今月の表紙の筆蹟/絵は、近藤ようこさん。
波 2025年10月号
(毎月27日発売)
発売日 | 2025/09/27 |
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JANコード | 4910068231055 |
定価 | 100円(税込) |
筒井康隆/正直者 シリーズ第27回
阿川佐和子/やっぱり残るは食欲 第97回
【漫画『家守綺譚』刊行記念】
[対談]近藤ようこ×梨木香歩/行間が、ここまで絵にできるなんて
【角田光代『神さまショッピング』刊行記念特集】
鏡 リュウジ/アゲ鑑定と「信じる」のあいだで
大森静佳/彷徨を続けるための体力
岡ノ谷一夫『人間の心が分からなかった俺が、動物心理学者になるまで』
朝井リョウ/リラックスにストイック
カテジナ・トゥチコヴァー、阿部賢一 訳、豊島美波 訳『ジートコヴァーの最後の女神たち』(新潮クレスト・ブックス)
高山羽根子/「女神」という名の「呪い」
燃え殻『これはいつかのあなたとわたし』
戌井昭人/なんだか救われていくような気がしてくる
三浦 篤、森村泰昌『キテレツ絵画の逆襲─「日本洋画」再発見─』
伊野孝行/「洋画」は訛りが面白い!
【福岡伸一『生命と時間のあいだ』刊行記念】
[対談]落合陽一さんに、万博で「ご近所」の福岡伸一が聞く
【小泉 悠書評二本立て】
【今月の新潮選書】
鈴木一人『地経学とは何か─経済が武器化する時代の戦略思考─』
小泉 悠/「ラスボス」が語る地経学入門
【今月の新潮文庫】
ミハイル・ブルガーコフ、石井信介 訳『巨匠とマルガリータ』
小泉 悠/ブルガーコフの魔術が描く「読んで楽しい地獄」
【阿刀田 高『90歳、男のひとり暮らし』(新潮選書)刊行記念特集】
川本三郎/独居老人の「暢気」
[対談]阿刀田 高×黒井千次/90代の歩き方
【祝! 『しゃばけ』アニメ化記念特集】
ペリー荻野/「登場人物」に聞いてみた! 特別記者会見
大川貴大/大切な「居場所」を求めて
【紀行エッセイ】
鰻 和弘(銀シャリ・漫才師)/アースヒューマンになりたい 前編
【リツ・ムケルジ、小西敦子 訳『裁きのメス』著者来社リポート】
リツ・ムケルジ/医学と歴史の交わるところ
【今月の新潮文庫】
マリアーナ・エンリケス、宮崎真紀 訳『秘儀』(上・下)
朝宮運河/ホラーだからこそ描ける世界のありよう
【コラム】
小澤 實/俳句と職業
山口亮子『コメ壊滅』(新潮新書)
山口亮子/消費者悩ます米価の二極分化
[とんぼの本]編集室だより
【連載】
椎名 誠/こんな友だちがいた 第14回
中村うさぎ/老後破産の女王 第19回
古市憲寿/絶対に挫折しない教養入門 第2回
下重暁子/九十歳、それがどうした 第5回
梨木香歩/猫ヤナギ芽ぶく 第22回
三宅香帆/推しとハレ 最終回
大木 毅/錯誤の波濤 海軍士官たちの太平洋戦争 第7回
高嶋政伸/おつむの良い子は長居しない 第19回
第24回 小林秀雄賞・新潮ドキュメント賞決定発表
編輯後記 いま話題の本 新刊案内 編集長から
立ち読み
編集長から
今月の表紙の筆蹟/絵は、近藤ようこさん。
◎今年も「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」(伊東蒼も凄かった!)「敵」等、河合優実の仕事に圧倒され続けましたが、就中、高知生れとしては朝ドラ 「あんぱん」(脚本中園ミホ) の蘭子役には泣かされっぱなし。川本三郎さんもあのドラマの熱心な視聴者で、あれこれ感想を喋り合ううち、母親(江口のりこ)が蘭子を出征直前の豪ちゃん(細田佳央太)の家へ送り出す感動的な場面の話になって、川本さん曰く「あそこは「また逢う日まで」(脚本水木洋子他)を巧く換骨奪胎していましたね」。確かにあの映画でも、出征する恋人と夜を過ごす決意をした久我美子に母の杉村春子が「いっておあげなさい」と背中を押します。後で『今ひとたびの戦後日本映画』(川本三郎著)を開くと、傑作ドラマ 「あ・うん」(脚本向田邦子) 末尾で岸本加世子が出征する恋人を追う名場面(父親の親友杉浦直樹が「今晩は一晩中、そばにいなさい」と励まし両親も黙認する)もこの久我+杉村から来ているのでは、と指摘していました。ここから水木洋子・向田邦子・中園ミホという脚本家の系譜が見えてきます。
◎難しい状況にある恋人たちの新枕の扱いは『源氏物語』以来、作者の腕の見せ所で、例えば三島由紀夫『春の雪』。主人公の清顕が皇族との婚約が決まった幼馴染の聡子と禁忌を踏み越える場面は劇的、かつ、聡子の着物が「ぬぐやまつはる紐いろいろ」(杉田久女)ふうになるのへ清顕が奮闘するのも実に艶冶。
◎新枕の逆、最後の褥を何と呼ぶか知りませんが、三島がそこに挑んだのが「憂国」。新婚故に二・二六の蹶起へ誘われなかった中尉は自刃を決めて……。この作品、三島の脚色・監督・主演で映画化(短篇)されながら封印され、ほぼ三島全集にDVDが収録されたきりでしたが、遂にこの秋(十一月)シネマヴェーラ渋谷で久々のフィルム上映決定。必見!?
▽次号の刊行は十月二十八日です。
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雑誌から生まれた本
波とは?

1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。
創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。
創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。
現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。