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一汁一菜でよいという提案

土井善晴/著

990円(税込)

発売日:2021/10/28

  • 文庫
  • 電子書籍あり

日常の食事は、ご飯と具だくさんの味噌汁で充分。家庭料理に革命をもたらした大ベストセラー!

日常の食事は、ご飯と具だくさんの味噌汁で充分。あれば漬物を添えましょう。無理のない生活のリズムを作り、心身ともに健康であるために「一汁一菜」という生き方をはじめてみませんか――。料理研究家・土井善晴による根源的かつ画期的な提言は、家庭料理に革命をもたらした。一汁一菜の実践法を紹介しながら、食文化の変遷、日本人の心について考察する。著者撮影の食卓風景も数多く掲載。

  • 受賞
    第10回 大阪ほんま本大賞 特別賞
目次
今、なぜ一汁一菜か
食は日常
食べ飽きないもの
暮らしの寸法
自分の身体を信じる
簡単なことを丁寧に
贅と慎ましさのバランス
慎ましい暮らしは大事の備え
毎日の食事
料理することの意味
台所が作る安心
良く食べることは、良く生きること
一汁一菜の実践
食事の型「一汁一菜」
日本人の主食・ご飯
おいしいご飯の炊き方の原則と要領
具だくさんの味噌汁
手早く作る一人分の味噌汁
味噌について
すぐにできる味噌汁
その季節にしか食べられない味噌汁
一汁一菜の応用
一汁一菜はスタイルである
作る人と食べる人
プロの料理と家庭料理 考
家庭料理はおいしくなくてもいい
作る人と食べる人の関係「レストラン(外食)」
作る人と食べる人の関係「家庭料理」
基準を持つこと
おいしさの原点
和食の感性 考えるよりも、感じること
縄文人の料理
清潔であること
和食を初期化する
心を育てる時間
日本人の美意識
食の変化
何を食べるべきか、何が食べられるか、何を食べたいか
和食の型を取り戻す
一汁一菜からはじまる楽しみ
毎日の楽しみ
お茶碗を選ぶ楽しみ、使う楽しみ
気づいてもらう楽しみ、察する楽しみ
お膳を使う楽しみ
お酒の楽しみ、おかずの楽しみ 季節(旬)を楽しむ
日本の食文化を楽しむ、美の楽しみ
きれいに生きる日本人
――結びに代えて
一汁一菜の未来
――文庫化にあたって
解説 養老孟司

書誌情報

読み仮名 イチジュウイッサイデヨイトイウテイアン
シリーズ名 新潮文庫
装幀 土井善晴/カバー題字、佐藤卓/カバー装幀、日下部昌子(TSDO Inc.)/カバー装幀
発行形態 文庫、電子書籍
判型 新潮文庫
頁数 240ページ
ISBN 978-4-10-103381-5
C-CODE 0177
整理番号 と-33-1
ジャンル 文学・評論
定価 990円
電子書籍 価格 935円
電子書籍 配信開始日 2021/10/28

書評

タイトルに惹かれる。

石川セリ

 文庫本のビジュアル――。
 手にとりたい出会いと、書体や文字の大きさ。そのビジュアルに空間とリズムがあるように思えて、惹かれます。
 これまで、たくさんの本に囲まれてきました。映画も、別世界に行かれる本も、別次元での人生を経験するかのように感じます。それは、音楽セラピーや香りセラピーと似たもののようで。たとえば、コーヒーの香りだけでも、横隔膜は広がるものですから。
 今回は、好きな新潮文庫三冊ということでお話がありました。
 まず、太宰治の『走れメロス』。
 これは、哲学ですね。ずっと私の心のなかにある本です。中学時代から「なぜ」をくりかえしてきました。
 親友を助けること――自分の身がわりになった親友のために走る、時間のリミットとその信義とがそこには描かれます。

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 この短編集にある「駈込み訴え」という小説では、イエス・キリストの弟子の気持ちサイドからの「なぜ」を。弟子として一番イエスに仕えてきたと自負するユダにたいして当のイエスからは愛の言葉もないと、彼が怒りをあらわにする。
 その当時の私にとって、心うばわれるがごとくで、痛快でもありました。面白いまでのシニカルさ、で。
 谷崎潤一郎の『春琴抄』の文庫本は、祖母の想い出。
 なぜか十九歳の私に祖母から唐突に手渡された数冊の中の一冊でした。なんとか読破したかったわけですが、読みはじめると暗くて、ただただ悲恋のようで、じつは辛くなっていきました。
 それでも、まず西村孝次さんの「解説」文を読むことで、物語の時代背景を理解しましたし、作者である谷崎潤一郎の生いたちもまた、理解できました。日本橋に生をうけ、東京帝国大学国文科に籍を置いていた、という。
 気をとり直して、ふたたび『春琴抄』の世界に分け入っていくと、描かれている当たり前の格差に気づかされます。ご主人様と使用人も同じ人ではないのか、という具合にですが。培われた伝統と教育と厳しい決めごとが、生きていくことのすべてであり、尊厳である、この世界では。
 美しくも残忍な盲目の三味線師匠春琴と、奉公人佐助は、こう呼び合います――「こいさん」、「佐助」と。

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 盲目の「こいさん」の手を引く係の佐助。九歳の時に盲目になってしまった春琴。どんな事情だったのか、彼女は聡明で美しく妬まれての事故だろうと。
 若い佐助は、彼女のしもべとなります。相性もよかったのだと思います。それは、こと細かな描写からわかります。お風呂にしろ、下の世話にしろ、すべてのお世話に、慈しみが必要なのですから。
 女主ならば、それぞれに専用の係も分かれましょうが、春琴の意向である二人だけの世界。ストイックに格差の壁を築きながらも、断ちがたい二人の絆……。
 最近では、健康維持や、いかに健やかに日々を過ごせるかといった書物が好きになっているわけです。人には酸素が重要。ですから、毎日笑顔が必要。笑うことで酸素がとり入れられるわけですから。環境づくりも重要ですけれどね。良い環境は求められるべきですし。
 健康と食は切り離せないものですよね。そして、どれだけ心強いでしょうか、土井善晴さんの『一汁一菜でよいという提案』という本は。
 料理には、しかも家庭料理を作るということには、私も難儀して、ずいぶんと悩んだものでした。
 日本には、とにかくさまざまな世界の料理が入ってきていますからね。とはいえ、豪華料理は特別なレストランでいただけばいいのです。
 私もずっと、一汁一菜と思っていました。昔の日本食であります。お米とお漬物と、具だくさんのお味噌汁なんかですよね。力が湧いてきます。
 テレビでお見かけする土井さんの笑顔と、食材に対する慈しみを、この本から感じます。
 手のぬくもりとお話、会話の優しさには、お人柄と今までの人生の道のりで確かな選択をしてきたことが、おのずとうかがわれます。お父様も偉大な料理研究家でいらっしゃるとのこと。恵まれた、豊かな環境で育まれた食文化を身につけていらしたのでしょう。

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 文庫本を手にとる――。
 ビジュアル要素も大きいけれど、「走れ」、「春琴抄」、「一汁一菜」というふうに、印象深い言葉ですね。それを入れこんだタイトルというのに、惹かれることがわかります。

(いしかわ・せり シンガー)
波 2023年8月号より

著者プロフィール

土井善晴

ドイ・ヨシハル

1957(昭和32)年、大阪生れ。芦屋大学教育学部卒。スイス、フランス、大阪で料理を修業し、土井勝料理学校講師を経て1992(平成4)年、「おいしいもの研究所」を設立。十文字学園女子大学特別招聘教授、甲子園大学客員教授、東京大学先端科学技術研究センター客員研究員などを務め、「きょうの料理」(NHK)などに出演する。著書に『一汁一菜でよいという提案』、『料理と利他』(共著)、『くらしのための料理学』など多数。

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