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令和の山口組

山川光彦/著

902円(税込)

発売日:2023/12/18

  • 新書
  • 電子書籍あり

歴史から資金源、人心掌握術まで。世界一わかりやすい最大の反社集団の基礎知識!

結成から約百年、初代・二代目時代のドラマ、抗争と芸能ビジネスで強力な地位を築いた三代目のカリスマ、四代目暗殺と山一抗争を経て、「全国制覇」を遂げた五代目時代――だが、この国内最大の暴力団は近年、当局との激しいバトル、法律や条例による社会からの排除、さらには「一強」体制への不満がもたらした分裂劇など、内外ともに追い詰められている。大正から昭和、平成、令和の現在まで、変遷の歴史と組織の全貌。

目次
はじめに
第一章 山口組百年の略史
原点は沖仲仕の労働者集団/神戸のドンとなった二代目・登/三代目田岡のもとで日本最大組織に/明治「大刈り込み」以来の「頂上作戦」/竹中四代目の死、一和会との抗争劇/「暴対法」と「バブル景気」の渡辺五代目時代/司六代目への移行
第二章 解剖・巨大組織の人員、資金、活動
人員・組織・指揮系統/山口組トップが背負うもの/トップダウンのピラミッド型指揮系統/「ヤクザの二人に一人が山口組」になった理由/「経済案件」から「ケツモチ」までシノギの実態/「縄張り」とフロント企業/「薬物は扱うな」は本当か/山口組の直系カンパニー/組員と組織の収支はどうなっているか/芸能・興行界と山口組/山口組と政治家の地下水脈/山口組とマスコミの虚々実々/「半グレ」集団との共生/「抗争は百害あって一利しかない」/山口組「社内報」に見る組員の現実/ある「若い衆」の日常/米騒動から震災まで、山口組のボランティア活動/六代目絶頂期を象徴する「組歌」/組織を動かした歴代トップの肉声
第三章 山口組vs.警察当局 国家との「ガチバトル」
警察庁長官の“宣戦布告”/進学塾と風俗店の「密接交際」報道/「弘道会」はなぜ目の敵にされるのか/弘道会vs.警察の死闘/「暴排」締め付けで困窮化する組員/山口組が国を提訴!/「最大の敵」当局との攻防史/「“半グレ”にも学ぶことはある」/国家権力は山口組を壊滅できるか
第四章 六代目山口組vs.神戸山口組 大動乱の深層
「弘道会支配」への弾劾状/「六代目」のしたたかな反論/ヤクザにとっての「盃」の重さ/弘道会「一強」の功罪/抗争の潮目を変えた暗殺劇/再分裂で問われた「造反の大義」/前代未聞の「ヒットマンは親分」/「代紋力」の天地の差/なぜ分裂抗争は終わらないか/造反者たちと高山若頭、それぞれの真実/“スジ”と“面子”の終わりなき対立
おわりに
巻末資料(1)反社辞典 (2)高倉健と山口組秘史
主要参考文献

書誌情報

読み仮名 レイワノヤマグチグミ
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 240ページ
ISBN 978-4-10-611022-1
C-CODE 0236
整理番号 1022
ジャンル 社会学、コミュニティ、思想・社会
定価 902円
電子書籍 価格 902円
電子書籍 配信開始日 2023/12/18

インタビュー/対談/エッセイ

百年を超えて続く反社集団の基礎知識

山川光彦

 1960~1970年代、東映のヤクザ映画は今でいう“鉄板”の人気コンテンツでした。業界の抗争や対立、変化や動向を伝える「実話系雑誌」も飛ぶように売れたそうです。しかし、バブル崩壊後の1991年に暴力団対策法がつくられ、暴力団排除条例が全国的に施行された2010年代になると、彼らの存在は徐々に一般社会から切り離されていくようになりました。
 そして令和のいま、世間一般の暴力団あるいは山口組に対する関心度は、いかほどのものでしょうか。往時のエピソードを一つ紹介しましょう。
「その活動は巧妙、かつ、機動性に富み、監督官庁も一目おくまでにのしあがったのである」
 立志伝中の企業家の成功譚、ではありません。山口組中興の祖とされる三代目組長・田岡一雄について、当時の兵庫県警察本部がまとめた内部文書からの引用です。山口組に一目おいた監督官庁とは、当時の運輸省や労働省をさしていますが、その理由は、山口組が1915年の設立時、荷役業を正業として誕生したことにあります。
 当時ほぼすべてが人力による、港での荷揚げという厳しい労働環境に置かれた労務者には、彼らを統率する強力なリーダーが必要で、その親方のひとりが、山口組の創設者である山口春吉でした。
 以来、山口組はミナト神戸の荷役と運搬、浪曲や相撲などの興行という二大実業分野を全国ネットにまで拡大、成長させます。
 三代目の田岡は、配下の「企業舎弟」に労務者を管理させる一方で、船主側や行政に対して労働条件の改善策を突きつけ、非正規労働者である荷揚人夫の労災補償、寮の建設などの譲歩を勝ち取ります。まるで山口組が労働組合か、人権擁護のために働くNPOのような活動をしていたわけです。
 これら実業部門で稼いだ資金を、惜しみなく抗争部門に「投資」することで、山口組は進出先の地元勢力の度肝を抜く、組員の大量動員方式を確立。その後の「全国制覇」に向けてひた走り、ついには日本最大の暴力団組織へと至ります。
 他組織との幾多の抗争、ときに内部分裂を経て、現在もなお、山口組は設立から百年を超える老舗組織として存続しています。主に昭和年間に築かれた好戦的イメージ、組の代紋である「山菱」ブランドは組織を支える重要資産といえるでしょう。
 一方で、2015年には「神戸山口組」の「六代目山口組」からの離脱劇があり、そして先述の通り、暴力団の存在自体を社会から排除しようとする圧力にさらされ、内憂外患に見舞われています。
 企業もそうですが、地場に発して全国に組織網をめぐらせ、一世紀以上も続くような組織には、世の中に根を張り、棲息し続ける相応の理由があるはずです。本書が、個と組織、組織と社会、そして時代の変動を知る手がかりとなれば幸いです。

(やまかわ・みつひこ フリーランスライター)
波 2024年1月号より

蘊蓄倉庫

結成以来の意外な一面

 今から30年近くも前、阪神・淡路大震災の際のことですが、渡辺芳則・五代目山口組組長(故人)にインタビューしたことがありました。取材のために門をくぐるや、見知らぬ部外者の立入りに対して、たくさんの鋭い視線がいっせいにこちらを向いたことを思いだします。そして驚いたのは、様々な食料品から日用品まで、邸内にうずたかく積まれた支援物資です。当時、神戸市内には「緊急支援」と大きく墨書きした紙を貼り付けた黒塗りの高級車が何台も走っていましたが、さすが、日ごろから「非常時」を想定している人たちは動員力がちがうんだな、と妙に感心したものでした。古くは大正時代の米騒動から東日本大震災での支援活動まで、本書では、山口組のそうした意外な一面にもふれています。

掲載:2023年12月25日

著者プロフィール

山川光彦

ヤマカワ・ミツヒコ

出版社勤務後、フリーランスライター。週刊誌、書籍などの執筆と編集に携わり、2022年『週刊新潮』に集中連載した「異端のマネジメント研究 山口組ナンバー2『高山清司』若頭の組織運営術」が話題になった。『令和の山口組』が初めての著書となる。

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