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今月の表紙の筆蹟は、小川糸さん。

波 2020年11月号

(毎月27日発売)

100円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2020/10/27

発売日 2020/10/27
JANコード 4910068231109
定価 100円(税込)
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中野信子/「生産性」を失った「上級国民」が殺された
【小川 糸『とわの庭』刊行記念特集】
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新井見枝香/小川糸さんへの手紙
住野よる『この気持ちもいつか忘れる』
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カルミネ・アバーテ、関口英子 訳『海と山のオムレツ』(新潮クレスト・ブックス)
ヤマザキマリ/食という言語による文学

原 武史『「線」の思考―鉄道と宗教と天皇と―』
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坪内祐三『玉電松原物語』
岸本佐知子/坪センパイの世田谷

伊与原新『八月の銀の雪』
真鍋 真/文学がつなげてくれる地球とわたしたち

木下昌輝『戀童夢幻』
末國善己/衆道と芸能で戦国史を読み替える傑作歴史小説

村山祐介『エクソダス―アメリカ国境の狂気と祈り―』
池上 彰/「壁」問題ではなく貧困と治安の問題だ

木野内美里『「幸福のチョコレート」を探しにどこまでも』
福田里香/目と脳で味わうチョコレート

細田昌志『沢村忠に真空を飛ばせた男―昭和のプロモーター・野口修 評伝―』
水道橋博士/前人未踏の昭和史発掘。まさに巻を措く能わず!!

森まゆみ『またいつか歩きたい町―私の町並み紀行―』(とんぼの本)
山崎範子/町並みはみんなのもの

米本浩二『魂の邂逅―石牟礼道子と渡辺京二―』
梯 久美子/凄絶な孤独を抱えた二人の「道行き」

ばたこ『お義母さん、ちょっと黙ってください―くそばばあと私の泥仕合な日々―』
岸田奈美/このくそばばあが実在する奇跡

三島由紀夫『手長姫 英霊の声―1938-1966―』(新潮文庫)
石井遊佳/三島のロマン主義に思いを馳せる

道草晴子『よりみち日記』
古川 耕/「絶望の先に希望を描く」物語

春間豪太郎『草原の国キルギスで勇者になった男』
[著者エッセイ]春間豪太郎/RPG冒険家としての生き方

たかはしみき『リノベ暮らしはじめました』
[対談]たかはしみき×Emi/リノベで叶えた、こだわりの“私らしい空間”とは
【特別企画】
川本三郎/素顔のトルーマン・カポーティ
【短期集中連載『小説 イタリア・ルネサンス』をめぐって(二)】
塩野七生/新しい世界への扉はいつでも「男」だった
【私の好きな新潮文庫】
吉崎達彦/「マンボウ調」にあこがれて
 北 杜夫『どくとるマンボウ航海記
 司馬遼太郎『項羽と劉邦〕』
 玉岡かおる『お家さん〕』
【今月の新潮文庫】
矢樹 純『妻は忘れない』
東 えりか/特別な才能
【コラム】
[とんぼの本]
とんぼの本編集室だより

三枝昂之・小澤 實/掌のうた

小坪 遊『「池の水」抜くのは誰のため?―暴走する生き物愛―』(新潮新書)
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【連載】
ジェーン・スー/マイ・フェア・ダディ! 介護未満の父に娘ができること 第2回
南沢奈央 イラスト・黒田硫黄/今日も寄席に行きたくなって 第11回
二宮敦人/ぼくらは人間修行中 第2回
バリー・ユアグロー 柴田元幸 訳/オヤジギャグの華 第19回
永田和宏/あなたと出会って、それから…… 第11回
小松 貴/にっぽん怪虫記 第11回
川本三郎/荷風の昭和 第30回
第33回三島由紀夫賞山本周五郎賞決定発表
編輯後記 新潮社の新刊案内 編集長から

立ち読み

編集長から

今月の表紙の筆蹟は、小川糸さん。

◎「小説新潮」編集長を長く務めた川野黎子さんが亡くなりました。享年八九。僕は一緒に働いたことがなく、グラス片手の彼女しか知りません。酒豪で、文壇バアの常連で、「店が忙しいと女給もやらされてたの。まァ、そのへんの女の子達ホステスより私の方が気は利くし、話も面白いから仕方ない」。
◎編集部に大きなツギのある古いソファがあって、僕が「替えりゃいいのに」と呟くと、先輩が笑って「野坂昭如さんの原稿が落ちた時、川野さんがペーパーナイフで切り裂いた文学史的遺跡だから」。野坂さんの名前入りで刷り終った目次がどうにもならず、作家直筆の詫状の写真は載せたものの、編集長として慚愧と憤怒に耐えかねた川野さんが校了後の深夜、狼藉に及んだ由。
向田邦子さんの最初の小説を貰ったのも川野さんですが、「エッセイをお願いしてたのに、小説が来たから吃驚したのよ。だけど向田さんは原稿が遅かった。大学の同級生だから遠慮なく『十年早い!』つって怒ったんだけど、内容は最初から文句なし」。
◎例えば池波正太郎司馬遼太郎松本清張各氏の担当者でした。「清張先生に原稿を頂戴して、その場で感想を言うでしょ。帰社すると電話がきて、『編集長は何と?』。その後も『印刷所は?』『校閲者は?』『営業は?』『読者は?』とかかってくる。あの責任感は凄い。一々聞けないから私が毎回六種類は感想を作ってた。鍛えられました」。
◎俗物の僕が「池波、司馬、清張先生、男として誰が一番魅力的でした?」と訊ねると(川野さんは独身)、突如可憐にモジモジして、「お三方共お話は凄く面白かったけど……色気のあるのは池波さん」。下らないことばかり思い出してすみません。ご冥福を。
▽次号の刊行は十一月二十七日です。

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。