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面白南極料理人

西村淳/著

693円(税込)

発売日:2004/10/01

書誌情報

読み仮名 オモシロナンキョクリョウリニン
シリーズ名 新潮文庫
発行形態 文庫、電子書籍
判型 新潮文庫
ISBN 978-4-10-115351-3
C-CODE 0126
整理番号 に-17-1
ジャンル 文学・評論、歴史・地理・旅行記、歴史・地理
定価 693円
電子書籍 価格 572円
電子書籍 配信開始日 2008/05/01

寒いぞぉー、うまいぞぉー。抱腹絶倒の南極越冬日記。日本でも役立つ南極料理レシピ付。

ウイルスさえも生存が許されない地の果て、南極ドーム基地。そこは昭和基地から1000kmかなた、標高3800m、平均気温-57℃、酸素も少なければ太陽も珍しい世界一過酷な場所である。でも、選り抜きの食材と創意工夫の精神、そして何より南極氷より固い仲間同士の絆がたっぷりとあった。第38次越冬隊として8人の仲間と暮した抱腹絶倒の毎日を、詳細に、いい加減に報告する南極日記。

  • テレビ化
    真夜中ドラマ「面白南極料理人」(2019年1月放映)
  • 映画化
    南極料理人(2009年8月公開)
目次
まえがき

大雪原の小さな家
 帰ってくるぞ
 そして再び南極へ
 冷凍食品の話
 積載開始
 出港
 南極だー
 そして、ドームへ
 みずほ基地でお正月
 「大雪原の小さな家」到着
 基地の中へ
 最初の洗礼
 別れの日

作家と宴会の日々
 越冬が始まった
 最初の宴会
 二月だぞー
 ジンギスカン大会
 メニュー表の話
 ソフトボールをしたぞ
 金ちゃんの誕生会
 仕事だー
 チェーンソーも凍ります
 カチンコチンドーム
 設営と観測の話
 けがしたぞ!!
 魔女宅小屋
 水は命だ
 変になってきたぞ
 サードシェフ、ドック登場
 久方ぶりの誕生会
 凍傷になっちゃった

まじめでおかしな仲間たち
 ミッドウィンター
 さあ始まった
 後半戰開始
 ミーティングの話
 ドクターの誕生会
 燃料搬入大作戰
 ドーム大学
 バイキンマンが寝違えた
 りんさん、またまた
 盆の誕生会
 太陽が出たぞ
 昭和基地、みりんがきれた
 平沢隊員誕生会

飲んで怒って笑って泣いて
 昭和補給隊出発
 昭和補給隊到着
 昭和補給隊との別れ
 しらせ、出港
 春の観測旅行
 一二月だ
 三九次隊、昭和基地に入る
 クリスマスイブなのに……
 大晦日
 そして一九九八年
 三九次隊が来た
 旅立ちの日

エピローグ
そしてオヤジに戻ったぞ――あとがきに代えて

文庫版「あとがき」かな?
 解説 佐々木譲

書評

想像するおいしさ その自由な世界

稲田俊輔

 先ずは、誰が読んでも間違いなくお腹が痛くなるくらい楽しめる、西村淳『面白南極料理人』を。私自身もひとりの料理人として日々痛感しているのですが、料理人というのはある意味因果な商売です。いつだってその根底には「目の前のお客さんにおいしいものを食べて欲しい」というプリミティブな願いがありつつも、実際はそれで利益を出さねばならない、評判を取らなければいけない、誰からも嫌われない料理でなければいけない、という浮世のしがらみに囚われ続ける宿命にあります。
 そういう浮世とは、良くも悪くも隔絶された南極基地。そこで料理担当として腕を振るう作者の日々は、食べることくらいしか娯楽のない極限の環境で周りの仲間たちを喜ばせる、というゴールだけを目指して常にまっしぐらです。食材や調理環境の制約はあれど、ある意味それは料理人にとってのユートピアなのかもしれません。

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 続いてご紹介したいのは嵐山光三郎文人悪食』。夏目漱石森鴎外ら三十七人の文豪の、食にまつわるエピソードが書かれています。現代とは全く異なる当時の日本人の食習慣や食に対する価値観が興味深く、また、「元祖・食本」を紹介する読書案内としても貴重な本なのですが、そんなことより何より印象的なのは文豪たちの奇人変人ぶり。こんな人たちが実際周りに居たら、そりゃまあ楽しいかもしれないけどたまったもんじゃないな、という濃いエピソードが満載でゲップが出そうです。それはどこか1970〜1980年代のロックミュージシャン達の(半ば演出的な)奇行とも重なるものがあります。時代はいつもどこかでそういうアンチヒーローを求めているものなのかもしれません。
 ちなみにそれを嬉々として語る著者本人も、文豪たちに負けず劣らず「変」です。

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 その『文人悪食』でも取り上げられている山本周五郎の代表作のひとつが『青べか物語』。この小説には当時の様々な食生活が印象的に描かれており、中でも極め付きのシーンが「もくしょう」と題された一編に出てきます。
 化粧っ気もなく無愛想な洋食屋の跡取り娘おさいは、ある時真面目で寡黙な船乗り元井エンジと恋仲になります。ところが些細なすれ違いがきっかけで、おさいは一方的にエンジを捨てて他所の街に嫁に行き、結局一年ほどで夫と死別。幼子を連れて再び実家の洋食屋で働き始めた彼女は、かつてとはうって変わって美しく着飾り、愛想よく酔客たちをあしらうようになっていました。

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 そのおさいがある夜、元井エンジの独居を訪れ復縁を迫ります。エンジはおさいに捨てられて以来すっかり心を閉ざし、仕事で船に乗る以外は家に籠って独り言を呟きながら一人将棋を指すばかりの毎日。そしてその時も、おさいが過去の出来事を謝り「あたし、いつでもいいのよ」と誘惑するのを無視して一人将棋を指し続けます。諦めたおさいはエンジの家を後にし「へっ、うみどんぼ野郎」「うすっ汚ねえもくしょうめ」と悪態をつく、という救いのない物語。
 おさいが去り際にこんなことを言います。
「あたしうまいライスが出来るのよ〈中略〉とても玉葱とヘットだけだなんて思えないほどうまいのよ、これからはちょいちょい来てよ」
 初めてこの話を読んだ時、僕は「なんて酷い女だ」と思いました。そのライスは確かにうまそうでしたが、しかしいかにも安っぽい。出戻りで肩身の狭い彼女は跡継ぎのためにかつての恋人を利用しようとしている。そしてすっかり垢抜けた彼女は男を心底馬鹿にしているから、その程度の食べ物で釣れるだろうと値踏みしている。
 しかし何度めかに読んだ時、その印象が突然ガラっと変わった瞬間がありました。彼女の悪態は悲しみの中の精一杯の強がりだったのでは、と思い始めたのです。玉葱ライスは、かつての恋人と地に足のついた生活をしたい彼女の切ない想いの象徴。作者はそのどちらの解釈も許すかのように多くを語りません。いずれにしても玉葱ライスはただただおいしそうです。ヘット(牛脂)は当然自家製でしょう。味付けはどういうふうだったんだろう。僕は勝手にウスターソース味で想像しています。

(いなだ・しゅんすけ 料理人)
波 2021年9月号より

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著者プロフィール

西村淳

ニシムラ・ジュン

1952(昭和27)年、北海道・留萌生れ。網走南ヶ丘高校卒業後、舞鶴海上保安学校へ。巡視船勤務の海上保安官となる。第30次南極観測隊、第38次南極観測隊ドーム基地越冬隊に参加。巡視船〈みうら〉の教官兼主任主計士として海猿のタマゴたちを教えた後、2009(平成21)年に退職。現在は講演会、料理講習会、TV/ラジオなどで活躍中。著書に『面白南極料理人』『面白南極料理人 笑う食卓』『身近なもので生き延びろ─知恵と工夫で大災害に勝つ―』『南極料理人の悪ガキ読本―北海道旨いぞレシピ付き―』など。

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