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いま注目の1冊!

祝・小林秀雄賞受賞!
一方通行ではない言葉の運動。

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 第19回小林秀雄賞を受賞した『心を病んだらいけないの?―うつ病社会の処方箋―』は、「ひきこもり」を専門とする精神科医の斎藤環さんと、「うつ」を体験した歴史学者の與那覇潤さんによる対談本です。
「友達」「家族」「お金」「仕事」など、今の社会を生きづらくしている9つの要因について2人が話し合うという体裁ですが、その内容は「人生相談」にとどまりません。與那覇さんの歴史家としてのさががそうさせるのか、各問題を論じていくうちに、平成という時代が鮮やかに浮き彫りになっていくような構成になっています。
 それを受けて、選考委員からも、「書名をはるかに超えた、射程の広い見事な『平成史』。本書自体が『オープンダイアローグ』であり、一方通行ではない言葉の運動から生まれる、現代の俯瞰図である」と高い評価を受けました。
「オープンダイアローグ」とは、近年、斎藤さんが普及啓発に力を入れている手法で、治療者―患者の上下関係を取り払い、複数の人びとが「対等な立場」で“雑談”をしているうちに患者の回復がもたらされるというフィンランド発の対話の実践です。「一方通行ではない言葉の運動」の驚くべき効果を、ぜひ本書でご確認ください。

波 2020年11月号「新潮社の新刊案内」より

著者紹介

斎藤環サイトウ・タマキ

1961年、岩手県生まれ。精神科医。筑波大学医学研究科博士課程修了。爽風会佐々木病院等を経て、筑波大学医学医療系社会精神保健学教授。専門は思春期・青年期の精神病理学、「ひきこもり」の治療・支援ならびに啓蒙活動。著書に『社会的ひきこもり』、『中高年ひきこもり』、『世界が土曜の夜の夢なら』(角川財団学芸賞)、『オープンダイアローグとは何か』、『「社会的うつ病」の治し方』ほか多数。

與那覇潤ヨナハ・ジュン

1979年、神奈川県生まれ。歴史学者。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。学者時代の専門は日本近代史。地方公立大学准教授として教鞭をとった後、双極性障害にともなう重度のうつにより退職。2018年に自身の病気と離職の体験を綴った『知性は死なない』が話題となる。著書に『中国化する日本』、『日本人はなぜ存在するか』、『歴史がおわるまえに』、『荒れ野の六十年』ほか多数。

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