
かぐや姫の怨霊─小余綾俊輔の実地講義─
1,870円(税込)
発売日:2026/09/30
- 書籍
- 電子書籍あり
「かぐや姫」は実在した! 全ての伝説が一つに繋がる時、書かれざる古代史が浮上する。
宗像大社の千木に違和感を覚えた編集者の橙子は、博覧強記の民俗学者・小余綾先生と天橋立に向かった。浦島太郎、羽衣天女、七夕、徐福、かぐや姫──数々の伝説が残る丹後半島。先生の大胆な推理と実地検証が、伝承と系図に巧妙に隠された古代史の悲劇を発掘し、伊勢神宮の「真の意味」まで暴く。歴史謎解きミステリー。
《プロローグ》
《四月三十日(金) 一白・天恩》
《五月一日(土) 二黒・凶会》
《五月二日(日) 三碧・天恩》
《五月三日(月・祝) 四緑・月徳》
《五月四日(火・休) 五黄・天恩》
《エピローグ》
書誌情報
| 読み仮名 | カグヤヒメノオンリョウコユルギシュンスケノフィールドワーク |
|---|---|
| 装幀 | 宇野市之丞/装画、新潮社装幀室/装幀 |
| 発行形態 | 書籍、電子書籍 |
| 判型 | 四六判変型 |
| 頁数 | 272ページ |
| ISBN | 978-4-10-339336-8 |
| C-CODE | 0093 |
| 定価 | 1,870円 |
| 電子書籍 価格 | 1,870円 |
| 電子書籍 配信開始日 | 2026/09/30 |
インタビュー/対談/エッセイ
かぐや姫はどこに祀られているのか?
博覧強記の民俗学者・小余綾先生が歴史の謎を解き明かす「講義」シリーズは、『源平の怨霊』、『采女の怨霊―小余綾俊輔の不在講義―』、『猿田彦の怨霊―小余綾俊輔の封印講義―』と続いて、今回が四作目。しかし、かぐや姫は月から来て、月に帰ったのではなかったのか。怨霊になったりするものなのか。そもそも、かぐや姫は実在したのか……。丹後半島に残る数多くの伝説と謎めいた神社から見えてくる「もう一つの古代史」とは? 著者に聞いた。
最初の発想は、市杵島姫命を追ってみようということでした。この女神には、どうも謎がある。しかも、歴史の至るところに、その存在が感じられる。表向きではない歴史で、非常に大きな役割を果たしていたはずなのに、謎めいた形でしか記録に残されていない。もちろん、市杵島姫命が「かぐや姫」だと言っているわけではありませんよ。それでは、いきなりネタバレになってしまう(笑)。
──市杵島姫命といえば、天照大神から生まれた宗像三女神の中心的存在。小説の中でも、ワトスン役の編集者・加藤橙子さんが宗像大社で奇妙な発見をして頭を悩ませます。
天照大神については難しい問題があるのですが、それは本を読んでもらうとして……。宗像大社は、「総社」と呼ばれる辺津宮、大島にある中津宮、沖ノ島に鎮座する沖津宮から成り、それぞれ宗像三女神が祭神とされています。
ところが、辺津宮に行ってみたら、本殿の屋根の千木が、男神を表す男千木になっていた。そんなこととは全然知らなかったので、実際に見て驚きました。さらに、一般人立入り禁止なので写真で見た沖津宮も、千木は男千木。三女神が祭神のはずなのに、女千木は中津宮だけ。ここに絶対に秘密があると確信しました。
──その中津宮には、織女神社と牽牛神社があって、「七夕伝説発祥の地」とされています。
これも現地に行ってびっくりしたのですが、織女神社に参拝する道がない。木の根っこを足場にして登っていくしかないような難所です。牽牛神社も、そう言われなければ分からないような小さな祠で、どちらも、わざと参拝しにくくしているとしか思えない。どうしてこんなに冷遇されているのだろうと不思議でした。
──今回はサブタイトルで「実地講義」と銘打たれているように、小余綾先生が現地に足を運んで調査します。
作中で小余綾先生が回ったのと全く同じルートで、僕も取材に回りました。いや、これでは話が逆か。
ともかく、次の取材先は、天橋立の籠神社でした。ここは主祭神が彦火明命で、相殿が豊受大神。この豊受大神は伊勢神宮の外宮の祭神として有名ですが、市杵島姫命と同一神とも考えられています。実は宗像大社は「裏伊勢」だったという話もあって、いろいろと繫がってきたような、ますます混沌としてきたような気分でした。
──それはまさに作中での小余綾先生と橙子さんの心境かもしれません。伊勢神宮についての衝撃の真相も明かされていますが、そこに至るには、丹後半島に残る数々の伝説を検証し、神社や史跡を調べる必要があったわけですね。
七夕伝説や羽衣天女伝説はもちろん、天橋立から少し足を延ばせば、浦嶋神社や龍宮に通じる「龍穴」があり、「徐福上陸の地」もあります。あらゆる伝説が集まっている。
とりわけ、各地で目にするのが、月読命の名前です。月の神、夜の神ですが、記紀などには具体的な記述がほとんどない。周辺には、豊受大神が稲作をした「月の輪田」という史跡もあれば、「竹野神社」もあります。
──月に竹、まさしく『竹取物語』ですね。
かぐや姫を実在の人物だと想定したら誰なのか、そこまではすぐに思い当たります。問題は、怨霊となったかぐや姫が、どこにも祀られていないことです。天女が祀られている神社も、天鈿女が祀られている神社もあるのに。
──かぐや姫がどこに祀られているか、かぐや姫の身の上に何があったのか、小余綾先生は驚天動地の推理を語ります。どのようにしてこの結論に辿り着いたのでしょうか。
いつも言っているのですが、現地に行くと向こうで教えられるんです。こいつはあまりにも何も知らなくてかわいそうだと、神様が教えてくれる。お前は本当にバカだねって。今回は、神様というより、怨霊かもしれないけれど。
こんなことを言うと、オカルトかスピリチュアルみたいですが、取材に行く前は本当に全然考えていなかったことが、何かに導かれるように閃いたりします。
──導かれるといえば、作中に松本清張さんの『Dの複合』や『陸行水行』が出てきます。
宗像取材の後で小倉に泊まったので、何の気なしに「松本清張記念館」を見学したんです。丹後半島でも清張さんの足跡を各地で感じて、不思議な気持ちがしましたね。
──高田さんの「QED」シリーズや「古事記異聞」シリーズとも世界が共有されているようで、重なり合い響き合って「高田古代史」が築き上げられつつあるようです。
また次もどこかに行って、神様に教えてもらわなければなりませんね。
(たかだ・たかふみ 作家)
波 2026年10月号より
単行本刊行時掲載
著者プロフィール
高田崇史
タカダ・タカフミ
1958年東京生まれ。明治薬科大卒。1998年『QED 百人一首の呪』でメフィスト賞を受賞し、作家デビュー。QEDシリーズ、毒草師シリーズ、古事記異聞シリーズなど著書多数。古代から近現代まで、該博な知識に裏付けられた歴史ミステリーを得意分野とする。近著に、『源平の怨霊』、『采女の怨霊』、『猿田彦の怨霊』、『江ノ島奇譚』、『QED 恵比寿の漂流』、『QED 天河伝説、桜舞い』などがある。



































