭という共通の根から咲かせたそれぞれの花
芦花公園『食べると死ぬ花』
三津田信三/最大の伏線は読者の目の前にある
谷 瑞恵『小公女たちのしあわせレシピ』
白川紺子/変化を強いない救済の物語
武田綾乃『可哀想な蠅』
齋藤明里/心の裏にある、気づきたくなかった感情
安野光雅、森田真生 ほか『はじめてであう安野光雅』(とんぼの本)
ナカムラクニオ/天使の目を持つ画家を読み解く
川内有緒『自由の丘に、小屋をつくる』
島田潤一郎/子どもたちに伝えたいこと
有賀『ウツパン ―消えてしまいたくて、たまらない―』(バンチコミックス)
頭木弘樹/「死にたい」のグラデーション ――『ウツパン』の衝撃と共感
【特別企画】
南陀楼綾繁/84冊! 新潮文庫の池波正太郎を全部読む 中編
【掌篇小説 新シリーズ 阿刀田 高ミニシアター】
阿刀田 高/下り電車で
【「第56回造本装幀コンクール」入選! 緊急記念座談会】
燃え殻×熊谷菜生×大橋裕之/こんな感じのチームで「日本代表」に
【私の好きな新潮文庫】
錦見映理子/それでも誰かに出会おうとする
国分 拓『ノモレ』
川上弘美『おめでとう』
江國香織『ちょうちんそで』
【今月の新潮文庫】
小津夜景『いつかたこぶねになる日』
池澤夏樹/深夜の読書
【コラム】
二神能基、久世芽亜里『引きこもりの7割は自立できる』(新潮新書)
久世芽亜里/「もっと早く押し出してほしかった」
三宅香帆/物語のふちでおしゃべり 第20回
[とんぼの本]編集室だより
三枝昴之・小澤 實/掌のうた
崎山蒼志/ふと、新世界と繋がって 第14回
【連載】
橋本 直(銀シャリ)/細かいところが気になりすぎて 第13回
エリイ(Chim↑Pom from Smappa!Group)/生時記 第15回
近藤ようこ 原作・梨木香歩/家守綺譚 第14回
大木 毅/指揮官と参謀たちの太平洋戦争 最終回
坪木和久/天気のからくり 第3回
伊与原 新/翠雨の人 第22回
川本三郎/荷風の昭和 第66回
編輯後記 いま話題の本 新刊案内 編集長から
立ち読み
編集長から
今月の表紙の筆蹟は、筒井康隆さん。画は、とり・みきさん。
◎村上春樹さんの『街とその不確かな壁』の主人公は「きみ」と「高校生エッセイ・コンクール」の表彰式で出会います。テーマは「わたしの友だち」。これは大昔からある酷いお題で(勿論村上さんのせいではない)、僕も誰を書くかに胸を痛めた記憶あり。小説では主人公は飼猫、きみは母方の祖母について書いていました。どちらも妙手!
◎昔も昔、佐藤春夫が十二歳の頃(明治時代後期)、小学校で「友達を書け」と言われ、友達のいない春夫は煩悶した挙句、教室で席が近い子たちの名前を記します。休み時間、後ろの子に問われて、春夫が「おれはあんたの名を書いたんじゃ」と答えると、彼はしばらく無言になって「こらえとおくれよ。のう、わあきゃあんたをわすれたあった。わあきゃあ、ぎょうさんつれがあるさか」。二十年後春夫は回想して曰く「この正直な一言に、今も無限の友情を見出す」(「好き友」(『退屈読本』所収))。
◎時代が変っても友達問題は続きます。クラスメイトだからって簡単に友達だなんて呼ぶな、という痛切な調べが全篇を貫いて心打たれるのが重松清さんの名作『きみの友だち』。友達とか友情とか一切言わないからこそ男同士の情感が匂い立つのが三浦しをんさんの新作『墨のゆらめき』でした。
◎そして高橋睦郎さんの『友達の作り方』。作り方と称しながら、関係が壊れる友達も大勢登場してギョッとしますが(壊れ方・壊し方も鮮やかに描かれる)、例えば、そもそも友達にさえなっていない「反友達」加藤郁乎氏のポルトレなど抱腹かつ感動的。「疎縁の中で学ぶことは、あんがい親しいままの時より深い」と言う著者による友情をめぐる奇書、と見せつつ実は丁寧に友人関係を辿り直す詩人の真率な半生記でした。
▽次号の刊行は十一月二十八日です。
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雑誌から生まれた本
波とは?
1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。
創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。
創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。
現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。