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今月の表紙の筆蹟は、春画ールさん。

波 2023年8月号

(毎月27日発売)

100円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2023/07/27

発売日 2023/07/27
JANコード 4910068230836
定価 100円(税込)
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筒井康隆/老耄へとへと日記 第6回
阿川佐和子/やっぱり残るは食欲 第71回
【春画ール『春画の穴―あなたの知らない「奥の奥」―』刊行記念特集】
宇垣美里/春画の穴を覗く時、春画もまたこちらを覗いているのだ
春画ール/私がどうしても「江戸をやめられない」理由
【燃え殻『ブルー ハワイ』刊行記念特集】
岡本真帆/こういう走馬灯がいい
LEO/何があってもまた呑もうよ
水谷豊、松田美智子『水谷豊 自伝』
浅田次郎/正直な告白

トルーマン・カポーティ、村上春樹 訳『遠い声、遠い部屋』
島本理生/かつての愛読者へのギフト

小田雅久仁『禍』
東 雅夫/これぞ、令和の怪奇小説傑作集だ!

畠中 恵『いつまで』
みもり/推し妖、久々の登場に歓喜!

乾 緑郎『戯場國の怪人』
柳亭小痴楽/恐ろしいリアリズムを内包した新感覚の時代小説
【為末 大『熟達論―人はいつまでも学び、成長できる―』刊行記念】
[対談]為末 大×安田 登/身体を通して学ぶおもしろさを読む

【吉田恵美『ニューヨークのクライアントを魅了する 「もう一度会いたい」と思わせる会話術』刊行記念】
[対談]吉田恵美×山口 周/「家づくり」が日本を豊かにする
【カン・ミョンソク、BTS 語り、桑畑優香 監訳『BEYOND THE STORY ビヨンド・ザ・ストーリー―10-YEAR RECORD OF BTS―』監訳者特別書評】
桑畑優香/「チーム」「生存競争」「転換点」――まさか発売されるとは思わなかったBTSメンバーのインタビュー集
【特別企画】
高橋洋二/極私的「タモリ倶楽部」回顧録 後篇

【夏休み特別企画】
新潮社装幀部長/少しだけ、新潮社特装本の世界を覗いてみた!
【私の好きな新潮文庫】
石川セリ/タイトルに惹かれる。
 太宰 治『走れメロス
 谷崎潤一郎『春琴抄
 土井善晴『一汁一菜でよいという提案

【今月の新潮文庫 特別編】
尾崎世界観『母影』
[インタビュー]尾崎世界観/「芥川賞候補!!」はもう味のしないガムになった

神長幹雄 編『山は輝いていた―登る表現者たち十三人の断章―』
石丸謙二郎/熱きロマンティストたちと峰の彼方へ
【コラム】
神舘和典『不道徳ロック講座』(新潮新書)
神舘和典/不倫もドラッグも初体験も赤裸々に

三宅香帆/物語のふちでおしゃべり 第17回

[とんぼの本]編集室だより

三枝昴之・小澤 實/掌のうた

崎山蒼志/ふと、新世界と繋がって 第11回
【連載】
橋本 直(銀シャリ)/細かいところが気になりすぎて 第10回
エリイ(Chim↑Pom from Smappa!Group)/生時記 第12回
近藤ようこ 原作・梨木香歩/家守綺譚 第11回
梨木香歩/猫ヤナギ芽ぶく 第9回
内田 樹/カミュ論 第20回
大木 毅/指揮官と参謀たちの太平洋戦争 第9回
伊与原 新/翠雨の人 第19回
川本三郎/荷風の昭和 第63回
編輯後記 いま話題の本 新刊案内 編集長から

立ち読み

編集長から

今月の表紙の筆蹟は、春画ールさん。

いま話題の本を読んだら、世評通りしびれるくらい面白かったのですが、何をどう書いても忽ちネタバレになりそうで……。
◎仕掛けやたくらみを書いてもネタバレにならない場合もあって、例えば〈文字が消えていく〉という大仕掛けを謳ってベストセラーになった筒井康隆さん『残像に口紅を』。これはフランス語で一番使われる文字Eを省いて長篇を書いたやつがいる(当のペレック『煙滅』は当時未訳)と聞いた著者が張り合って、技倆の粋を尽くした傑作。同じペレックの『人生 使用法』は九階建てアパート百区画の住人や関係者千人以上が登場する長篇全百章。発表が一年早い筒井さんの短篇「上下左右」は四階建て十九部屋の断面図を載せ、各部屋の人々(宇宙人含む)の会話を同時進行で見せていきました。
◎『残像に口紅を』単行本版は後半が袋綴じになっていますが、泡坂妻夫生者と死者―酩探偵ヨギ ガンジーの透視術―』は袋綴じのままだと短篇「消える短編小説」で、袋綴じを切り開くと長篇に化ける仕掛け。深沢七郎『みちのくの人形たち』夢屋書店版は経本のような造本が内容と相俟って、読みながらどんどん怖くなります。コルタサル『石蹴り遊び』は1章から順番に読むのと、73章から始めて各章末にある数字の章へと飛んで読み継ぐのと読み方が二つある長篇。筒井さんの文章で知ったのですが、各章を一枚ずつカードにして函に収めた特別版がある由。見てみたいなあ。
◎『煙滅』の怪物的翻訳(「い」段を一切使わない)を成し遂げた塩塚秀一郎氏は、小説の仕掛けだけが話題になると、まともに読まれなくなると警告しています。Eの排除はジェノサイド(ペレックはユダヤ系)の記憶に繋がるかもしれず、だがそれだけではなく……と続く訳者あとがきにも興奮しました。
▽次号の刊行は八月二十九日です。

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。