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伝説の作家の魅力あふれる処女作から「最後の作品」まで


 生誕一〇〇年を迎えたサリンジャーの半生を描く映画「ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー」が公開中です(TOHOシネマズシャンテほか)。
 デビュー作「若者たち」が雑誌に掲載されるなど、ようやく作家として頭角を現し始めた矢先に、第二次世界大戦が勃発し従軍。地獄のような戦場でもひたすら書き続けたサリンジャーは、1950年、ついに『ライ麦畑でつかまえて』を完成させます。その後、彼は名声ゆえに傷つくことになり、隠遁生活に入って、生きながら伝説の作家になっていきます。
 昨年刊行された『このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる/ハプワース16、1924年』(金原瑞人訳)には「若者たち」ほか、『ライ麦』の主人公ホールデン少年が登場する「マディソン・アヴェニューのはずれでのささいな抵抗」など初期短篇八作と、生前最後の発表作「ハプワース16、1924年」が収録されています。これは『フラニーとズーイ』(新潮文庫)などにつらなる〈グラース家〉をめぐる作品です。金原さんによると初期の短篇は「すべて完璧といっていい」。
 収録作はいずれも米国内では書籍化されていない入手困難な作品。知られざる魅力を、ぜひご堪能ください。

波 2019年2月号「新潮社の新刊案内」より

著者紹介

J・D・サリンジャーSalinger,Jerome David

(1919-2010)1919年1月1日ニューヨーク市生れ。1940年に短篇「若者たち」でデビュー。1942年陸軍に入隊し、1944年ノルマンディー上陸作戦に参加した。戦争を挟んで多くの短篇小説を執筆する。1951年に長篇小説『キャッチャー・イン・ザ・ライ』を刊行、2022年7月現在までに全世界で6500万部を超える大ベストセラーとなった。1953年の『ナイン・ストーリーズ』刊行の後、ニューハンプシャー州コーニッシュに隠遁。『ナイン・ストーリーズ』所収の諸作品に始まる〈グラース家〉の物語を『フラニーとズーイ』(1961年)、『大工よ、屋根の梁を高く上げよ/シーモア―序章―』(1963年)と書き継いだが、1965年6月、「ニューヨーカー」誌にシーモア・グラースを語り手とする「ハプワース16、1924年」を発表以後、沈黙を続けた。2010年1月27日没。

金原瑞人カネハラ・ミズヒト

1954(昭和29)年岡山県生れ。翻訳家、英文学者。法政大学社会学部教授。著書『翻訳エクササイズ』『翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった』『サリンジャーに、マティーニを教わった』のほか、サリンジャー『このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる ハプワース16、1924年』、モーム『月と六ペンス』『人間の絆(上・下)』、ヘミングウェイ『武器よさらば(上・下)』、カート・ヴォネガット『国のない男』、アレックス・シアラー『青空のむこう』など訳書多数。

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