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ここは、あったかい異世界。ほのかに、はるかと、つながっている――最新作8篇を収録。

この橋をわたって

新井素子/著

1,650円(税込)

本の仕様

発売日:2019/04/25

読み仮名 コノハシヲワタッテ
装幀 コマツシンヤ/装画、新潮社装幀室/装幀
雑誌から生まれた本 小説新潮から生まれた本
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判
頁数 252ページ
ISBN 978-4-10-385804-1
C-CODE 0093
ジャンル 文学・評論
定価 1,650円
電子書籍 価格 1,650円
電子書籍 配信開始日 2019/10/04

急死したおばあちゃんが私に伝えたかったことは何?……不思議なミッションを与えられて歩き続けた私は、辿り着いて意外なことを知る(「なごみちゃんの大晦日」)。十七歳での作家デビューから、独自の小説世界を創り続けて四十年。橋、猫、ケーキ、秘密基地、AI、碁盤――短篇+ショートショート+中篇、さまざまな味わいを楽しめるアラカルト作品集。

著者プロフィール

新井素子 アライ・モトコ

1960年東京都生れ。立教大学文学部ドイツ文学科卒業。1977年都立高校2年のとき、「あたしの中の……」で第一回奇想天外SF新人賞佳作に入選、星新一氏の強い推薦で作家デビュー。1981年「グリーン・レクイエム」、1982年「ネプチューン」で2年連続の星雲賞日本短篇部門受賞。1999年『チグリスとユーフラテス』で日本SF大賞受賞。『星へ行く船』『ひとめあなたに…』『結婚物語』『新婚物語』『あなたにここにいて欲しい』『緑幻想』『ハッピー・バースディ』、星新一作品のアンソロジー&エッセイ『ほしのはじまり』、『未来へ……』『素子の碁』『ゆっくり十まで』、『星へ行く船』復刊新装版シリーズ全5巻など著書多数。小社からは『おしまいの日』『もいちどあなたにあいたいな』『イン・ザ・ヘブン』を刊行。

書評

橋を、架ける――新井素子の四十年

矢崎存美

『この橋をわたって』は、2017年に作家生活四十周年を迎えた新井素子さんの最新短編集です。2010年代の短編とショートショートが収録されています。
 新井さんがデビューした1977年、私は中学一年でした。作家という職業にあこがれを持ち、友人たちに「なりたいんだ〜」などと言い始めた頃。誰でもそんな時期があるものですよね。しかし、なれるなんて、その時は思いもしていませんでした。
 そんな時、新井さんが『あたしの中の……』で第一回奇想天外SF新人賞で佳作を獲り、SF作家としてデビューしたのです。なんと十七歳で。「現役高校生が作家デビュー」というのは当時大ニュースになりました。ものすごくよく憶えています。今で言うなら、将棋棋士の藤井聡太さんくらいの騒ぎだったのではないかと思います。
 世間的にも大変な話題でしたけれど、その中でも、私のような作家志望の中高生が受けた衝撃こそ一番大きかったのではないでしょうか。「高校生でデビューできるのなら、私だってなれるかも」とみんな思ったはず。
 八年後、私は星新一ショートショートコンテストに入賞し、初めて作品が活字になりました。星新一さんといえば、奇想天外SF新人賞の時に『あたしの中の……』を一押ししたことが知られています。私も星さんに選んでいただいたことがきっかけで、本格的な作家デビューへの道が開けました。今回、私がこの『この橋をわたって』の書評を書くことになったのは、こういうご縁のおかげかもしれません。
 この本に収録されている短編は、とてもバラエティに富んでいます。猫や囲碁に関すること、おなじみのシリーズキャラクターの登場、子供向けのショートショート、ご本人曰く「エポックメイキング」な連載小説等々、長年のファンの方にはもちろん、新井さんの小説を読んでみたいけど何から読んだらいいのか、と迷っている方にもおすすめしたい。SFというより日常系不思議物語ですが、新井さんの語り口は本当に独特です。今回、改めて思いました。
 その中で私が一番印象に残ったのは、「橋を、架ける」という冒頭の作品でした。タイトルどおりの物語です。広い広い川に橋を架ける、それだけの物語。しかし本を読み終えた時には、この作品こそ新井素子作品の集大成ではないか、と感じました。
 短い物語なのに、幾人かの主人公が現れ、それぞれが自分の口調で自分の橋のこと、彼らの最初の一歩を語る。とてもささいなことであっても、それはゼロを1にする行為で――最初の一歩があったからこそ、その橋は架かったわけです。
 この地道な物語がどんな結末を迎えるかは読んでみてのお楽しみですが、本を読み終えた時、私は新井さんが四十年、コツコツと原稿用紙に字を埋め続けていった結果が、この物語に、この本に現れているのではないかと思いました(もちろん今は手書きではないでしょうが)。『あたしの中の……』の最初の一文字がなければ、新井さんは作家にはなっていないのです。そして、新井さんの登場によって「作家になれるかも」と思った私も、今は別の職業に就いていたかもしれません。
 星新一ショートショートコンテストに出した作品は、まだ原稿用紙に手書きだったなあ、と思い出しました。
 星さんとのつながりとともに、もう一つ大切なご縁があります。それは「ぬいぐるみ」です。新井さんの「ぬいさん」への愛は、ご本人がエッセイなどで語られているとおり、非常に強く深い。ここで説明するにはとても文字数が足りないくらい、特別なものです。本書収録の「碁盤事件」でも、ぬいぐるみが大役を担って活躍しています。
 実は私もぬいぐるみについての本を書いているのです。『ぶたぶた』という生きているぬいぐるみ「山崎ぶたぶた」の物語なのですが、その単行本発売時に、帯にお言葉を寄せていただいたのが新井さんでした。
「こんなお話が読みたかった」
 と。それが二十一年前。山崎ぶたぶたのシリーズは、いまだに続いています。これも新井さんのおかげかな、と密かに思っているのです。

(やざき・ありみ 作家)
波 2019年5月号より
単行本刊行時掲載

目次

橋を、架ける
黒猫ナイトの冒険
わたくしは、猫で御座います
ショートショート
倍倍ケーキ
秘密基地
お片づけロボット
碁盤事件
なごみちゃんの大晦日
あとがき

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