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公孫龍 巻一 青龍篇

宮城谷昌光/著

737円(税込)

発売日:2024/03/28

  • 文庫
  • 電子書籍あり

戦国乱世を切り拓く、ニュー・ヒーロー登場! 中国歴史小説の第一人者が描く、大河小説開幕。

中国戦国時代、人質として周から燕に送られることとなった十八歳の王子稜(りょう)。父赧(たん)王の燕王宛ての書翰に、己を殺すようにと書かれているのを知った稜は愕然とする。王宮内の陰謀に巻き込まれたことを悟った稜は、山賊の襲撃から救った強国趙の幼き二公子の求めに応じ、商人「公孫龍(こうそんりょう)」として趙の都邯鄲(かんたん)を目指すことに。群雄割拠の乱世に颯爽と現れた青年の成長を描く波乱万丈の大河歴史小説開幕。

目次
人質の旅
山賊との戦い
王のしょかん
太子の席
公子の客
剣と刀
光と影
月下の闘い
北の天地
かくかい先生
えん王のひん
きょくほうこうかく
しゅの招待
山中の光明
ちゅうざん滅亡
がっのゆくえ

書誌情報

読み仮名 コウソンリョウカン01セイリョウヘン
シリーズ名 新潮文庫
装幀 神木野啼鹿/カバー題字、原田維夫/カバー装画、新潮社装幀室/デザイン
雑誌から生まれた本 小説新潮から生まれた本
発行形態 文庫、電子書籍
判型 新潮文庫
頁数 336ページ
ISBN 978-4-10-144461-1
C-CODE 0193
整理番号 み-25-41
ジャンル 歴史・時代小説
定価 737円
電子書籍 価格 737円
電子書籍 配信開始日 2024/03/28

書評

宮城谷作品に感じるロマン

吉川晃司

 私が中国史に傾倒するきっかけとなったのは、人生の中で大きな岐路に立たされたときでした。歴史上の傑物たちの生きざまや言葉に、ヒントを求めたのです。熱狂的な『三国志』ファンだと書かれることが多いのですが、正確に言えば春秋戦国時代がいちばん面白く。あの時代の傑物たちの逸話が大好きなので、宮城谷さんの作品とは出会うべくして出会ったのです。
 初めて宮城谷さんにお会いしたのは、15年ほど前でしょうか。浜名湖畔にあるご自宅へうかがい、仕事部屋や資料室も拝見し。光栄にも、執筆の卓に座らせていただいたことは自慢です。
「小説を読むときは史実と照らし合わせながら、より楽しませていただいています」という話をしたら、「これを持っておくといいよ」と薦めていただいたのが、古くは春秋戦国時代以前の原始社会から、新しくは清の時代まで、文字通り、時代ごとの中国の地図が詳細に載せられている、全8巻から成る「中国歴史地図集」でした。大陸の場合、一度の天変地異で地形や川の幅、流れなどが変わって、数百キロも都市が移動することもあったようで、この地図集があると、作品の理解にすごく役立つのです。
 それともう一つが、司馬光が編纂した歴史書の「資治通鑑」。しかし、こちらは全編を通した邦訳版が存在しなかったため、原文、すなわち漢文で読むしかなく、諦めました。すると、次にお会いして、その報告をしたとき、宮城谷さんが「君の中国史への興味は、国境は越えないんだね」というようなことを穏やかにおっしゃったのが痛恨でした。
 そもそも宮城谷さんは既存の資料をそのまま保管されているだけではなく、ご自身で写経のように書き写したものも作っておられ、あの傑作たちが生まれた秘密の一端に触れた思いでした。「君も自分でノートを作ってみるといいよ」とアドバイスもいただき、以来パソコンに書きためていたのですが、あるときウィルスにやられ……。そのため、頼るは己の記憶のみとなりましたが、自分で蓄えた知恵や体力は決して奪われない。それこそが財産。これは自分の信念でもありましたが、宮城谷さんとの出会いやアドバイスを通じて、その思いがより強くなりました。モノなんて一瞬でなくなってしまうということは震災のときにも痛感しましたが、いまのコロナ禍にしても同じようなことが言えますよね。
 さて『公孫龍』ですが、この作品で描かれている背景は、いわゆるボスキャラがうじゃうじゃいる時代。すでに登場している恵文王(公子何)や平原君(公子勝)、その父親である武霊王(主父)……。さらに、実際に宮城谷さんの著作で主人公となったことのある孟嘗君や楽毅など、挙げていくとキリがありません。にもかかわらず、主人公の公孫龍については、周の王子だったという設定など虚実を織り交ぜた自由自在な描かれ方となっており、これが面白くならないわけがない。実際、読み始めると止まりませんでした。孟嘗君や楽毅はこれから本格的に物語に関わってくるはずで、そうなるとファンとしては『公孫龍』を読み進めながら、かつての『孟嘗君』や『楽毅』を読み直すという楽しみ方もできます。
 そして今回、あらためて思ったのは、宮城谷さんというフィルターを通して表現される言葉は、あの禅問答の波状攻撃のような場面でさえ、どうしてリアルに感じられるのか。それは、「知識」がただのそれではなく、「知恵」へと昇華されているからではないでしょうか。なおかつ、表現は削ぎ落とされているのに、増す円熟味。この物語がどこまで続くのか、ワクワク感しかありませんが、閉鎖的な状況下にある世の中を、高いエンターテインメント性と、骨太な宮城谷ロマンで、これからも楽しませていただきたく思っております。

(構成・用田邦憲)

(きっかわ・こうじ ミュージシャン・俳優)

波 2021年2月号より
単行本刊行時掲載

著者プロフィール

宮城谷昌光

ミヤギタニ・マサミツ

1945(昭和20)年、愛知県生れ。早稲田大学第一文学部英文科卒。出版社勤務等を経て1991(平成3)年、『天空の舟』で新田次郎文学賞を、『夏姫春秋』で直木賞を受賞。1993年、『重耳』で芸術選奨文部大臣賞を、2000年、司馬遼太郎賞を、2001年、『子産』で吉川英治文学賞を、2004年、菊池寛賞を、2016年、『劉邦』で毎日芸術賞をそれぞれ受賞。また、2006年に紫綬褒章、2016年には旭日小綬章を受章。『晏子』『楽毅』『管仲』『香乱記』『青雲はるかに』『新三河物語』『三国志』『草原の風』『呉漢』『孔丘』『公孫龍』『諸葛亮』等著書多数。

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