
日本漁業の不都合な真実
990円(税込)
発売日:2025/12/17
- 新書
- 電子書籍あり
メディアが騒ぐ「乱獲」「資源減少」は本当か? 衰退の真相を暴く!
日本漁業が危うい。担い手は減り続け、生産量は40年前から7割減、30年後には漁業者がいなくなり、日本人の食卓から国産魚が消えるという声もある。中国との漁獲競争、温暖化による環境変化、エネルギーコスト上昇など、かつて世界一の漁獲量を誇った漁業を取りまく状況は極めて深刻だ。輸出拡大や企業進出、資源管理など、国が進める水産業改革は本当に有効なのか──漁業と魚食文化を守るために、渾身の論考!
まえがき
1 なぜ今になって「海業」復活なのか
産業化で変わる漁村/バブル崩壊で挫折した「海業」/「海業」をゾンビ化させた新自由主義/宇沢弘文「社会的共通資本」という考え方
2 世界的な食料不足に日本は対処できるのか
人口減少とグローバリゼーション/世界人口100億人で食料争奪戦/現実となりつつある「マルサスの罠」/種子と肥料の大半を海外に依存/輸入ストップで日本人は芋食に戻る/時代に逆行する予算の大幅減/日本の農業保護は消費者頼み
3 なぜ漁業が食料安全保障の切り札なのか
マルサスやミルが見落とした「海と漁業」/人工肉や昆虫食より天然の魚介を/世界トップクラスの寿命をもたらす魚食文化
4 温暖化によって水産資源はどう変わるのか
農畜産業の発展は地球温暖化の主要因/肉食を減らす先進諸国、肉食を増やす日本/1度の水温上昇が魚介類に多大な影響/北の海ではサンマ、サケからイワシ、ブリへ/鹿児島ではサメ、ブダイ、グルクン類が急増/有用魚は保護、害魚は駆除という身勝手/採算の取れないサンマよりマイワシの有効利用/「ブリコラージュ」としての漁業と魚食文化
5 メディアが騒ぐ「乱獲」「資源減少」は本当か
地球を一周する海洋大循環と近海の海流/経済成長してはならない産業/タラとオヒョウ、歴史的な失敗例/ハーディン「コモンズの悲劇」とは何か/「漁業期節」が象徴する資源管理の有効性/「乱獲」「資源減少」メディアの偏向/漁業における最大持続生産量/獲っても減らない水産資源/「乱獲」は種の絶滅を招かない/何が種の絶滅をもたらすのか/人工種苗や養殖生産への疑問
6 急伸する中国漁業、日本は競争に耐えられるのか
日本海でのスルメイカ漁獲競争/中国と台湾の「先獲り」/中国漁業の海外進出、日本は一人負け/国境産業としての漁業の重要性
7 減少一途、担い手を確保できるのか
漁業者は20年で半減/外国人労働力の導入、機械化による省人化/Z世代は「しんどい」漁業を選ばない/漁業を職業の選択肢にするために/市場万能主義がもたらした食料自給率低下/食料「有事」を防ぐ直接支払い制度
8 若者世代の魚食はどう変質したのか
若者世代の4つの新たな志向/サンマよりマイクロプラスチック?/鮮度や味より「クリーン」が大事/生きるためより「映える」ための「食」/「タイパ」「機能性」では肉に敵わない/国産水産物は高級な嗜好品に
9 法改正と政策転換で日本漁業は再起できるのか
猛スピードで進められた漁業法改正/安倍政権下で進められた一大改革/アウトプットコントロールとTAC法/資本による資源独占の大きなリスク/存在意義を問われる漁協
10 養殖業はほんとうに成長を期待できるのか
漁業権の主体は漁協から自治体へ/養殖経営は漁家から企業主体へ/養殖ブリの3割は大規模企業型経営体の産物/主体の転換には時間がかかる/あふれる過剰評価と養殖の現実/資本・労働・漁場+市場/労働力と漁場はすでに限界/ICT・AI活用から完全工業化まで、様々な技術開発/種苗も餌もあまりに足りない/生産の3要素、生かすも殺すも市場次第
11 「養殖サーモン」はなぜ世界で成功したのか
サーモンとは何か?/日本におけるサーモン養殖小史/全国に広がった「ご当地サーモン」養殖/サーモン養殖にも様々なハードル/「閉鎖循環式陸上養殖」に未来はあるか/魚類養殖業をリサイクル型産業に
12 日本人は魚食文化を守れるのか
世界はなぜ魚を食べだしたのか/価格競争力をもつ輸出水産物の6類型/環境規制の厳しい欧州、政治要因が絡む中国/国内水産物市場への円安の影響/日本産水産物は日本人ではなく外国人へ/未来の日本の魚食に向けて
あとがき
書誌情報
| 読み仮名 | ニホンギョギョウノフツゴウナシンジツ |
|---|---|
| シリーズ名 | 新潮新書 |
| 装幀 | 新潮社装幀室/デザイン |
| 発行形態 | 新書、電子書籍 |
| 判型 | 新潮新書 |
| 頁数 | 224ページ |
| ISBN | 978-4-10-611109-9 |
| C-CODE | 0262 |
| 整理番号 | 1109 |
| ジャンル | ビジネス・経済、産業研究、サイエンス・テクノロジー |
| 定価 | 990円 |
| 電子書籍 価格 | 990円 |
| 電子書籍 配信開始日 | 2025/12/17 |
担当編集者のひとこと
伝統の魚食文化に迫る危機
今年はまだよかったものの、脂がのった旬のサンマや大ぶりなスルメイカが100円程度で買えた時代を思うと、解凍ものや加工品ばかりのスーパーの鮮魚売り場は、値札の割にずいぶんさびしくなった気がします。
担い手が減って漁獲が減り、あらゆるコストが増えて値段が上がるのは当然のことながら、消費者はともかく漁業の専門家たちの危機感は年々深まる一方です。
本書では、前著『日本人が知らない漁業の大問題』に続いて、日本漁業の構造問題を多角的に掘り下げます。日本人の食糧自給に黄信号がともったコメ騒動は記憶に新しいですが、漁業もまた「30年後には国産魚が食べられなくなる」とまで言われる状況にあります。いったい、どうすればこの苦境を好転させられるのか……世界に誇る魚食文化を持つ日本人だからこそ、知っておきたい真実がつづられています。
2025/12/25
著者プロフィール
佐野雅昭
サノ・マサアキ
1962(昭和37)年大阪府生まれ。鹿児島大学水産学部教授。京都大学法学部卒。東京水産大学修士課程、水産庁を経て北海道大学水産学研究科で博士号取得。専門は水産物流通。主な著書に『サケの世界市場』(漁業経済学会学会賞)『日本人が知らない漁業の大問題』など。


































