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きまぐれカプセル

星新一/著

693円(税込)

発売日:2026/08/28

  • 文庫
  • 電子書籍あり

書籍未収録エッセイ&新発見のショートショートを収録! 星新一生誕100年記念作品集。

空飛ぶ円盤に熱中した理由、5000年後に贈るタイムカプセルの中身、江戸川乱歩や小松左京、和田誠らとの親交──星新一が綴った多彩なエッセイから、書籍・文庫に未収録の作品を厳選。幼少期から晩年まで時系列に並んだ91編とショートショート3編で日本を代表するSF作家の軌跡をたどる。ユーモアと才気あふれる名文を盟友・真鍋博のカバーイラストでお届けする、生誕100年記念作品集。

目次

古い思い出
行きつけのお店 伊東屋
父の思い出
暗記と理解
わたしの十七歳
推理小説との出合い
清潔なロマン
学生服
夢
異常な明るさ
いまが夢
「小説新潮」と私
うきなす
空港の感傷
我流社交術
発明熱
なつかしい時代
碁石と円盤
空飛ぶ円盤
こまかい心づかい
わが小説「ボッコちゃん」
二つの番組
土曜会の記録
ダフ屋就任の弁
宇宙からの音楽
私の結婚
生命の無限の発展力
グッド・オールド・カメラ
三十年後の的中率
地上十一階の楽しみ
私の周辺
奇妙な雑誌
日録
夕梨花
宇宙ファン
ムダな時間のありがたさ
鏡と幻想
「小説現代」創刊の頃の私
ハワイの一日
ニューヨーク世界博を拝見
ローマ 東京
五千年後に何を贈るか
「花とひみつ」について
神秘性にとどめ
空想銀行
エレガントな酒
小さな帰郷
SFをしぼり出す空間
コント上達への秘けつ
意外な数
受賞の記
『二〇〇一年宇宙の旅』
心のひと品
要約の習慣
SF人の会合
空想的交通論
自然と人工 そして万国博
急ぐことの得失
人生のなかば
時間旅行
わが減量
時代物に手をそめて
私が最も影響を受けた小説
盲腸
本あれこれ
好きな道
中年と酒道
大衆のテレビへの迎合
破滅を前にこう生きる
ショート・ショート一〇〇〇編
洗練と毒
おやじを書くこと
このごろ
かぞえ年
美しい日本文
ヨーロッパの旅
作風について
電話の件
親孝行
自己開発
伊豆高原
ショートショート一〇〇一編
四季
自適
なぞ
唐詩
小さなアクセサリー
仕事
心に残る一冊
創造すること
死を語る

未収録ショートショート
聖地
未知の星で
地獄案内

解説 星マリナ

書誌情報

読み仮名 キマグレカプセル
シリーズ名 新潮文庫
装幀 真鍋博 《タイムマシーン》 「サイエンス」 1979年5月号 愛媛県美術館所蔵/カバー装画、新潮社装幀室/デザイン
発行形態 文庫、電子書籍
判型 新潮文庫
頁数 320ページ
ISBN 978-4-10-109855-5
C-CODE 0195
整理番号 ほ-4-55
定価 693円
電子書籍 価格 693円
電子書籍 配信開始日 2026/08/28

インタビュー/対談/エッセイ

星新一生誕100年

星新一って、こんな人

星マリナ

「ショートショートの神様」の書籍未収録エッセイと新発見のショートショートを収録した記念作品集『きまぐれカプセル』の編集過程で、娘が見つけた父の軌跡とは──。

「お父さんって、どんな人?」と、これまで数えきれないほど聞かれてきました。
「星新一の娘」を六十年以上もやっているのですから、答えをひとつ決めて、毎回それを言えばよかったのかもしれませんが、決まった答えはなく、毎回「うーん。ひとことで言うのはむずかしいんだけどなー」と悩みながらなんらかの回答をし、相手はたいてい「そうなんだ!」と感動してくれるということのくりかえしでここまできました。
 今回『きまぐれカプセル』の編集を通して、この本がその質問の答えになるのではないかと思うようになりました。ここに収録したエッセイは、「普段はこういう人なんですよ」という説明に使えそうなエピソードの宝庫です。

 ここで、『きまぐれカプセル』ができるまでの経緯をお話しします。2013年に刊行した『つぎはぎプラネット』(新潮文庫)の準備で未収録のショートショートをさがしていたときに、さがし出したものが予想に反してエッセイだったことが何度かありました。私はときどきそのことを思い出して、「もしも未収録のエッセイが三十編くらいあるのだとしたら、一冊の本にできるのではないか」と考えていたのでした。
 そこで私は、まず未収録かを特定できるシステムを作ろうと思い立ちました。エッセイは書籍に収録するさいにタイトルを変更することが多いと知っていたので、タイトルとは別に冒頭の一文を書き出した「最初の一句リスト」をつくり、十七冊の書籍に収録されているエッセイ六八九編をリスト化しました。
 そしていよいよ未収録エッセイの調査に着手。早々に、エッセイは冒頭の一文を変更していることも多い、という事実に気づきました。雑誌掲載時には「ついこの間」「二週間前」などと書き出していたものが、書籍収録時には「何年か前のこと」「昭和◯年頃」などとかわっているのです。そうだったのか。結局、リストにはあらすじも書くことに。
 掲載誌と切り抜きが大量に入っている箱(最相葉月さんが評伝『星新一 一〇〇一話をつくった人』〈新潮文庫〉執筆時にまとめてくださった箱です)をあけ、未収録エッセイと思われる誌面の写真を撮り、それらが未収録かを特定していきました。ここで、すっかり青ざめる私。未収録と判明したのは三十編どころではない。百編、二百編をすぎて、まだまだ終わらない。二十箱とスクラップブック四冊、そのほかの調査で、アンケート回答や近況報告をふくめて、四〇〇編以上みつかりました。こんなにあったの!? 把握できていないエッセイはまだありそうです。そのなかにはおもしろいものもあるでしょうが、全容把握をめざしたらいつまでも本が出ないので、ここで一度区切ることにします。生誕百年なので。
 大量にみつかった未収録エッセイから、ではどれをえらぶのかという段階になり、私は父の「自伝」を作ってみたいと思いました。星新一が自分について書いたエッセイが、こんなにみつかったのですから、こんなチャンスはないです。自分について書いたものを中心に九十一編をえらび、エッセイの発表年ではなく、書かれている内容の時系列にならべました。幼少期から晩年までの話が時間とともに流れていき、自伝のように読めるのではないかと思います。

 こうして未収録エッセイをさがす過程で、未発表および未収録のショートショートがみつかったので、間借りして三編のショートショートも収録いたしました。
「聖地」は、今年、父の遺品のなかから下書きの状態でみつかりました。掲載誌はみつかっていないので未発表と思われます。タイトル案らしき「神殿」という言葉が紙の端に書いてありましたが、「神殿」という別内容のショートショートがすでにあるので、「聖地」というタイトルをつけました。下書きの二枚目には「神 ロケット島流し」という記載があり、もしかするとこの「神」がロケットで宇宙のかなたへ送られるという展開を考えていたのかもしれません。そうすると、この作品は未完の可能性もあります。父の下書きは、デビュー後に書く文字が小さくなっていったので、比較的字が大きいこの作品は、かなり初期に書いたものだと思われます。AIに使用する電力が話題となる現代。なんでもできるけれど電気代がかかるという視点は、先見の明があったと言えなくもないですね。
「未知の星で」は、中部日本新聞に発表したものの、なぜか書籍に収録されずにいたものです。スクラップブックに貼って保管されていました。「未知の星へ」という別内容でタイトルが一字ちがいのショートショートがあるので、自分でも混乱して、もう収録したものと思い込んでいたのかもしれません。インパクトのある、おもしろい話なのに、これまで抜けていたのはもったいなかったです。
「地獄案内」は、『つぎはぎプラネット』刊行の三年後にみつかったものです。ミステリファンの会報「SRマンスリー」に父が寄稿したものでした。この転生オチは「天使考」に似て、『きまぐれカプセル』全体のしめくくりに合っているような気もしています。

 せっかくなので、家族ならではの解説を少し。長女の名前は夕梨花であると書かれていますが、実際には片仮名でユリカです(「夕梨花」)。『きまぐれ星のメモ』(角川文庫)収録エッセイ「名前」によると、ソ連の宇宙飛行士ユーリ・ガガーリンにちなんだユリカに、佐藤春夫さんの詩から夕梨花という漢字を使おうと思ったら、当時は梨という字が命名に使えなかったので片仮名のままになったとのこと。このとき梨の字が受け入れられていたら、次女の私のマリナ(金星探査機マリナー2号から)にも漢字があったのかもしれません。
 本文中に四回出てくる「妹」というのは、私の叔母・鳩(やす)子(こ)です(「空港の感傷」「奇妙な雑誌」ほか)。アメリカ在住の日本人と結婚し、最期までアメリカに住んでいました。鳩子が送ってくるアメリカの雑誌は、デビュー当時の父を、作家としてどれほど有利にしたことでしょう。洋書店にさがしに行ったり、なれない通信販売を申し込んだりしなくても、妹に言えば読みたいものを送ってもらえたのですから、ラッキーでしたね。
 父は、自分の父親(星一)や祖父(小金井良精)についてはたくさん書きのこし、それぞれ本にまでなっているのに、母親(星せい)について書いているものはほとんどありません。そこで一編のみ未収録というルールをまげて、すでに『星新一すこしふしぎ傑作選』(集英社みらい文庫)に収録されているエッセイ「うきなす」を今回収録しました。星一は私の生まれるずっと前に亡くなりましたが、星せいは戸越銀座のわが家のとなりに住んでいて、二軒は廊下でつながっており、私は毎日遊びに行っていました。「うきなす」を読むと、父と祖母が台所で話している様子が目に浮かびます。

 最後に、その星せいの母親である小金井喜美子の和歌を紹介させていただきますね。喜美子は森鷗外の妹で、これは兄・鷗外が亡くなって何年か経ったときに鷗外のことを詠んだ歌です。今の私が父について思う気持ちを、これほど的確にあらわした文はほかにないです。

嬉しけれ 年を経れども 君が名は 人なほ云へり 存りし世のごと
(これだけの年月が経っても、世の中の人は今も、あなたが生きていた時のように、あなたの名前を口にしていてうれしいです)

 タイムカプセルから出してきたような昭和のお話を、みなさまにたのしく読んでいただけることを祈りつつ編みました。読みおわって父の名を口にしていただけたら、私もうれしいです。

※2026年8月末に刊行された『きまぐれカプセル』のために書かれた解説を再録しました。

(ほし・まりな 星新一次女)

波 2026年10月号より

担当編集者のひとこと

祝・生誕100年 ショートショートの神様、星新一の記念作品集が発売されました!

「ボッコちゃん」「おーい でてこーい」など、数多の傑作ショートショートを生み出してきた星新一(1926~1997)。その生誕100年を記念し、エッセイ91編、ショートショート3編を収録した作品集『きまぐれカプセル』が、新潮文庫より刊行されました。8月末に発売後、たちまち大重版が決定! 時を超えて読まれ続ける星新一の魅力を改めて実感できる一冊です。
 空飛ぶ円盤に熱中した理由、5000年後に贈るタイムカプセルの中身、江戸川乱歩や小松左京、和田誠らとの親交──多彩なエッセイのなかから書籍未収録作を厳選。書かれた内容の時系列に沿って収録しているため、まるで星新一の「自伝」のようにも楽しむことができます。
 また、新たに下書きの状態で発見され、メディアで話題となった未発表作「聖地」、書籍未収録作と判明した「未知の星で」「地獄案内」など魅惑のショートショートも3編収録しました。
 装画には『ボッコちゃん』『ようこそ地球さん』など星新一作品の装画を初期から多数手がけてきた盟友・真鍋博(1932~2000)の作品を使用。新刊でありながらもどこか懐かしさも感じられるような、魅力あふれるカバーとなっています。

 8月末より、全国各地の書店で「星新一生誕100年フェア」も開催中。この機会にぜひ、星新一によるタイムカプセルのような作品集を手に取ってご覧ください!

2026/09/15

著者プロフィール

星新一

ホシ・シンイチ

(1926-1997)東京生れ。東京大学農学部農芸化学科卒。亡父の創業した製薬会社にて一時社長をつとめた。空飛ぶ円盤研究会への入会をきっかけに、1957(昭和32)年、SF同人誌「宇宙塵」の創刊に参加。江戸川乱歩に作品が認められて作家となる。SFショートショートを得意とし、生涯に1001編を超える作品を創作した。日本SF作家クラブ初代会長。『妄想銀行』で日本推理作家協会賞受賞。翻訳出版は30か国を超える。映像化作品で国際エミー賞ほかを受賞。著書に『ボッコちゃん』『きまぐれロボット』『悪魔のいる天国』など。

星新一 作品リスト

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