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いま注目の1冊!

なおも増刷が続く名作あらためて注目されるカミュ

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 終わりの見えないコロナ禍のなか、感染症との闘いを描いたカミュの『ペスト』(宮崎嶺雄訳、新潮文庫)への関心が高まっています。2月以降で36万部余を増刷、累計発行部数は125万部となりました(5月11日現在)。新潮文庫には『異邦人』をはじめ今は7冊のカミュ作品がありますが、『ペスト』以外の作品もまた読まれ始めています。
 ノーベル文学賞も受賞した20世紀を代表する人気作家にあらためて注目が集まっている格好ですが、これまで新潮社では様々な形でカミュ作品を刊行してきました。1951年の『異邦人』単行本に始まり、『現代世界文学全集』(1952年)、『世界文学全集』(1960年)、『新潮世界文学』(1968年)と、3回の世界文学全集に収録。最初の全集では『異邦人・ペスト』が第一回配本を飾っています。個人全集も2回編まれ、新潮文庫には『異邦人』が1954年、『ペスト』は1955年にまず上下巻で収録されています(現在の新版は1969年刊)。
 異色なのは『革命か反抗か』。いわゆる「カミュ・サルトル論争」を受けてフランスの雑誌論文から日本独自に編まれたもので、まずは当時新潮社が出していた「一時間文庫」という教養新書の一冊として1953年に刊行されています。新潮文庫の7冊にはそんな歴史も刻まれているのです。

波 2020年6月号「新潮社の新刊案内」より

著者紹介

カミュCamus,Albert

(1913-1960)アルジェリア生れ。フランス人入植者の父が幼時に戦死、不自由な子供時代を送る。高等中学(リセ)の師の影響で文学に目覚める。アルジェ大学卒業後、新聞記者となり、第2次大戦時は反戦記事を書き活躍。またアマチュア劇団の活動に情熱を注ぐ。1942年『異邦人』が絶賛され、『ペスト』『カリギュラ』等で地位を固めるが、1951年『反抗的人間』を巡りサルトルと論争し、次第に孤立。以後、持病の肺病と闘いつつ、『転落』等を発表。1957年ノーベル文学賞受賞。1960年1月パリ近郊において交通事故で死亡。

宮崎嶺雄ミヤザキ・ミネオ

(1908-1980)東京生れ。東京帝大心理学科中退。岸田国士に師事、バルザック、サンド、メリメ、カミュ等、多くの仏文学を翻訳紹介。1941年、フランス文学賞受賞。戦後創元社編集長を務めた。

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