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今月の表紙の筆蹟/イラストは、いしいひさいちさん。

波 2026年1月号

(毎月27日発売)

100円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2025/12/26

発売日 2025/12/26
JANコード 4912068230168
定価 100円(税込)
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筒井康隆/エスニック渉猟 シリーズ第30回
阿川佐和子/やっぱり残るは食欲 第100回
【丸谷才一『今は何時ですか?』刊行記念特集】
平松洋子/音楽は鳴り止まない
鈴木結生/喪の語り
【酒井順子『ひのえうまに生まれて─300年の呪いを解く─』刊行記念】
[鼎談]鈴木保奈美×吉川 徹×酒井順子/ひのえうまに生まれて生きる私たち
いしいひさいち『剽窃新潮』
南 信長/愛すべき偏屈小説家・広岡達三の近況報告

ヴェロニク・オヴァルデ、村松 潔 訳『わたしたちの不完全な人生へ』(新潮クレスト・ブックス)
津村記久子/不完全な人々の静かな共助

原田マハ『晴れの日の木馬たち』
川村 湊/道を切り拓く女性たちの文壇小説

間宮改衣『弔いのひ』
大森時生/ファミリア

森まゆみ『温泉放浪記』
南 伸坊/この本は買って読んだほうがいいと思う

ポール・オースター、柴田元幸 訳『バウムガートナー』
マーサ・ナカムラ/「一巻の終わり」は無限の広がり

千葉ともこ『飲中八仙歌─杜甫と李白─』
高芝麻子/唐を駆ける杜甫と酒豪たち

渡辺京二『私の幕末維新史』(新潮選書)
田中優子/歴史的人物の矛盾をそのままに見る眼差し

オッドジョブ 絵、たけむらたけし 文『アイラブみー うまれたことがなんですごいの?』
藤本美貴/「自分を大切にする」という「刷り込み」
【三島由紀夫生誕100年記念】
[対談]四方田犬彦×平野啓一郎/私たちの中に生きている三島
【特別掲載】
黒柳徹子/向田邦子さんのこと──『トットあした』より
【私の好きな新潮文庫】
田中希実/物語とともに
 ルーシー・モード・モンゴメリ、村岡花子 訳『赤毛のアン』
 梨木香歩『からくりからくさ』
 ヘッセ、高橋健二 訳『シッダールタ』

【今月の新潮文庫】
ジョン・グリシャム、白石 朗 訳『判事の殺人リスト(上・下)』
田村和大/レイシーに幸あれ
【新潮文庫一行大賞】
中高生のためのワタシの一行大賞受賞作品発表
【コラム】
小澤 實/俳句と職業

[とんぼの本]編集室だより

野口憲一『コメ関税ゼロで日本農業の夜は明ける』(新潮新書)
野口憲一/壊すか、設計し直すか──農業改革における農協とAI
【連載】
椎名 誠/こんな友だちがいた 第17回
古市憲寿/絶対に挫折しない教養入門 第5回
高木 徹/東京裁判 11人の判事たち 第2回
中村うさぎ/老後破産の女王 第22回
高嶋政伸/おつむの良い子は長居しない 最終回
下重暁子/九十歳、それがどうした 第8回
内田 樹/カミュ論 第34回
大木 毅/錯誤の波濤 海軍士官たちの太平洋戦争 第10回
編輯後記 いま話題の本 新刊案内 編集長から

立ち読み

編集長から

今月の表紙の筆蹟/イラストは、いしいひさいちさん。

◎黒川博行さんの疫病神シリーズがくいくい読める理由の一つは、主人公二宮の三人称視点の中で主語の省略と内的独白を駆使して、文体に速度と緊張と感情移入力を増大させているため。例えば、「そんなもん、出たとこ勝負やないか。おれは巻物を落としたんやぞ。あの巻物がなかったら、どうせ大阪には帰れんのや──。/ビルに近づいた。一階のラーメン屋と牛丼屋は開いている。そのあいだの玄関に、二宮は入った」(黒川博行『螻蛄』)。
◎主語を省いても成立する日本語の特性を黒川さんは三人称小説で巧く活用しているのですが、はっきり語り手はなりなりなのに一人称を使わずに押し通すのが開高健『耳の物語』や北村薫さんの覆面作家シリーズ。また(以下ネタバレ)帚木蓬生さん『逃亡』と長部日出雄『映画監督』は共に逃げる男が一人称省略で語り続けた挙句、末尾で「私」や「ぼく」が遂に現れ効果満点。
◎『筒井康隆自伝』の語り手は、筒井さんらしく「おれ」。一見ストレートな一人称ですが、佐々木敦さんが指摘しているように(「新潮」一月号)、「笑いと超現実──青年中期」の章の数箇所だけ、「ぼく」が登場します。この章、「おれが同志社大学に」云々と始まりながらも、学生時代に出た芝居やマルクス兄弟の映画の話になると初々しく語り出す「ぼく」──。これで思い出したのは筒井さんの名作『旅のラゴス』での、ラゴスこと「おれ」が幾つかの旅の後、ある村で工業農芸等の実用書から歴史政治経済学、更に小説や医学科学哲学書まで耽読し、合間に結婚して子まで生すと、「わたし」に変化している離れ技。知的な興奮と成熟を一人称の交代で表すのは『自伝』と好一対で、ラゴスが筒井さんに見えてきます。あるいはその逆?
▽次号の刊行は一月二十七日です。

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。