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今月の表紙の筆蹟は、黒田夏子さん。

波 2020年6月号

(毎月27日発売)

100円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2020/05/27

発売日 2020/05/27
JANコード 4910068230607
定価 100円(税込)
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阿川佐和子/やっぱり残るは食欲 第33回
【特集 コロナ禍のもとで】
ブレイディみかこ/ブライトン・ロック(ダウン)日記
[超短篇小説]バリー・ユアグロー、柴田元幸 訳/ボッティチェリ
【黒田夏子『組曲 わすれこうじ』刊行記念】
[往復書簡]黒田夏子×川上未映子/「書く」べき何かと、「読む」を超えた欲望
【天童荒太『迷子のままで』刊行記念】
[インタビュー]天童荒太/騙されることこそ悪である
ベルナルド・アチャガ、金子奈美/訳『アコーディオン弾きの息子』
東山彰良/幸せになるために必要なすべて

佐藤 優『この不寛容の時代に―ヒトラー『わが闘争』を読む―』
須賀しのぶ/不寛容への抵抗

古野まほろ『新任警視』
村上貴史/またしても新鮮な衝撃

香月夕花『昨日壊れはじめた世界で』
瀧井朝世/世界を作るのは私たち

【ドミニク・チェン『未来をつくる言葉―わかりあえなさをつなぐために―』刊行記念】
[対談]ドミニク・チェン×森田真生/未来をつくる言葉を語ろう

カミュ、宮崎嶺雄/訳『ペスト』(新潮文庫)
仲野 徹/『ペスト』改メ通し狂言『こくびょうれんじゅう阿爾及あるじぇりあ
【短篇小説】
デルモア・シュワルツ 小澤身和子 訳/夢のなかで責任がはじまる
〈解説〉高崎俊夫/デルモア・シュワルツと坪内祐三
【短期集中連載】
小林信彦/『決定版 日本の喜劇人』最終章・改 最終回
【新潮選書特集】
斎藤 環、與那覇 潤『心を病んだらいけないの?―うつ病社会の処方箋―』
[対談]斎藤 環×與那覇 潤/トイレットペーパーはなぜ消えたのか?

待鳥聡史『政治改革再考―変貌を遂げた国家の軌跡―』
清水真人/令和が引き継ぐ未完の「第三の憲法体制」

坪木和久『激甚気象はなぜ起こる』
安藤 淳/台風に突っ込んだ研究者が書いた、日本の気象のすべて
【私の好きな新潮文庫】
原田眞人/歴史は人物を通して学ぶ
 司馬遼太郎『燃えよ剣(上・下)』
 司馬遼太郎『国盗り物語(一〜四)』
 司馬遼太郎『胡蝶の夢(一〜四)』
【今月の新潮文庫】
佐野徹夜『さよなら世界の終わり』(新潮文庫 nex)
佐野徹夜/僕は小説が好きだ
【コラム】
[とんぼの本]
とんぼの本編集室だより

三枝昂之・小澤 實/掌のうた

[新潮新書]
上原善広『断薬記―私がうつ病の薬をやめた理由―』
上原善広/うつによる薬物依存からの脱出体験記
【連載】
永田和宏/あなたと出会って、それから…… 第6回
南沢奈央 イラスト・黒田硫黄/今日も寄席に行きたくなって 第6回
バリー・ユアグロー 柴田元幸 訳/オヤジギャグの華 第14回
小松 貴/にっぽん怪虫記 第6回
川本三郎/荷風の昭和 第25回
編輯後記 新潮社の新刊案内 編集長から

立ち読み

編集長から

今月の表紙の筆蹟は、黒田夏子さん。

◎バッハの「ゴルトベルク変奏曲」は映画でよく使われ、「羊たちの沈黙」や「時をかける少女」や「そして父になる」でもかかっていました。ただ昨年は「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」「COLD WAR あの歌、2つの心」「よこがお」と立て続けに流れて、どれもすごくいい映画なのに、こう続くと少しモヤモヤして……。
◎逆の場合もあって、例えば「満鉄小唄」。この猥歌の傑作は朝鮮人娼婦が嘆く設定で、「彼女らの濁音なし日本語を模しながら、客である満鉄社員を痛烈に批判ないし諷刺する猥歌で、昭和前半左派知識人の自虐的感懐を巧みな話術で表現すること、高見順の小説に近い」(丸谷才一「替唄考」)。
◎「日本春歌考」で吉田日出子さんが〽雨のしょぽしょぽ降る晩に、と歌う場面には胸が震えました。その後、この唄を「懲役太郎 まむしの兄弟」で川地民夫がハーモニカで吹き、「日本暴力列島 京阪神殺しの軍団」で梅宮辰夫と小林旭が歌った時もまた心動かされます。バッハより猥歌の方が普遍性(?)を持つのは、音楽と登場人物の結びつきがより鮮明なせいでしょうか。
谷川俊太郎さんに「本当の事を言おうか」という一行があって、これを踏まえ大江健三郎さんの『万延元年のフットボール』では兄弟が「本当の事をいおうか」と対立し、圧倒的な終局を迎えます。先日川上弘美さんの『センセイの鞄』を再読すると、重要な箇所に「一度だけ、センセイが携帯電話をかけてくれたときの話をしようか」とあり(「本当の事を〜」の変奏に思えます)、やはり感動しました。何より主人公に〈この言葉遣いをするしかない〉という切実な心情を感じて、胸をつかれたのです。
▽次号の刊行は六月二十七日です。

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。