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43歳頂点論

角幡唯介/著

1,034円(税込)

発売日:2025/11/17

  • 新書
  • 電子書籍あり

気力、体力、経験──。己の最適解を見出せ! 極地探検家による比類なき人生論。

植村直己、長谷川恒男、星野道夫──名だたる冒険家やクライマーが、なぜか同じ年齢で命を落とす。背後にあるのは、歳とともに落ちる体力と上がっていく経験値とのギャップ、すなわち「魔の領域」だ。二十代の頃、「体力の衰えは経験でカバーできる」と語る先達を「心中ひそかにバカにしていた」著者が、五十代を前に「その言葉は衰退の言い訳ではなく真理」だと思い至るまで、極地探検家ならではの圧倒的人間論!

目次

はじめに
いつのまにか四十八歳になっていた/非日常が日常に/身体を信頼できない/経験がもたらす負の側面/できるとわかっていることをやることに意味はあるのか/肉体の盛衰のなかで生きる/四十三歳が人生の全盛期

第一章 四十三歳までの膨張期
脱兎のごとく逃げる山/小学生の私が考えた人生の目的/生きようと希求する運動体/オリジナルな生き方/探検というオリジナル/ツアンポー探検のために生きていた/『月と六ペンス』が描く生きるに値する人生/何割の生還確率ならつっこむのか/自己存在証明の旅/中嶋正宏と権力意志/悲痛なほどの切実さ/上温湯隆の〈真実〉/生ける屍になりたくない/二十代がもつ純粋さ/人生の黄金期としての三十代/生きるという運動/終わりのないプロセス/虚無的人間たちによる近代の冒険/死の余白/ツアンポー探検における死の余白

第二章 頂点としての四十三歳
勝負は三十代/人生という作品の完成度/人は三十代で人生最高の作品をしあげることができる/熱さと勢いが人の胸をゆさぶる/四十三歳で遭難した冒険家/なぜ四十三歳なのか/話はそう簡単ではなかった/いつの間にか頂上を通過していた/四十三歳が近づいてわかった「焦り」/植村直己はなぜ冬のデナリで消息を絶ったのか/思いつく場としての人間/植村直己の焦り/目的の見えないデナリ/デナリと南極はどうつながるのか/K2西壁における衝撃的遭難/自分は全力で生きているのか/平出和也の四十三歳/〈自分の山〉としてのK2西壁/崇高の領域

第三章 四十三歳以降の減退期
以前の四十代のイメージ/取材をやめた理由/中年の自由/偶然による思いつきが人生の固有度を高める/行動の変化/到達=若さ、漂泊=深さ/ただの存在になれること/開高健の荒地/荒地からの呼び声/年齢にふさわしい生き様/三島由紀夫の荒野と絶対者/〈絶対者〉と究極の山/四十五歳でなければならぬ/五十代が楽しみだ──/五十代をどう迎えるか/二十代にはもどりたくないという感覚/あと二十年をどう生きるか/活動をしぼることによる可能性

あとがき

書誌情報

読み仮名 ヨンジュウサンサイチョウテンロン
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
雑誌から生まれた本 小説新潮から生まれた本
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 240ページ
ISBN 978-4-10-611106-8
C-CODE 0240
整理番号 1106
ジャンル 自伝・伝記、サイエンス・テクノロジー
定価 1,034円
電子書籍 価格 1,034円
電子書籍 配信開始日 2025/11/17

蘊蓄倉庫

気力、体力、経験──。人生の全盛期に必要なものとは何か? 著名な冒険家は、なぜ同じ歳で命を落とすのか? 極地探検家によるはじめての人間論!

 植村直己、長谷川恒男、星野道夫──名だたる冒険家やクライマーが、なぜか同じ年齢で命を落とす。背後にあるのは、歳とともに落ちる体力と上がっていく経験値とのギャップ、すなわち「魔の領域」だ。二十代の頃、「体力の衰えは経験でカバーできる」と語る先達を「心中ひそかにバカにしていた」著者が、五十代を前に「その言葉は衰退の言い訳ではなく真理」だと思い至るまで、極地探検家ならではの圧倒的人間論! 

掲載:2025年11月25日

担当編集者のひとこと

「いまが人生で一番楽しい」探検家・角幡唯介、49歳の現在地。

 デビュー作『空白の五マイル』でチベットの秘境ツァンポー峡谷を踏査し、『極夜行』で陽の登らない極夜の北極を歩き、近刊の『地図なき山』では広大な日高山脈に地図を持たずに分け入る──。
 誰も思いつかないような探検を次々と実践してきた角幡唯介さんは、どのような行動原理で活動を続けてきたのか? その思考に触れられるのが本書『43歳頂点論』です。
 本書の刊行時、角幡さんは49歳。なぜいま、「年齢論」を書こうとしたのか? 角幡さんはその理由をこう綴っています。

〈なぜ今かというと、私はこれを今書きたいと思ったからだ。
 もしほかの仕事を優先して来年以降に先延ばししたら、これとはべつに書きたいことが出てきて、このテーマで書くことは金輪際なくなるだろう。文章作品の執筆とはそういうもので、機会をのがすと永久に書くことができなくなる。
 いや執筆にかぎらずあらゆる行為にそれはいえる。〉

 つまり、その時々で「いまやりたいこと」を行い、それを積み重ねてきた結果、現在がある、というのです。
 では、「いまやりたいこと」はどのように生まれるのか?
 それは、「偶然」と「思いつき」によるものだと角幡さんは書いています。
「偶然」とは、その人のみに訪れる〈固有の出来事〉であり、〈そのような固有の出来事がきっかけで人は何かをやろうと思いつく〉。そして、〈この偶然による思いつき〉に従って次の行動を決めることで、〈各人はそれぞれ固有の生き方を歩むこと〉ができる、というのです。
 49歳になり、〈いまが人生で一番楽しい〉〈50代が楽しみだ〉という角幡さん。
 読者である私たちも、自分に訪れた「偶然」と、そこで生まれる「思いつき」に耳を澄ます感性を取り戻したいと願わずにはいられない一冊です。

2025/11/25

著者プロフィール

角幡唯介

カクハタ・ユウスケ

1976(昭和51)年北海道生まれ。探検家・作家。チベット奥地の峡谷や、極夜の北極など独創的な探検を行い、近年は地球最北部で犬橇長期旅行を実践する。『空白の五マイル』『アグルーカの行方』『漂流』『極夜行』『裸の大地』(第一部・第二部)『地図なき山』など著書多数。

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