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今月の表紙の筆蹟は、堀江敏幸さん。

波 2026年10月号

(毎月27日発売)

100円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2026/09/28

発売日 2026/09/28
JANコード 4912068231066
定価 100円(税込)
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阿川佐和子/やっぱり残るは食欲 第109回
【「新潮文庫の100冊」特別対談】
小川 哲『君が手にするはずだった黄金について』、宮島未奈『成瀬は信じた道をいく』(新潮文庫)
小川 哲×宮島未奈/小説に〈正解〉はあるのか
堀江敏幸『ロベール・クートラスをめぐる断章群』
朝吹真理子/闇のなかで、透明で苛烈な火を灯して

永井紗耶子『長崎出島かれいどすこうぷ』
垣根涼介/「はずれ者」への慈しみ

奥泉 光『木蓮記』
町田 康/画の無責任と音楽が齎す魂の震え

マルコ・バルツァーノ、関口英子 訳『いつか家族に戻るとき』(新潮クレスト・ブックス)
瀧井朝世/異国で働く母親と、残された子どもたち

ミシェル・フーコー、慎改康之 訳『ミシェル・フーコー著作集 新訳版 監獄の誕生─監視と処罰─』
藤原辰史/生の連鎖的な活性化に向けて

京橋史織『謎解きレシピをめしあがれ』
梅原いずみ/思いに寄り添う優しさとほろ苦さ

九能式尚『名探偵の君へ』
大森 望/探偵小説史に名を刻む、野心的大作

キム・サンウク 原案、キム・ハヨン 文、チョン・スンギュ 絵、カン・シンチョル 監修、全 彩香 翻訳『とびだせ! 科学だモン 1─キラキラ! 「光の正体」編─』
笹沼颯太/活字への、はしごをかける本

大木奈ハル子『小さく暮らす─25m²のゆたかな生活─』
原田ひ香/人生の心づもりが変わってくる

藪本勝治『弁慶─創られた豪傑─』(新潮選書)
澤田瞳子/我々が知る歴史は真実か まるで上質のミステリー

宇野千代、藤江淳子、小林庸浩 ほか『新版 宇野千代 女の一生』(とんぼの本)
南沢奈央/わたしもこうありたい

早川聞多『浮世絵「春画」の絶技─こんなに凄い『花鳥余情 吾妻源氏』─』
アンドリュー・ガーストル/まるで「春画」原本に触れられるかのよう

磯野真穂『社会が壊れるその前に―メアリ・ダグラスの人類学―』(新潮選書)
宇野重規/能力資本主義を支える象徴を読み解く

大木 毅『海軍士官たちの太平洋戦争』(新潮選書)
波多野澄雄/「人物」で読み解く勝敗の主因

高田崇史『かぐや姫の怨霊─小余綾俊輔の実地講義─』
[著者インタビュー]高田崇史/かぐや姫はどこに祀られているのか?

【特集 遠藤周作没後30年】
遠藤龍之介/「ああいう方の息子さんだと大変ですね」。そう言われ続けてきたけれど──いたずら好きの「絶対君主」

遠藤周作『わたしが・棄てた・女』(新潮文庫)
小川洋子/掌に残る消えない印
【星 新一生誕100年】
星 新一『きまぐれカプセル』(新潮文庫)
星マリナ/星新一って、こんな人
【私の好きな新潮文庫】
鏡リュウジ/神話とおとぎ話に学ぶこと
 呉 茂一『ギリシア神話(上・下)』
 グリム兄弟、植田敏郎 訳『ブレーメンの音楽師─グリム童話集III─』
 河合隼雄『猫だましい』
【今月の新潮文庫】
パリッコ『この世には飲まなきゃいけない酒がある』
パリッコ/酒場ライターが気ままに綴る、幸せな酒の場面たち

【コラム】
[とんぼの本]編集室だより

関 裕二『古代天皇の正体』(新潮新書)
関 裕二/縄文にさかのぼって見えた「天皇の正体」
【連載】
千葉雄大/家賃を払わない同居人 第7回
三宅香帆/福澤諭吉をよみなおす 第4回
梨木香歩/猫ヤナギ芽ぶく 第28回
椎名 誠/こんな友だちがいた 最終回
古市憲寿/絶対に挫折しない教養入門 第14回
下重暁子/九十歳、それがどうした 第17回
シリ・ハストヴェット、柴田元幸 訳/ゴースト・ストーリーズ 第9回
高木 徹/東京裁判 11人の判事たち 第11回
第25回 小林秀雄賞・新潮ドキュメント賞決定発表
編輯後記 いま話題の本 新刊案内 編集長から

立ち読み

編集長から

今月の表紙の筆蹟は、堀江敏幸さん。

◎映画「オデュッセイア」はいろいろ面白かったのですが、ホメロスの原作を読んでいない身としては物語と人物を頭に入れられたのが大きな余禄。セイレーン(「映画ちいかわ」でもお馴染)もキルケも一つ眼巨人もカリュプソもこれで大丈夫。
◎上のあれこれを忘れないうちに、ジョイス『ユリシーズ』をついに読む。ジョイスは二十世紀ダブリンのしがない中年男を描くのに『オデュッセイア』の枠組を持ってきました。英雄オデュッセウス(映画ではマット・デイモン)を主人公ブルームに、夫を二十年待つ貞淑なペネロペ(アン・ハサウェイ)を浮気性の妻モリーに、息子テレマコス(トム・ホランド)を文学青年スティーヴン・ディーダラスに重ねていきます(二十年かかったオデュッセウスの帰還をたった一日(1904年6月16日)の出来事に、地中海を彷徨う空間の広がりをダブリン市街だけに限ったように、常に神話を裏返した形で)。
◎映画では主人公の愛犬アルゴスが忘れ難い印象を残しますが、この犬はホメロス版でも重要な役回りのようで、そうすると『ユリシーズ』第十二挿話の語り手は〈貸金の取立て屋(従来の説)〉ではなく、柳瀬尚紀説のとおり〈犬〉なのかもしれません。あの感動的な忠犬には見せ場を作ってやりたくなるはず。また第十四挿話は古代から現代俗語まで、さまざまな英語文体で書かれた由ですが、丸谷才一他訳はこれを祝詞や『古事記』に始まり『源氏』、西鶴、近松等を経て円朝、漱石、谷崎、賢治等に至る日本語文体に置き換える剛腕ぶりで、ここと不倫妻モリーが夢うつつで夫を語る最後の挿話だけでも必読!
◎この寝取られ夫という設定は実に小説的で『情事の終り』(グレアム・グリーン)『抱擁家族』(小島信夫)「不貞の季節」(団鬼六)など名作が多数。丸谷才一『たった一人の反乱』も巧みな寝取られ小説ですが、あれはジョイスに学んだのだと初めて気づきました。
▽次号の刊行は十月二十七日です。

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。