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すごい科学論文

池谷裕二/著

1,056円(税込)

発売日:2025/04/17

  • 新書
  • 電子書籍あり

どこがすごいのか。なにが新しいのか。どう役に立つのか。「毎日100本の論文をチェック」。人気の脳研究者が伝える、科学研究の最前線!

科学の進歩は“論文”にあり! 「ネイチャー」や「サイエンス」など世界的学術誌に掲載される最新の科学論文から、「毎日100本以上チェックする」という脳研究者が厳選。アルツハイマー治療、タコの利き足や母乳の意外な役割、幸福の条件など、その研究の「どこがすごいのか」「何が新しいのか」「どう役に立つのか」を丁寧に解説。長寿のヒントから最新AIまで、知的好奇心を大いに刺激する万能理系コラム!

目次

はじめに

第一章 長寿のヒント
1.「アルツハイマー病」治療薬の先行き
2.AIが見抜く「未来の遺伝疾患」
3.クジラとフクロウに学ぶ失明治療のヒント
4.「麻酔」は意識の謎に迫るカギ
5.オランウータンの塗り薬
6.人生に訪れる「二大老化期」
7.認知症リスクを下げる「抗炎症食」
8.アルツハイマーを防ぐ物質「コリン」
9.「ガンマ波」がアルツハイマー病を防ぐ

第二章 生物のふしぎ
1.「母乳」は生物界の大発明
2.「一味違う」タコの足の秘密
3.タコとヒトの「奇妙な睡眠」
4.横隔膜の大切な役割
5.「閉経」するチンパンジー
6.昆虫の「王座」はいつまで続く?
7.ネコの「ゴロゴロ」の正体
8.トビハゼの「瞬き」
9.医学の象徴「ヘビ」の適応力
10.「石炭」が伝えるシダ植物の悲劇
11.サルに学ぶ最善の「復興策」
12.涙ぐましい「イネ科」の努力
13.「キノコ」の奇妙な生態

第三章 最先端科学の意外な発見!
1.「毒キノコ」を食べる方法
2.匂いを嗅ぎ分ける最新AI
3.ニンジンはなぜ「緑黄色」なのか
4.「旧式AI」が見せた意外な実力
5.大都市で分断する人々
6.「生成AI」は透明な夢を見るのか
7.睡眠中の反応を実験
8.脳にも“クセ”がある
9.その嫌悪感には“ワケ”がある
10.「命名」の不思議なパワー
11.「草食動物」と「川」の意外な共通点
12.AIの価値観は欧米的か
13.DNAで分かる「人食いライオン」の足跡
14.「DNA」に情報を保存する最新研究

第四章 「定説」を疑え!
1.退屈がいざなう「珍妙な中毒」
2.鶏肉は洗わないほうがいい
3.人類はみな“ブレンド”である
4.記憶力は悪いほうがいい
5.「標本」があらわす富の偏在
6.絵が先か、文字が先か……
7.日本人が「魚にウルサイ」のは本当か
8.「電気自動車」は本当にエコなのか
9.「親切」という護身術
10.遠くの敵より近くのライバル
11.小さな島は「言語」の宝庫

第五章 幸福へのカギ
1.記憶に残る「絵画」の条件
2.「烏合の衆」にならないために
3.良いモノグサと悪いモノグサ
4.なぜ悲しくなると涙があふれるのか
5.「よいものを知る」ために必要なこと
6.香りに「奥行き」はあるか
7.野本寛一先生から受け継いだ“矜持”
8.「バーチャル自然」で健康増進
9.「フィルム式カメラ」の思い出
10.心を通わせるおしゃべりのコツ
11.「縄文土器」が変えた調理法
12.「演奏不可能」と言われた怪物曲の美
13.幸福のカギは「不幸への抵抗」
14.「共感」が人を強くする理由

第六章 究極の思考実験
1.「外国語」は「母国語」より論理的
2.まだまだ不透明なAIと意識
3.「背番号」の魔力
4.AIはオセロを理解しているか
5.脳はどのように“数”を把握しているのか
6.フェイクニュースがのさばる理由
7.ChatGPTは数学が苦手な「ド文系」
8.「AI画像」の不都合な偏見
9.「生物/無生物」を分けるもの
10.「人間味」の条件
11.「信頼に足る情報」の条件
12.「無敵AI」の攻略法
13.生成AIが示す露骨な「本音」
14.DNAから見る「宇宙人」考

【参考文献】

書誌情報

読み仮名 スゴイカガクロンブン
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
雑誌から生まれた本 週刊新潮から生まれた本
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 256ページ
ISBN 978-4-10-611084-9
C-CODE 0240
整理番号 1084
ジャンル 科学、サイエンス・テクノロジー
定価 1,056円
電子書籍 価格 1,056円
電子書籍 配信開始日 2025/04/17

インタビュー/対談/エッセイ

科学の最前線は、論文にあり!

池谷裕二

 このたび、『すごい科学論文』という、研究者としてはやや大胆とも言えるタイトルの書籍を刊行する運びとなりました。この本は、私が日々目にする最新の科学論文の中から「これは!」と思わず唸ってしまったものを厳選し、独自の解釈を交えつつ紹介する一冊です。
 日常的に、毎日の楽しみとして論文を読み漁ることが習慣化しており、平日は最低100本、多い日には500本、年間では5万本近い論文と接しています。
 それでもまだ連日世界中で発表される論文の量に比べれば微々たるものですが、その大海原から、ダイヤモンドのように光り輝く「すごい科学論文」を見つけ出し、皆様と分かち合いたいという思いが本書を書く原動力となりました。
 なぜこのような情熱が湧き上がるのか。それは、私自身が現役の研究者だからです。研究者は常に最新情報へとアンテナを張り巡らせ、新たな領域への挑戦を続けます。まるで漁師が新鮮な魚を狙い続けるように、研究者もまた、最先端の知見を素早く捉えることが重要で、それがまた、やり甲斐にも繋がっています。
 この書籍は「週刊新潮」で連載していたエッセイをまとめたものです。書籍化に際し、全連載を読み返してみると、生命の神秘から最新テクノロジーに至るまで、実に多様な内容が詰まっています。
 私自身の年齢による変化なのか、以前は脳研究者として神経科学の話題に焦点を当てていましたが、今は科学全般に視野を広げ、多彩なテーマに挑んでいます。これが思いの外面白く、まるで万華鏡を覗いているかのように、自身でも新たな発見の連続でした。
 アルツハイマー病や記憶に関する脳科学的な話題はもちろん、猫のゴロゴロ音の原理、おっぱいの進化的意味、生成AIの勃興、縄文土器の謎、さらには鶏肉の扱い方にまで話題が及びます。まさに科学という巨大なブルドーザーが地ならしをするように、あらゆる分野で果敢に進化を遂げていることの反映です。
 科学は常に私たちの世界観を揺さぶり、新たな視点を提供してくれる存在です。時には私たちがより良く生きるための手がかりも示してくれます。科学の最前線でどのような発見が繰り広げられているのか、少しでもご興味をお持ちの方には、ぜひ本書を手に取っていただきたいと思います。
「すごい科学論文」は日々新たに生まれています。知的好奇心の扉を開き、科学の驚異と感動に満ちた世界を心ゆくまでお楽しみいただければ幸いです。

(いけがや・ゆうじ 脳研究者・東京大学薬学部教授)

波 2025年5月号より

著者プロフィール

池谷裕二

イケガヤ・ユウジ

1970年静岡県生まれ。薬学博士。東京大学薬学部教授。脳研究者。2024年、『夢を叶えるために脳はある』で第二十三回小林秀雄賞を受賞。著書に『進化しすぎた脳』『単純な脳、複雑な「私」』『脳はなにかと言い訳する』『パパは脳研究者』『生成AIと脳』など。

この本へのご意見・ご感想をお待ちしております。

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