
人間・明石家さんま
946円(税込)
発売日:2025/10/17
- 新書
- 電子書籍あり
なぜ、いつも上機嫌なのか? 驚異的なエネルギーと、恐ろしい程の貪欲さ。35年を共にした男が“お笑いモンスター”の実像に迫る。
「おもろないものは、いらん!」。人を笑わせることに関しては恐ろしいほどに貪欲で、70歳にして今なお第一線で活躍を続ける明石家さんま。率直な物言いと底抜けに明るい人柄には見る者すべてがひき込まれるが、どこか人間離れしたそのエネルギーの奥底にいったい何があるのか──番組プロデューサーとして長年、公私にわたって親交の深い著者が、豊富なエピソードとともに“お笑いモンスター”の人間像に迫る。
はじめに
第一章 楽屋
生きている時間は全部、トレーニングにする/「賢い奴はすぐやめる」/師匠からの手紙を宝物に/悪口が一切出てこない/雑談で芸をステップアップさせた/「今見るとおもろなかった」/「緊張と緩和」を駆使する/どこからでも「笑いの芽」を探しだす/失敗をも笑いに変えてくれる/スタッフの自宅に直接電話をかけてくる/いつも機嫌がいい/苦手な相手にも神対応する/離婚会見も爆笑の場にする/「悲しいことも辛いことも全部笑いに変えたんねん」/「誰にでも魔が差すことはあるねん」
第二章 仕事人
「あいつらほんまにアホやで~」/さんま、日テレに一大指令を下す/おもろないものはいらない/周囲の運気を変える男/未来を予言する眼力を持つ/木村拓哉に感心する
第三章 現場力
驚異的な「捌く力」を持つ/素人たちに鋭角的な言葉を浴びせる/「好き嫌い」ではなく、あくまで「仕事」を見る/真夜中の夢枕にまで現れる/吉永小百合にも容赦ない/「いつも楽しいことばかりやないねんで」/「どうする? もう一泊できるんやけれども」/人並外れた記憶力を持つ/「スマホ検索」は絶対にしない/膨大な情報をインプットする/360度外交/なぜ情報が集まるのか?/無駄な贅沢はしない/自宅で密かに筋トレする
第四章 オフ
強化合宿でリフレッシュする/同行者を眠らせない/娘にお笑いの英才教育をする/フルに動いて頭を空っぽにする/プライベートでの事件を楽しむ/所ジョージの名言に大喜びする/オフでも「さんま御殿」を展開する/宴を終わらせない
第五章 人間性
野球観戦中もファンサービスを嫌がらない/タクシーに乗らない/「このまま真っ直ぐ行けばええ」/思い込みが激しい/私の失態も笑いに変えてくれた/LINEメッセージは簡潔に/背中に逃げ傷なく生きる
長~いあとがき
謝辞
書誌情報
| 読み仮名 | ニンゲンアカシヤサンマ |
|---|---|
| シリーズ名 | 新潮新書 |
| 装幀 | 新潮社装幀室/デザイン |
| 発行形態 | 新書、電子書籍 |
| 判型 | 新潮新書 |
| 頁数 | 192ページ |
| ISBN | 978-4-10-611103-7 |
| C-CODE | 0276 |
| 整理番号 | 1103 |
| ジャンル | 趣味・実用、芸能・エンターテインメント |
| 定価 | 946円 |
| 電子書籍 価格 | 946円 |
| 電子書籍 配信開始日 | 2025/10/17 |
インタビュー/対談/エッセイ
私の人生を狂わせた愛しき怪物たち
テレビ屋の私にとって本業の他に生きる糧になったのが「本と映画」である。学生時代は頑固な映画監督志望であったが、父が大島渚監督に出会い「吉川さん。これからはテレビが面白くなるよ」と言われ、息子はテレビ屋となった。その頃のテレビは熱気を孕み狂乱とカオスの状態にあった。
日本テレビ入社10年後の1992年、私はある“怪物たち”と出会う。夏の「24時間テレビ」への協力要請のためにスタジオジブリに行った。大ヒット中の映画「紅の豚」の人気に便乗しようとしたのだ。不敵にも「紅の豚」号と称する青森のねぶた祭りの様な立体バスの自筆のイラストを持って夜半に訪問。対応したのが不思議なエネルギーを放つ鈴木敏夫氏だった。アニメ界の怪物プロデューサーである。鈴木さんは私の描いた豚バスの画を前に煙草をスパスパ吸いながら貧乏ゆすりを始めて黙ってしまった。許諾を得るまで帰れないと思いテコでも動かぬ構えの私としばし沈黙の睨み合いになった。
そこにもう一人の怪物、宮崎駿監督が現れた。宮崎さんは煙草に火を点けて私のイラストを一瞥するとフハッとひと笑いし何処かへ行ってしまった。ここに来て鈴木さんも“仕方ない”と腹を括り実現した。
その不思議な出会いから読書好きで映画狂の私は用もないのに鈴木さんと度々歓談する様になり、ある日、呪いをかけられた。
「吉川さん。そんなに映画と本が好きなら“熱風”に映画論を書いて下さい」
「熱風」はジブリの刊行している月刊の小冊子である。ただ鈴木さんらしくその凝り様は半端ではなかった。この映画論の連載に私は翻弄された。何千本もの映画をレンタルし毎月の打ち合わせには編集長、出版部長が同席する。全く手が抜けない。プロデューサーとは呪いをかける人なのだと思った。連載は大変だったが文庫化もされ、私はこれで文章を書く喜びを知ってしまったように思う。
テレビ屋の仕事の醍醐味の一つは、怪物と出会えることである。そして鈴木さん以上に、私の人生に大きな影響を与えた怪物が、明石家さんまさんだ。つきあいは35年にわたる。「お笑い怪獣」としての顔を知る人は多いが、楽屋やオフでの顔を知る人は少ない。それを記録しておくのは、自分の責務なのではないか。そう考えて書いたのが、新著『人間・明石家さんま』である。
楽屋、スタジオ、ロケ先、オフの旅行先……カメラの回っていないところでも、さんまさんを見続けてきた。人間としての彼は、お笑い怪獣と同じかそれ以上に魅力的だ。本人に了解して貰うのにも、執筆にも相当な時間を費やしたが、その甲斐はあったと思う。怪物でありながら、とびきり魅力的な人間が教えてくれた、仕事への向き合い方、人との接し方、人生の楽しみ方が少しでも伝われば嬉しく思う。
(よしかわ・けいぞう 映像プロデューサー)
著者プロフィール
吉川圭三
ヨシカワ・ケイゾウ
1957(昭和32)年東京下町生まれ。早稲田大学理工学部卒。1982年日本テレビ入社、「世界まる見え!テレビ特捜部」「笑ってコラえて!」等のヒット番組を手掛ける。ドワンゴ、KADOKAWAを経て2025年10月現在は映像プロデューサー。『たけし、さんま、所の「すごい」仕事現場』等著書多数。


































