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それでも日々はつづくから

燃え殻/著

1,595円(税込)

発売日:2022/04/27

書誌情報

読み仮名 ソレデモヒビハツヅクカラ
装幀 大橋裕之/装画、熊谷菜生/装幀・ブックデザイン
雑誌から生まれた本 週刊新潮から生まれた本
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 190ページ
ISBN 978-4-10-351013-0
C-CODE 0095
ジャンル 文学・評論
定価 1,595円
電子書籍 価格 1,595円
電子書籍 配信開始日 2022/04/27

ズルズルと行けるところまで、やってみるしかない。『ボクたちはみんな大人になれなかった』著者のエッセイ集。

日々、僕たちは少しずつ摩耗し、「いっそ消えてしまいたい」それくらいの傷だらけで今日も生きている。決定的に死にたくなるような出来事は、そんなに起きないけれど。「己を鼓舞する呪文がほしい。この本にはそのヒントがあります」と壇蜜さんも推薦!! 週刊新潮連載の人気エッセイ(+コラムとマンガ入り)、待望の書籍化。

目次
疲れると人間に会いたくなるのだ
「解放してあげるよ」
「いま、広島だよ」と打ち込んで、結局、中目黒で降りていった
世の中はとにかくミュージシャンに甘い
四十代も半ばを過ぎて
「暗証番号は1010、私の誕生日、10月10日」
家出少女とピンク映画
「じゃあ、このまま行こうよ。熱海」
食事、睡眠、マッチングアプリ
クレーマー クレーマー
バニラ♪ バニラ♪ バニラ♪ バニラ♪
「お前、覚えてろよ」
チーム『それでも日々はつづくから』
大橋裕之 マンガ 燃え殻 コラム 「目黒川」
「俺さ、井上陽水と飯を食ったことあるんだよ」
まーまー好きだった人
ナポリタン、インスタ映え前夜
プロドタキャン
「袋、いりますか?」「あ、大丈夫です」
大橋裕之 マンガ 「ただの夏」
挫折だと思ったら左折だった
「お客」に必ず「様」を付けろという「輩」
この連載にファンレターが届いた!
なんならこのまま箱根湯本まで
誰も許さなくていい、生き延びてほしい。
「そもそも答えなんてないから」
カニクリームコロッケ来なさすぎ問題
人生の松竹梅をまんべんなく味わう男
大橋裕之 マンガ 燃え殻 コラム 「カレーライス」
暗闇から手を伸ばせ
大橋裕之 マンガ 燃え殻 コラム 「自称ミュージシャン」
世界は弱肉強食で出来ている
夢や希望よりも「生きてるだけで立派」な年頃
ブエノスアイレス発の銀河鉄道
「運命」と呼んで片付ける日々
ピンクとグレーと無人島
「すみません、サインもらっていいですか?」
「では一枚だけ頬杖ください」
「行け! いましかない!」
人はトークイベントに行かない生き物です
ついに原作者先生役が回ってきた
魂がゾクッとする
「好きな男ができたから別れたいの」
ネットはあらゆるミシュランの巣窟
「死にたいです、なる早で連絡ください」
「どっちかというと消えたい」くらいの傷だらけで生きている
人間の取り扱い説明書

書評

ダメな自分の愛し方

椎木知仁

 何年か前によく友人や知り合いから「燃え殻さんって知ってる?」と連絡をもらった時期があった。周りの友人曰く「とにかく椎木くんに読んでほしい!」「絶対好きだから!」と僕にぴったりの作家さんだということだった。その中には燃え殻さんと会ったことがある友人もいて、彼らに「どんな人なの?」とも聞いたことがあったが、「燃え殻さん自体が……? う~ん、会ってみたらわかるよ……」というようななぜか若干呆れているような答えが返ってきた。僕は「さすがにこんな文章を書く作家さんは曲者なんだろう……」と思うのと同時に、きっとこの感じであれば望まずともいつか自然に飲みの席でバッタリお会いできたりするんではないか? と思っていたが、それから今日まで僕が燃え殻さんに会うことはなかった。
 それから数年後、「燃え殻さんの連載エッセイの書評の依頼が来ています。」と連絡があった。正直、燃え殻さんが別のバンドマンと交流があることも知っていたし、今まで別のバンドマンが似たような仕事をしている所も見ていたので、そんな会ったことのない男に私は簡単に抱かれないよ! という気持ちだったが、「ご本人が椎木さんを希望してくれたみたいです。」と言われ、僕の楽曲のことやTwitterのことを褒めてくれていると聞き、まんまとまんざらじゃなくなり、ありがたく二つ返事で受けることにした。
 文章の上手さ、表現の豊かさは不思議で、どんなに恥ずかしい出来事、辛い経験、ダメダメなエピソードも美しく昇華してしまうことがある。最っ低な人間性も文章力と表現力があれば紙の上で美談になり輝くのだ。「結局、超ダメ人間じゃん!」と言われればそれまででも、そのダメさが愛おしく、癖になり、人を魅了することを、燃え殻さんははっきりわかっていると思う。そしてそれは恥ずかしい自分の助け方、辛い過去の自分への寄り添い方、ダメな自分の愛し方を、日記の中から燃え殻さんに教えてもらっているような気持ちにさせてくれた。各所に「あるある。」と思えることや、「そんなに卑屈にならなくても……」と思うようなことがちりばめられており、全ては燃え殻さん本人の自分の気持ちの吐露なのだが、まるで自分に起きたことのように想像できたり、目の前の友人の話を聞いているような感覚にさせてくれた。読み出すと早々に「世の中はとにかくミュージシャンに甘い」という見出しのエッセイがあり、きっと僕らにチクチクと何かを伝えてきているが、人の文句を書いても、さらに自分を下げて書くスタイルはズルいとしか言いようがないくらいに上手い。
 きっと燃え殻さんが類い稀なる“愛されボーイ”であることは間違い無いと思う。昨今は人も作品も加工されて当たり前の時代である。写真の中で頭に耳が生え、顔がグレイ型の宇宙人みたいに小さくなって、実際と全くの別物になろうが、もう誰も違和感を覚えない時代である。その中で燃え殻さんが燃え殻というフィルターで加工していく世界はどうにもやるせなく、そして愛おしい。自分の書く文章への酔い方が、こんな僕でよかったら……という愛されるまでの待ち方がこんなにもわかっている人は“愛されボーイ”であるに違いない。言い方を変えたら“愛され方わかってるボーイ”に違いない。降り注ぐ不幸を、恥を、辛さを、全部自分のガソリンにしてしまうのだと思う。それは言い換えれば人の不幸もその人のガソリンにしてあげることができる人だということだ。燃え殻さんの加工フィルターで人生を切り取れたら、もっと自分を愛せる人たちが増えると思う。
 あの日、友人が答えた「燃え殻さん自体が……? う~ん、会ってみたらわかるよ……」という言葉の真相はわからない。本当は自己プロモーションに長けた計算高い完璧人間なのかもしれない。それはわからないけど、僕はこんなエッセイを書く人は、どうかちゃんとダメ人間でありますように、と願っている。転んでも、流されても、サボっても、嘘をついても、誰かに刺されても、最後は愛される文章を書く男は、本当に文章が上手すぎるだけで、自分に酔っているだけの最低な男でありますように、と願っている。
 なぜなら、完璧ばかりが増える世の中で、僕らが触れたいのは不完全だからだ。ダメ風じゃダメで、ダメじゃなきゃダメなんだ。エッセイ集『それでも日々はつづくから』は僕からしてみれば“ダメな自分の愛し方”だった。

(しいき・ともみ My Hair is Badボーカル、ギター)
波 2022年5月号より
単行本刊行時掲載

鎮静と高揚、女性エピソード多め

エル・デスペラード

 実は本を読む前に燃え殻さんご本人にお会いしています。三年前、ゆでたまご先生のコミック『キン肉マン』の連載四十周年記念パーティにご招待いただき、燃え殻さんと爪切男さんもいらしていて、ご紹介を受けてお話ししたり、写真を一緒に撮ったりしました。そのあと、おふたりの連載エッセイが載っていた週刊SPA!を買って読むようになり、去年は『キン肉マン』の座談会に呼んでもらい、おふたりの小説も読んでいた。燃え殻さんのエッセイは、ちょっとうれしいことや思い出したくもないイヤだったことなどが書かれ、「うわっ、俺もこういう経験した」とむかしの自分を思い出させてくれるんですよね。子どもの頃、スポーツをやっていて、プロレスラーをめざしてはいましたが、いかんせん明るい性格でなく、仲間を積極的につくるようなタイプでもなかったから、「凄くわかる!」と心のなかで燃え殻さんに呼びかけていました。
 新刊の『それでも日々はつづくから』はゲラをいただき、まず通して読み、それから四、五回は読み返していると思います。試合と試合の移動中にパッとランダムに開いたページを読む。各エッセイは見開きの四ページで一篇となっていて、とても読みやすく、そのままつづきを読んだり、パラパラとめくり直したりしていました。職業柄、試合中はもちろんのこと試合前と試合後もアドレナリンが出つづけ、精神が昂ぶりすぎる状態がつづきます。トレーナーの先生から「試合の前と後で精神のスイッチをオンオフで切り替えた方が良い」と言われていました。このエッセイ集を読んでいたらリング外のテンションがどんどん落ち着いていった。試合に勝った日も負けた日も。スイッチがオフになって、精神は鎮静化していき、ふつうの状態に戻っていくような感じでした。
「ネットはあらゆるミシュランの巣窟」というタイトルのエッセイでは、チェーン店にすらミシュランの調査員気取りでネットで批評する人たちを取り上げ、「『お客様は神様です』は全国民でなく、朝礼で社員にだけ言うべきだった」と言い切り、わかりすぎる程、わかる。また、「ピンクとグレーと無人島」という一篇はNEWSの加藤シゲアキさんとラジオで対談したときの話で、加藤さんの本のあとがきの「なんの賞も獲らずに小説を出せているのは、僕がジャニーズだからと自覚しています」という一節を引用し、「数十万分の一の規模だが、僕もその気分はわかった」とツイッターのフォロワー数がハンパではない燃え殻さんは共感している。僕は新日本プロレスのリングに上がっていて、いま(チャンピオン)ベルトも持っており、おそらくそういうこともあって『キン肉マン』さんのパーティや座談会、このインタビューにも呼んでもらっていると思うんです。ですから、おこがましいとはわかっているけど、僕も燃え殻さんのように「数十万分の一」の「その気分」を味わい、なんだか加藤シゲアキさんのことが好きになっていました。
 このエッセイ集は「『解放してあげるよ』」「家出少女とピンク映画」「『いま、広島だよ』と打ち込んで、結局、中目黒で降りていった」など女性にモテたり、別れたり、といった女性エピソードが多めな印象もあります。他人の怖さや勝手さなどネガティブなことが書かれてあるのに面白おかしくて、燃え殻さんの小説にも似て、希望でも絶望でもあるような、名前のつけられない感情に襲われます。どのエッセイも最後の一行のあと、「それでも日々はつづくから」という一文をつけたくなり、実際、つけられる。これ以上はない素晴らしいタイトル(書名)ですね。
 一篇だけ、精神が落ち着くことなく、高揚させられたものがあります。それは燃え殻さん原作の『ボクたちはみんな大人になれなかった』が映画化され、プレミア上映で観に行ったときの話です。映画の中でむかし彼女に言われた言葉が女優の伊藤沙莉さんの声で再現されたのを聞いて、燃え殻さんは「恥ずかしながら落涙してしまった」。つづけて「あのときの彼女はもういない。ならば自分で自分を鼓舞するだけだ。大丈夫、君は面白い」と書く。こういった経験は僕にはなかったけど、リングに上がる前、スイッチが入りそうです。「君は大丈夫」だと僕も自分を鼓舞したくなっています。(談)

(エル・デスペラード プロレスラー)
波 2022年5月号より
単行本刊行時掲載

著者プロフィール

燃え殻

モエガラ

1973年生まれ。小説家、エッセイスト。2017年、小説家デビュー作『ボクたちはみんな大人になれなかった』がベストセラーとなり、2021年秋、Netflixで映画化、全世界に配信、劇場公開された。小説の著書に『これはただの夏』、エッセイ集に『すべて忘れてしまうから』『夢に迷って、タクシーを呼んだ』『相談の森』『断片的回顧録』がある。

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