今月の表紙の筆蹟/絵は、こいしゆうかさん。
波 2024年1月号
(毎月27日発売)
発売日 | 2023/12/27 |
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JANコード | 4910068230140 |
定価 | 100円(税込) |
筒井康隆/夜を抱いて走る男 シリーズ第11回
阿川佐和子/やっぱり残るは食欲 第76回
【特集ダイアローグ!】
【こいしゆうか『くらべて、けみして 校閲部の九重さん』刊行記念】
[対談]こいしゆうか×矢彦孝彦/校閲者を漫画にしたら
【河崎秋子『ともぐい』刊行記念】
[対談]河崎秋子×安島薮太/動物、狩猟、そして炙り出される人間性 構成・加山竜司
【戸谷洋志『親ガチャの哲学』(新潮新書)刊行記念】
[対談]戸谷洋志×東畑開人/「親ガチャ」を超えるために
【キャスリン・ペイジ・ハーデン、青木 薫 訳『遺伝と平等―人生の成り行きは変えられる―』刊行記念】
[対談]青木 薫×大澤真幸/遺伝学と社会学がつながるとき
【朱野帰子『わたし、定時で帰ります。3―仁義なき賃上げ闘争編―』(新潮文庫)刊行記念】
[対談]朱野帰子×青野慶久/「社長、賃上げってぶっちゃけどう思いますか?」
山田章博、芸術新潮編集部 編『「十二国記」絵師 山田章博の世界』
辻村深月/絵師のまなざしに潜り、溺れる
トーン・テレヘン、長山さき 訳『いちばんの願い』
豊崎由美/読み継がれるべきカノン
ファルシッド・ジャラルヴァンド、久山葉子 訳『サルと哲学者―哲学について進化学はどう答えるか―』
仲野 徹/哲学と科学を合わせ鏡に世界を理解する試み
佐藤 優『神学でこんなにわかる「村上春樹」』
佐藤 優/村上春樹作品で世界を掴む
遠藤彩見『左右田に悪役は似合わない』
吉田大助/しなやかに奪い返す
高田崇史『猿田彦の怨霊―小余綾俊輔の封印講義―』
高田崇史/謎多き神を巡る二重の罠
【新連載】
椎名 誠/こんな友だちがいた
【小説】
阿刀田 高/敗者と勝者
北村 薫/不思議な時計 前篇
【私の好きな新潮文庫】
福田麻貴(3時のヒロイン)/人生で一冊目
伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』
ユゴー、佐藤 朔 訳『レ・ミゼラブル(一〜五)』
南 綾子『婚活1000本ノック』
【今月の新潮文庫】
宇能鴻一郎『アルマジロの手―宇能鴻一郎傑作短編集―』
花房観音/背徳感溢れる物語
【新潮文庫一行大賞】
中高生のためのワタシの一行大賞受賞作品発表
【コラム】
三枝昴之・小澤 實/掌のうた
三宅香帆/物語のふちでおしゃべり 第22回
山川光彦『令和の山口組』(新潮新書)
山川光彦/百年を超えて続く反社集団の基礎知識
[とんぼの本]編集室だより
崎山蒼志/ふと、新世界と繋がって 第16回
【連載】
橋本 直(銀シャリ)/細かいところが気になりすぎて 第15回
二宮敦人/ぼくらは人間修行中 第29回
エリイ(Chim↑Pom from Smappa!Group)/生時記 第17回
近藤ようこ 原作・梨木香歩/家守綺譚 第16回
伊与原 新/翠雨の人 最終回
坪木和久/天気のからくり 第5回
川本三郎/荷風の昭和 第68回
編輯後記 いま話題の本 新刊案内 編集長から
立ち読み
編集長から
今月の表紙の筆蹟/絵は、こいしゆうかさん。
◎「アレが遂に文庫に!」と初めて思ったのは『砂の女』(二百八十円)と『個人的な体験』(三百二十円)(共に1981年2月刊)。すぐ買って読み大興奮しました。当時「純文学書下ろし特別作品」という叢書があって、右の二作を始め錚々たる名作が並び、高知の中学生ですら指を咥えて眺めるくらいの知名度とオーラがあったものの、例えば同叢書『同時代ゲーム』は千八百円、僕の小遣いが月二千円だから手が出ない。文庫二冊で六百円也は嬉しかったですねえ。
◎ケチな出版社で同叢書の作品はずっと文庫化しなかったのが、この年あたりから新潮文庫に入れ始め、同年9月『聖少女』、10月『沈黙』『海市』、翌年は『恍惚の人』『箱男』『輝ける闇』『四季』等々と続きます。
◎そんなことを思い出したのは今年(2024年)遂に『百年の孤独』が文庫化されるせい。装幀の違う単行本四種を揃えた身としては文庫も買わざるを得ません。三番目の版からはブエンディア家(この一族の百年が語られる)の家系図が入りましたが、この家系図をより詳細に作ったのが池澤夏樹さん(『世界文学を読みほどく―スタンダールからピンチョンまで【増補新版】―』の「付録 『百年の孤独』読み解き支援キット」)。刊行五十周年記念のスペイン語版にはイラストが入り、家系図も夫々の顔の絵が載っていて楽しい。
◎安岡章太郎(高知出身)『流離譚』にも家系図がついていました。一族の中で養子や婚姻の縁組を長年続けた(これがややこしくて家系図が必要)安岡家が幕末維新の激震に出会い……。安岡一族の有為転変には『百年の孤独』と似た辺境の南国特有の濃密な匂いを感じます。池澤さんの懇切な批評の代りに、小林秀雄の最後の文章「「流離譚」を読む」があり、この作品を読むための「支援キット」になっているので、ぜひ。土佐とマコンドって妙に似ているんですよ。
▽次号の刊行は一月二十九日です。
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雑誌から生まれた本
波とは?
1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。
創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。
創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。
現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。